MacBookも採用の「USB Type-C」が後押し?
消えたはずの「ドッキングステーション」が“熱い製品”として帰ってきた理由(2/3 ページ)
ドッキングステーションが厄介なわけ
高速なデータ転送速度を実現するUSB端子、IoT、無線LAN、Bluetoothなどの技術が登場したにもかかわらず、2016年現在、消費者向けドッキングステーションへの関心が高まっている。その理由を明らかにするために、背景を少し説明しよう。簡単に言うと、技術が進歩する速度が非常に速いために、市場の最前線は大衆が追い付くのを待っている状態なのだ。それでは、詳しく見ていこう。
薄型化の流行
トランジスタベースのデバイスは、時間とともに小型化するのが普遍的な傾向だ。ムーアの法則では、技術的なブレークスルーが時々発生して、同じ面積に2倍の数のトランジスタを載せることができるようになるとされている。大ざっぱに言うと、電子デバイスの処理能力はトランジスタに基づいている。そのため、同じサイズのデバイスでも、数年前のデバイスより現在のデバイスの方が処理速度が急激に速いのだ。
現在、電子部品はほとんど何にでも搭載できるほど十分に小さくなり、電子部品によって消費者向け電子デバイスのデザインが制限されることはなくなっている。しかし、切手サイズの画面を指で正確にタップすることはできないし、このサイズの画面に大量のデータを表示することはどうやってもできない。そのため、ノートPCやタブレットなどのディスプレイを備えるデバイスには、縦横の最小サイズに事実上の制限がある。
だが、まだ小さくする余地のある次元が1つ残っている。厚さだ(重さも重要だが、呼び物になるのは厚さである。重さは通常、薄型化の副作用として軽くなる)。
2000年代中頃、HPの「HP Pavilion dv5000z」のような15型ノートPCは、重量がおよそ3キロで、厚さは3.8センチほどあるのが普通だった。現在、そんなPCをDell「XPS 15」の2016年モデルのような極めて洗練されたモデルの隣に置いていたら笑いを禁じえないだろう。しかし、恐らく意図していなかっただろうが、厚みがあったからこそ、このような旧式のPCには多数の端子を搭載できるメリットがあった。そのようなノートPCは、あるべき姿よりも少し厚かった。しかし技術的制約があったことが、よく使う端子を搭載するだけの厚みを維持することにもつながった。当時は今以上に有線デバイスに対するニーズがあり、端子の重要性が高かったことを思い出してほしい。ただし、その問題はもう解決してしまった。
旧式の分厚いノートPC時代の後、先述のように技術が進歩して電子部品を小型化できるようになったことで、ノートPCなどのデバイスは薄型化した。薄型デバイスの開発競争によって、業界は元の状態に戻った。搭載する電子技術によってデザインが決まるのではなく、デザインによって搭載する電子技術が決まるのだ。
実のところ、薄型化の流行は、それに合わせた技術を開発できる速度を超えていた。その典型的な例が「Micro-USB」だ。
Micro-USBは、ご存じの通りUSBの小型版で、多くのスマートフォンで充電に使用している。これは今後も変わることはないだろう。Micro-USBはスマートフォン業界のために存在する規格だ。Micro-USBの機能はPCに用意されている従来のUSBと同じだが、端子が小さくなっている。というのも、標準的な四角い「USB Standard-A」端子は一般的なスマートフォンの側面に接続するのに適さないからだ。
これと同じ問題がPC業界にも起こっている。現代のデザインの最先端を走るノートPCとタブレットは非常に薄く、USB Standard-A端子を接続するには難がある。言うまでもないが、デバイスが薄すぎてUSB Standard-A端子は接続できないし、ビデオ出力用のHDMIとDisplayPortに加え、イーサネットや、VGAのようなレガシー端子も接続は無理だ。端子を接続できるようにするためにデバイスを分厚くすると、許容できる以上に分厚くなってしまう。
消費者は、デバイスをできる限り薄くするために、機能を控え目にすることを望んでいる。Appleの2016年モデルの「MacBook」は、この精神を最も明確に示した例といえるだろう。このMacBookには端子が1つしかない。しかも、電源ジャックを兼ねているため、電源に接続中は端子を使えない。
結局のところ、デザインは消費者の要望に基づくため、デバイスのデザインは業界の他の部分にも影響する。だから何らかの形で、その全てに折り合いを付ける必要がある。業界標準策定に携わる企業は、おあつらえ向きの解決策があると考えている。
USB Type-Cの導入
小型化の流行による欲求不満に対処するため、またモバイルデバイスと普通のPCの間の規格の溝を埋めるために、新しいUSB規格の「USB Type-C」が開発された(USB Type-Cの概要については、紹介記事「『これしかないMacBookはかえって不便』──USB Type-Cの普及を阻むPCベンダーの勘違い」を参照してほしい)。
USB Type-Cはデバイスの接続など従来のUSBの用途に加え、これまでUSBが全く担っていなかったビデオ出力などの用途にも対応している。簡単に言えば、USB Type-C端子は何にでも使える新しい超薄型端子だ。アダプターを使用すれば、USB Type-Cを標準的なUSB Standard-A、HDMI、DisplayPort、VGAなどの端子に変換できる。USB Type-Cの裏にある実際の技術は従来のUSBと変わらない。しかし、USB 3.0、USB 3.1、Thunderbolt 3などの形で、高速なデータ転送を実現できる。
USB Type-Cがもたらした柔軟性やデザイン重視の消費者向け電子デバイス業界では現在、USB Type-Cが万能の端子だという考えが広がりつつあり、USB Type-Cを採用する代わりに他の端子を搭載しない場合もある。ここで問題になるのが、デバイスに幾つのUSB Type-C端子が必要なのかだ。USB Type-Cの採用は始まったばかりの段階にあるため、比較的ハイエンドなデバイスでもUSB Type-C端子を備えないものが見られる。そのため、複数のUSB Type-C端子を搭載しているデバイスはかなり珍しい。デザイナーは、少なくとも最薄型のデバイスには、1つのUSB Type-C端子で十分だと考えているのだろう。
Huawei Technologiesの2-in-1(ノートPCとしてもタブレットとしても使える)デバイス「HUAWEI MateBook」は、何よりも見栄えを重視し、薄さのために端子を犠牲にしたデザインの最たる例だ。備えているのはUSB Type-C端子とヘッドフォン/マイク兼用ジャックを1つずつ。では、それ以上の端子が必要になったらどうするのか。そこで、ドッキングステーションが再登場するわけだ。
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