脆弱性情報と引き換えに身代金を求める
悪の“バグ報奨金プログラム”ともいえる「サイバー恐喝」の恐怖とは(1/2 ページ)
2015年、IBMは“バグの領域”を侵害するサイバー恐喝攻撃を30件報告している。その攻撃は、悪意のあるハッカーがSQLインジェクションの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用して、企業を“助ける”ことを目的にしているという。
あるセキュリティ研究者が、2015年に30社の企業に対して行われた一風変わった一連の活動を報告している。その活動は、機微なデータや個人のデータがクラウドのサーバに投稿され、その後、そのデータを入手した方法を教える対価として金銭を要求するメールが攻撃者から送られてくるというものだ。
この一連のサイバー恐喝攻撃は、IBMのセキュリティ研究者が発見した。この研究者は、サイバー恐喝攻撃の流れが、組織のネットワークインフラや製品の欠陥や脆弱性を報告した研究者に企業が報酬を支払うバグ報奨金プログラムと似ていることから、この攻撃を「バグの領域侵害」と呼んでいる。
IBM Managed Security Servicesで上級脅威研究者を務め、この一連の活動を発見したジョン・クーン氏は次のように述べている。「重要なのは、サイバー恐喝攻撃の被害に遭った企業が、バグ報奨金プログラムを主催して攻撃を許可している企業ではないことである。攻撃者は必ず良識者を装って行動するが、実際は悪意のあるハッカーによる純粋な恐喝でしかない。この攻撃を仕掛ける犯罪者は、企業に何かしら良いことをしようと考えているふりをしながら、その行動によって金銭を要求している」
クーン氏によれば、この攻撃で最も興味深い点は攻撃者が活動する「モラルグレーの領域」だという。
「攻撃者は企業を侵害し、データを流出させ、データをオンライン上に投稿しているので悪意を持っている。どの法律でも違法な行為となるだろう。だが攻撃者は『金を支払えば、このデータは保護する』と主張する。つまり、これは脅迫だ。攻撃者が本当に企業を助けたいなら、企業に脆弱性を公開できるはずだ。そして、身代金(ランサム)を要求しなくても脆弱性は公開できる。そう考えれば、グレーなエリアかもしれないが、恐喝であることは間違いない」(クーン氏)
攻撃とその被害者について
クーン氏がサイバー恐喝攻撃やその被害者の具体例を明かすことはなかったが、TechTargetには次のように話している。「恐喝攻撃の中には、1つの脆弱性につき3万ドルの身代金(ランサム)を要求するものもある。これは定額料金で恐喝しているようなものだ」
クーン氏は、1社が恐喝に対して金銭を支払ったことを認めている。なお、そのケースでは、攻撃者は有言実行で、その会社に対して脆弱性を公開したという。
「被害者の大半が単純なSQLインジェクション攻撃を受けたことを除き、全ての被害者に実質的な共通点はなかった」とクーン氏は指摘する。つまり、攻撃者は攻撃しやすい部分を探して、迅速かつ効率性を高めて脅迫を仕掛けていることになる。
攻撃者が他の脆弱性を使用した可能性も否定しなかった。「30件全てではないが、一部の攻撃については詳細を把握している。それらの攻撃ではSQLインジェクションが使用されていたが、全てがSQLインジェクション攻撃だとは断言できないと考えている」
クーン氏は、攻撃者の身元については深く考えていない。「IBMは特定のつながりをたどることはしない。攻撃が発生したり組織化されたりする仕組みや、攻撃の具体例は把握している。だが、攻撃者が個人か集団かを特定する作業は行わない。そのようなことは、法執行機関に委ねている」
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