クリニックの無線LAN設定、お悩み解決塾【第1回】
クリニックの無線LAN構築、まずはルーターを集約してネットワークを整理しよう(2/2 ページ)
クリニックにおける院内ネットワークの見直しポイント
クリニックに無線LANを構築するためには、まず現状の院内ネットワークがどうなっているかを確認する必要があります。
例えば図1のように医療情報システムごとにネットワークが分断されている場合、無線APを入れようとすると、次のいずれかの問題が起こります。
- 特定の医療情報システムにしか接続できない
- 院内にある複数のルーターで経路設定が必要になる
- 医療情報システムで無線LANを使うのは諦めて、インターネット接続専用にする
「医療情報システムで無線を使うのは諦めてインターネット接続専用にする」のは1つの選択肢でもあります。医療情報システムとつなげなくても、インターネットにつながるタブレット端末があるだけで便利ですし、幾つも有効な使い方はあります。
ただ医療情報システムに接続することを前提に考えると、院内ネットワークに無線APを接続しても十全に無線LAN導入のメリットを生かすことは難しく、中長期的にも無駄な投資に終わる可能性が高くなります。セキュリティの観点からも院内ネットワークの状況が分からないまま、無線LAN接続環境を構築するのは危険です。
特定の医療情報システムに接続する、もしくはインターネットにだけ接続できればいいというわけではないのなら、ネットワークを見直しましょう。無線LAN導入に際しては院内ネットワークを見直して、可能であれば図2のように接続経路を集約してシンプルにするのが理想です。
システムごとにルーターを配置するのではなく、仮想LAN(Virtual LAN、以下VLAN)の機能を持つ1台のルーターに集約します。構成上は通信が混ざってしまうように見えますが、実際にはVLANによって通信を分離するので、システムの安全性を損ねることはありません。
その上で無線APを導入すれば、無線APが接続するルーターは1台に集約しているため、どの医療情報システムに無線LAN経由で接続させるかは1台のルーターの設定を変更するだけで済みます(図3)。
ルーターを集約することのメリットは、無線APが増設しやすくなるだけではありません。外部との通信経路が集約されセキュリティ対策も取りやすくなりますし、ルーターの台数が減るので設定漏れのリスクも減ります。トラブルが発生した場合でも通信経路をシンプルにしておけば、問題の所在を解明しやすくなります。
またルーターを集約することで、iOS端末で標準サポートしているL2TP/IPsecという暗号化トンネル技術を使用して、院外から院内ネットワークに安全にアクセスするといったことも実施しやすくなります(図4)。
L2TP/IPsecを使用してルーターとVPN(Virtual Private Network)接続することで、ネットワーク的には院内にいるのと同じ安全性が確保できます。PCをiOS端末から遠隔操作するリモートデスクトップソフトウェアを使うことで、自宅や外出先から院内の医療情報システムを閲覧/操作することも可能です。
また、ルーターには「Wake on LAN」という機能があります。これはスリープ状態のPCを遠隔起動する機能です。ルーターにL2TP/IPsecで接続したiOS端末からWake on LAN機能を操作することで、自宅/外出先からPCを起動させることもできます。
東京都武蔵村山市にある、おぜきクリニックでは、無線AP導入に際して前述の全ての対策と設定をしており、在宅医療や自宅からの作業などに効果を発揮しています。
参考
おぜきクリニックの導入事例(ヤマハ)
もちろん、接続する医療情報システムを限定したり、インターネット接続のみに限ったりする形で無線LANを導入するというのであれば上記のような院内ネットワークの見直しは必要ありません。ですが、無線LAN環境を構築するといった機会でもない限り、なかなか院内ネットワークを整備する機会はないものです。ルーターとネットワークを集約してシンプルな環境を整備する、いいきっかけと考えて、実践することをお勧めします。
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