「モバイルで実現したい目標は何か」を整理しよう
「攻めの予防医学」にモバイルデバイスをどう使うか?
医療の現場ではモバイルデバイスの採用が着実に進んでいる。だが専門家によれば、まだ解決すべき課題もあるという。何がしたいのかを明確にし、効果的なデータ活用を実現すれば、医療の質の向上につながる。
課題はまだ残っているものの、医療現場ではモバイル技術の採用が進んでおり、その利用場面は多岐にわたる。2016年2月末から3月にかけてラスベガスで開催された医療ITに関する学会 「HIMSS 2016」(※)において、専門家らはそう語った。
※HIMSS:Healthcare Information and Management Systems Society(病院情報管理システム学会)
「医師がiPadなどのタブレット端末を使うようになってきている。患者はiPhoneやAndroid端末を使っている。モバイルという要素は実際に、一部の分野のケアの変革に大いに貢献している」とピッツバーグ小児病院のグローバル医療サービス担当で、副院長兼医療情報部門長(CIO)を務めるアルン・ラシッド氏は語る。
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ITシステムで変わる、医療従事者の新しい働き方
同氏が挙げる例によれば、医師らは今ではモバイル技術のおかげでよりインタラクティブに仕事ができるようになり、必要な情報をより確実に把握できるようになっているという。
利用場面が拡大
集団健康管理(PHM)を専門とするヘルスケア企業Alignment Healthcareのシニアメディカルオフィサー、アルタ・バクシャンデ氏によれば、医療分野には他にもモバイル技術の利用場面が数多くあるという。「退院後の患者や慢性疾患患者、虚弱な患者などの管理に活用できる。人工膝関節や人工股関節の置換術などでは、実際の動きを確認しながら術後の経過を観察することも可能だ。慢性疾患管理に関しては、心不全やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、糖尿病、高血圧などの患者を遠隔で診察し、再入院を最小限に抑え、患者の生活の質の改善につなげることができる」と同氏は語る。
訳注:集団健康管理(PHM)……特定地域の社会保険受益者など、特定の集団に対して予防から予後にわたり長期的に慢性疾患のリスクを低減する健康管理の仕組み。医療費増大を抑えるための予防的な取り組みの1つ。
また医療機関Intermountain Healthcareの副理事長(COO)、デービッド・ガーディナー氏はHIMSS 2016で米TechTargetの取材に応じ、同施設におけるモバイル技術の活用場面を紹介してくれた。例えば、医師はモバイルデバイスを使って、翌日の手術スケジュールにアクセスしたり、分娩を控えた妊婦の陣痛前の胎児心拍数などの検査データを確認したりできるという。
ただし同氏は「医療の現場でモバイル技術を活用するためには、まず何を達成したいのかを明確にする必要がある」と指摘する。
「例えば、医療従事者による診療録への署名漏れの問題があるとする。そのような場合は恐らく、モバイル入力の選択肢を用意し、セキュアな方法で署名できるようにするのが理にかなっている。そうすれば、医療従事者が記録を確実に残す助けになる」と同氏は語る。
対処すべき課題も
当然ながら、モバイル技術は医療のあらゆる場面に適しているわけではない。
「レントゲン写真はスマートフォンでは見づらい。肺の中に小結節があるかどうかの判断には、もっと大きなビュワーが必要だろう」とガーディナー氏は語る。
さらに同氏は次のように指摘する。「モバイル技術については、従来の方法に取って代わるというよりも、従来のやり方を拡張するものとして捉えている。何しろ、医療の仕事は複雑だ。提供されているケアに関する複雑な情報が適切に伝達され、その内容が正確であるよう留意しなければならない」
医療現場でモバイル技術を活用する上では、作成されたデータや収集されたデータをどう処理するかという問題もある。
「病院にはそうしたデータを活用する準備がどれだけ整っているだろうか。またそうしたデータを活用するために病院や保険会社がどのような行動計画を立てるかも重要だ」とバクシャンデ氏は語る。さらには、誰がそのデータを扱い、ワークフローをどうするかといった問題もある。例えば、プライマリケア医や専門医がメッセージやテキストを受け取り、そのデータに基づいて処置を進めることになるのだろうか。
また同氏によれば、データがどの程度リアルタイムなものかをはっきりさせることも重要だという。メッセージに含まれるデータが患者ポータルからリアルタイムで届くものなのか、あるいは1日単位または1週間単位で分析され、翌日まで結果が分からない類いのデータなのかで対処法は変わってくる。
効果的なデータ活用で質を向上
バクシャンデ氏によれば、Alignment Healthcareでは医療従事者と協力し、モバイルデバイスから収集する患者データを日常的に活用しているという。
「このおかげで、コストを削減し、医療ケアの質を高めることができている。それが患者にとっての最終的な目標でもある」と同氏は語る。
またラシッド氏は、まだ解消すべき問題はあるものの、医療分野でのモバイル活用は既に患者ケアの改善に大いに寄与していると考えている。
「医療行為の提供と情報の伝達という点で、モバイル技術は大いに役に立っている。よりスムーズな情報伝達は、より確実な医療の提供につながる」と同氏は語る。
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