コストよりも重視した価値とは
「Evernote」がGoogleクラウドへ移行、“ロックイン”は怖くない?(2/2 ページ)
クラウドロックインは怖いという常識
ユーザー企業とベンダーの間にはロックインは避けるべきという常識がある。だが、そこまで十把ひとからげに否定しなくてもいいという意見もある。
米調査会社451 Researchのリサーチディレクターを務めるアンドリュー・ライクマン氏は、制約だらけの契約を押し付けたり、解約に違約金を課したりするような不当に拘束的なロックインもある一方、ユーザー企業に有利なロックインもあると話す。他社にない独自の機能や使用者のスキルに合った特定のサービスやクラウドその他の商品と深く関わることができるのなら、わざわざ他のベンダーに移行する必要はない。そのような場合にまでクラウドロックインを過剰に恐れるのは短絡的だという。
「まだコモディティになっておらず、よそにはない独自のソリューションを利用しようと思ったら、ある程度のロックインは避けられない。それは必ずしも悪いことではない。ベストだと考えるソリューションを選び、それを制限せず、その一部だけを利用すればいい」(ライヒマン氏)
もちろん、1つのプラットフォームに全てを移そうとする企業ばかりではない。“クラウド生まれ”でない企業は特に慎重だ。クラウドロックインを避けるために「OpenStack」を使い続ける大企業もあれば、複数プロバイダーに分散する企業もある。事業部ごとに「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」、Google Cloud Platformなど異なる環境でアプリケーションを構築する企業もある。
有名な例の1つに、2016年前半、これまでAWSに保管していた全データの90%以上をカスタム構築インフラへ移すと発表したDropboxのケースがある。シナリオによっては、パブリッククラウドの方が自社開発インフラと比べて高コストになったり、あまり利点がなかったりすることもある。ただし、それは一定以上の規模の場合がほとんどだ。例えばDropboxの処理データは500PBを超える。一方Evernoteの処理データは3.2PBだ。
「当社の場合、革新性や導入スピードを考えると、自社開発するメリットはあまりない」とEvernoteのクンドゥ氏は話す。
GoogleとEvernoteは「Google Drive」で既にパートナー関係にあったが、Evernoteのパブリッククラウド選定にそれは影響しなかったとクンドゥ氏は言う。同氏はまた、コストはあまり重視しなかったと述べ、それよりも、導入するハイレベルサービスのセキュリティと信頼性、正確性を優先したと語った。
企業顧客獲得を進めるGoogle
今回の採用でまた1つ勝利を重ねたGoogleは、AWSやAzureに追い付いて大企業のワークロードを処理する能力を示そうとまい進している。2016年には、DisneyやCoca-Colaなどの有名企業がGoogle Cloud Platformを一部のプロジェクトに採用することを発表し、Spotifyなどの大手Webベース企業もワークロードの大半をGoogle Cloud Platformに移行する計画を発表した。
Evernoteのようなソフトウェア企業は、数年前にAWSが獲得していた顧客企業のタイプと似ている。とはいえ、Googleがこうした大企業を獲得するにはまだ時間がかかるとライクマン氏は指摘する。顧客ポートフォリオの構築は時間を要するが、今回のような動きを積み重ねていけば弾みがつくという。
「前例があることはとても力になる。買い手は初めての顧客にはなりたがらないからだ」(ライクマン氏)
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