性急な法制化の前にまず、するべきことがある
サイバー攻撃実行者の特定はなぜ重要か? Microsoftが独立機関の設立を提唱
Microsoftはグローバルなサイバーセキュリティの基準の開発の支援に向け、サイバー攻撃の犯人を特定するサイバーアトリビューションの強化を呼びかけている。
政府機関およびグローバルな情報通信技術業界向けに「サイバーセキュリティ基準」を作成する作業を進めているMicrosoftは、サイバーアトリビューション(訳注:「サイバーアトリビューション」とは、サイバー攻撃の実行者を特定すること)の問題に取り組む官民合同フォーラムならびにサイバー攻撃を調査する独立機関の設立を呼びかけている。 Microsoftは、「決意から実行へ:サイバーセキュリティ基準を推進する」と題した論文の中で「国際法にはサイバー空間にそぐわない部分もある。また、広く受け入れられるサイバーセキュリティ基準を開発する前に新たな法律を性急に作成、適用するのは危険だ」と指摘した。
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サイバー攻撃に対する抜本的な取り組み
論文の執筆責任者でMicrosoftのTrustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)担当バイスプレジデントのスコット・チャーニー氏は、論文発表に関するブログ記事に「サイバー攻撃のアトリビューションプロセスの開発をさらに進めなければ、サイバーセキュリティ基準は有効なポリシーツールにならない」と記している。
「このため、報告書ではサイバー攻撃の属性をめぐる現時点での課題を示すとともに、われわれは深刻なサイバー攻撃のアトリビューション問題に対処するために、各国の専門家で構成するグループの参加を得て官民合同フォーラムを設立することを提案する。また、サイバーセキュリティ基準の開発には、サイバースペース独自の課題を克服するために新たな形態の協力と新たな仕組みが必要になるだろう。グローバル規模での新たな官民協力モデルも不可欠だ」(チャーニー氏)
論文の著者らは、攻撃の調査とサイバーアトリビューションの判定を行う独立機関の設立の困難さを認識しているようだ。「特に政府は、独立機関に対して政治的に重要な意味があり政治色の濃い調査を実施する権限を与えることには消極的になるだろう。こうした懸念に対処するため、この独立機関は全世界が承認するような構成にしなければならない」と同論文は述べている。
独立機関は高度な専門性を有し、広範な地域を代表する組織でなければならず、調査結果は査読の対象となる。また、調査の対象は深刻なサイバー攻撃だけに限定すべきだというのがMicrosoftの主張だ。
Microsoftがサイバーアトリビューションの改善を呼びかけた背景には、米民主党全国委員会の侵入事件の犯人をめぐる疑念が浮上したことや、米国防高等研究計画局(DARPA)がサイバーアトリビューションの研究に関する提案を求めたことがある。
DARPAがアトリビューション強化の目標としているのは、スレットアクター(セキュリティを脅かす組織や個人)が実行する悪質なサイバー攻撃に関する運用・戦術情報を獲得するメカニズムの開発だ。だがMicrosoftは、サイバー攻撃の元凶となるスレットアクターを特定する能力を通じてサイバーセキュリティ基準の開発を支援することを提案している。
Microsoftは論文で以下のように述べている。「国際法がインターネットにも適用されることを政府は認識しているが、こうした法律は硬直的で融通が利かず、今日のサイバースペースの状況に必ずしも対処できない。こうした状況に対する豊富な経験が重要だ。だからサイバースペースのステークホルダーたちは、新しい法律を策定する前に基準の開発と導入を求めているのだ。新しい法律を性急にサイバースペースに適用しようとするのはリスクが大きい。それどころか、草案を作成することも推奨できない。サイバースペースの状況をめぐる経験不足などが原因で、こうした法律が悪影響をもたらす恐れがあるからだ。それゆえ、サイバースペースのステークホルダーは、法制化の前に基準の開発と導入を進めなければならない」
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