急成長するチームメッセージング市場
人気のSlackに挑む「Cisco Spark」、単なるチャレンジャーで終わらない7つの理由(2/2 ページ)
1:クラウドネイティブ
オンプレミス型のユニファイドコミュニケーション(UC)システムを提供するベンダーの大半は、製品をOPEX(設備維持コスト)モデルに移行するだけではクラウド戦略にならないことを身をもって知っている。対処すべき課題は多岐にわたるが、中でもスケーラビリティとセキュリティは大きな問題だ。最新のクラウドサービスは、何百万人というユーザーを想定する必要がある。Cisco Sparkは、クラウドネイティブな新しいプラットフォームとして、UCaaS(Unified Communications as a Service)といった、積極的なロードマップを提示している。
2:コラボレーション製品群の融合
Cisco Sparkが目指しているのは、Ciscoのコラボレーション技術のエコシステムを統一することだ。そのエコシステムは、Web会議システム「Cisco WebEx」やテレプレゼンスシステム「Cisco TelePresence」、サーバ製品群「Cisco Unified Computing System」(UCS)などが含まれる。シンプルなUCaaS機能はCisco Sparkが提供し、高度な機能は他のUCサービスと連係して提供する。Ciscoの既存の電話システムや会議室システムは、エンドポイントとしてCisco Sparkに接続できる。Cisco Sparkのユーザーベースはいずれ、UCやビデオ会議などCiscoのコラボレーション部門全体のインストールベースと重なることになるかもしれない。Ciscoは2016年5月、WebExのユーザー数が1500万人を超えたことを明らかにしている。
3:提携の強み
Cisco Sparkの販売には、Ciscoと販売パートナーだけではなく、開発パートナーも関わる。企業向けオンラインストレージを提供しているBoxは先頃、IBMとの提携を通じて成立した数十万ドル規模の契約が前四半期に8件に達したことを明らかにしている。Ciscoは2016年6月にIBMとの業務提携を発表した。この提携の下、Cisco Sparkのコラボレーション機能を強化する。IBMの顧客がWebExやCisco Sparkを使う機会も増えるはずだ。Ciscoのコラボレーション部門はAppleとも業務提携を結んでいる。
4:Cisco Sparkの進化
クラウド向けAPIプラットフォームを提供するTropoを買収したことで、Cisco Sparkは作業効率を向上するためのメッセージングサービスから、開発者向けAPIを豊富に備えたプラットフォームへと進化した。さらにCisco Sparkは、クラウドに送信するデータの暗号化も強化した。これには、クラウド検索ツールのSynataを買収したことも影響している。2016年3月には、CiscoはCisco Sparkのエコシステムに1億5000万ドルを投資する基金の設立を発表した。
5:販売力
Ciscoの技術の存続可能性については議論の余地があるだろう。だがCiscoの製品販売力を疑問視する声はほとんどないはずだ。Ciscoは直販と間接販売の両方のチャネルを活用している。Cisco Sparkを提供するのはCiscoだが、販売はチャネルパートナーに頼る。有料プランはチャネルパートナーを介して販売し、UCaaSを利用するにはパートナーが提供するネットワークサービスが必要だ。
6:口コミの力
Cisco Sparkに特有のことではないが、メッセージングサービスはその性質上、採用が口コミで広がることが多い。他のコミュニケーション技術と同様、Cisco Sparkもユーザーベースの拡大とともに機能の強化が進むだろう。
チームメッセージングサービスの活用に関しては同僚からの圧力が大いに影響する。新しいツールに便利なコラボレーション機能があれば、チームがまず気付くからだ。
7:市場の伸びしろ
チームメッセージング市場はまだ新しく、サービスは未成熟だ。採用状況が好調なサービスもあるが、全体的には採用率はまだ非常に低い。言い方を変えると、チームメッセージング市場はこれから成長するということだ。この先さらに多くの競合が参入してくるが、Ciscoは独自のプラットフォームで有利なスタートを切り、各種の隣接製品を武器に良い位置に付けている。
ベンダー間の力関係が今後どうなるかは誰にも分からない。だがCisco Sparkはおそらくこの市場で存在感を発揮するだろう。現時点でCisco Sparkは未熟だ。UCaaS機能もソフトウェア開発者キットもAPIもまだかなり限定的である。それでもCisco Sparkは急速に成熟しつつある。
Cisco Sparkは既に、他のサービスにはない機能を各種備えている。例えば、従業員同士の通話を検出し、デスクトップ共有を受動的に設定することができる。会議室にいるユーザーを自動的に検出し、そのユーザーのスマートフォンをビデオ会議室のコントローラーに変えることも可能だ。さらにCisco Sparkは他のクラウドサービスよりも高いセキュリティレベルで顧客データを保存し、保護する。
以上は、今現在のCisco Sparkが備える機能だ。Ciscoは社内にDevOps環境を構築し、アップデートを頻繁に、ときには連日のように実施し、Cisco Sparkを急速に改善している。Cisco Sparkでは目下、仮想アシスタントサービスもテスト中だ。UCaaS製品は連係サービスによってより強固なサービスとなることが期待できる。
CiscoはCisco Sparkの採用数の公表に消極的だが、これはおそらく現時点での数字が将来を示唆するとは考えていないからだろう。
「Slack」は偶然の産物
チームメッセージングサービスの代表格といえば、Slackだ。Slackは、まだニーズが満たされていないこの市場の存在を明らかにした。Slackは2016年5月、デーリーアクティブユーザー数が300万人を超え、93万人が有料プランを利用していると発表した。
Slackの誕生はいわば偶然の産物だった。Slack Technologyは当初、全く別のアプリケーションを開発中に、チーム間の距離を克服するための社内コラボレーションツールとしてSlackを開発した。本来のプロジェクトが失敗に終わった際に、同社は方針を転換し、クラウドで提供するコラボレーションサービスとしてSlackをリニューアルした。
米国では未上場ながら評価額が10億ドルを超えるベンチャー企業を「ユニコーン」と呼ぶ。Slackの評価額は2年足らずで数十億ドルに達し、企業向けのサービスを手掛けるスタートアップ企業として初めてユニコーン企業の仲間入りを果たした。Slackの売上高と採用率の伸びは目覚ましい。Slackに続けとばかりに、他にも多くのベンダーが同様のサービスを開発している。
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