効果を疑問視する声も
“10億ドル詐取未遂”の再発防止へ、SWIFTが加盟銀行のセキュリティコントロール義務化(2/2 ページ)
SWIFTのヤワー・シャー会長は「これは長期的な取り組みであり、業界全体の努力と投資、ならびに監督機関との積極的な連係が必要になるだろう」と述べている。
「サイバー脅威の増大には、業界全体が一致団結して対処する必要がある。だからこそ、SWIFTの理事会が全会一致で新たなフレームワークを承認するとともに、SWIFTの『Customer Security Programme』のさらなる発展に向けた取り組みを続けているのだ」とシャー氏は発表文に記している。
新しいセキュリティコントロールの義務化に対しては、疑問の声も上がっている。SWIFTによると「会員はセキュリティフレームワークに規定されたコントロールの順守を毎年示すことが求められる」という。だがSWIFTは自ら強制力を行使することはなく、「順守違反会員にはそれぞれの監督機関が対応する」と述べている。
ライタン氏はこの種のポリシーの実効性に疑問を呈している。
「これは現時点でSWIFTが実施できる最善策だと思うが、その効果は疑問だ。サイバーセキュリティ標準の強制力が弱い新興市場の場合は、なおさらそうだ。SWIFTも銀行業界も、この種の強制力を行使するのに必要なスタッフを抱えていない。SWIFTが、このようなグローバルなサイバーセキュリティの強制と監査を担当するスタッフを確保するには、かなりの資金が必要になるだろう」とライタン氏は語る。
バシエール氏によると、セキュリティコントロール標準の強制を監督機関に任せるのでは、標準の意味がなくなるという。銀行監督機関の性格は国によって大きく異なる。規定を順守しない銀行に対して厳しい措置で臨む監督機関もあれば、ほとんど何もしない機関もあるというのがその理由だ。「SWIFT自らがセキュリティプランを執行し、順守違反に対しては厳しい措置を講じるべきだ。そうすることで、実施と強制の質の一貫性が保証されるのだ」(バシエール氏)
Strategic Cyber Venturesのトム・ケラーマン最高経営責任者(CEO)によると、SWIFTがサイバー犯罪者コミュニティーに今後15カ月間もの潜伏を許すというのは、ばかげているという。「SWIFTは、そのエコシステムに対して積極的にサイバーセキュリティを義務付ける必要がある。順守違反の会員に対しては、除名とまではいかなくとも、少なくとも罰則を科すべきだ。不断の努力がなければ、サイバーセキュリティは決済システムに体系的なリスクをもたらすだろう」(ケラーマン氏)
またSWIFTは、国際決済の改善に向けた「Global Payments Innovation」(GPI)構想の実証試験の第1段階を完了したと発表した。「国際決済のスピード、透明性、エンドツーエンドの追跡」を改善することがその狙いだ。「エンドツーエンドの決済追跡を盛り込んだGPI構想は、大きな改革を実現する。この決済追跡サービスは、SWIFTが運用するグローバルトラッキングデータベースを利用し、クラウド上でホスティングされる」とSWIFTは記している。
エンドツーエンドの決済追跡の改善に対する評価の声はまちまちだ。Gartnerのライタン氏は「これはスタートだ。SWIFT加盟銀行の間でセキュリティ意識が高まるのは良いことだが今後もSWIFTのメッセージングシステムに対するハッキングが続くと予想される。SWIFTはもっと効果的なセキュリティ施行方式を打ち出す必要があるだろう」と慎重な見方をしている。
バシエール氏は、この取り組みがSWIFTのセキュリティの改善につながると、楽観的な見方をしている。「取引のログを両側で記録するというのは、セキュリティの改善に向けた大きな一歩だ。これは実質的にモニタリングソリューションだ。不正な取引が完了する前に、それを検知できる可能性が大幅に高まるだろう。バングラデシュ中央銀行への攻撃では、それができなかった」とバシエール氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー