IDC Japanが予測
4年後の国内UC市場はどうなる?――キーワードは“ファイル同期”
国内ユニファイドコミュニケーション/コラボレーション(UC&C)市場は、年々拡大している。拡大の裏には、何が起きているのか。市場の現状や注目すべき分野についてIDC Japanの眞鍋 敬氏に聞いた。
2014年の国内ユニファイドコミュニケーション/コラボレーション(UC&C)市場は、前年比成長率5.7%の2307億7600万円だったとIDC Japanが発表した。2014年~2019年の年間平均成長率は3.7%で、2019年には2763億4300万円になると予測する(図)。成長する同市場の背景には何があるのか。市場の現状や注目すべき分野、今後の展望などを、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャーの眞鍋 敬氏に聞いた。
おわびと訂正(2015年6月11日13:40)
掲載当初、グラフの年別に売上予想数字を記載していましたが、IDC Japanから修正の依頼があったため、削除しました。読者の皆さまにおわびして訂正いたします。
眞鍋氏によると、UC&C市場は企業の電話システムがIP化された約10年前に一度注目されたものの、その後の市場の伸びは緩やかだったという。それが、「数年前から新たな成長の波が来ている」と眞鍋氏は指摘。成長の要因としては、下記が挙げられるという。
- 企業の内線システムのIP化が進んでいること
- テレワークを推進する企業が増えていること
- ビジネスの現場においてモバイル端末の利用が進んでいること
さらには、企業システムのクラウド化が進み、クラウドにUC機能を付加するケースが増えていることや、日本マイクロソフトや日本IBMといったベンダーがUC機能をクラウドで提供し始めていることなども同市場にプラスに働いていると眞鍋氏は指摘する。
IDCでは、UC&C市場の製品分野を下記の4種に分類、それぞれの市場を調査している。
- IP電話やPBX(機内交換器)製品などの「IPテレフォニー」
- メールやグループウェア、クラウドストレージなどの「コラボレーティブアプリケーション」
- ビデオ会議システムやWeb会議システムなどの「IPカンファレンスシステム」
- コンタクトセンターのシステムやサービスなどの「IPコンタクトセンターシステム」
バーチャルPBX化が進むIPテレフォニー市場
まずIPテレフォニー市場について眞鍋氏は、「IP内線網の導入が着実に進んでいる」と語る。IDCの調査によると、IP内線網を「導入していない」と答えた企業は、2013年に36.2%だったのが2014年には27.2%まで減少。その1つの要因として眞鍋氏は、PBXの機能をクラウド型サービスとして提供する「バーチャルPBX」が増加したことを挙げる。「IP内線網をクラウドサービスで導入した企業は全体の11.4%となった。これは無視できない市場だ」と眞鍋氏は述べ、バーチャルPBXが今後もIPテレフォニー市場をけん引する鍵になると説明する。
眞鍋氏によると2015年は、「2000年問題(※)」の直前に置き換えたPBXの2ラウンド目の更新需要が見込まれる。ただし、オンプレミスPBXは減少傾向で、それを補う形で月額使用料を支払うバーチャルPBXが成長するため、市場としては微増にとどまるだろうと同氏は話す。
※西暦2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた問題。
急成長するファイル同期/共有ソフト
コラボレーティブアプリケーション市場では、メールやグループウェアが飽和市場となりつつある一方で、ファイル同期/共有ソフトが急成長。同市場の伸びをけん引する要因となった。
メールについては、ユーザーインタフェースの変更を嫌うエンドユーザーも多いことからベンダーを変える企業は少ないが、日本マイクロソフトの「Office 365」をはじめとして「オンプレミスからクラウドへの流れは着実に進んでいる」と眞鍋氏は語る。クラウド化は、同じく日本マイクロソフトの「SharePoint Online」やサイボウズの「サイボウズ Office」など、グループウェアでも進んでいる。また、ソーシャル機能を盛り込んだ「IBM Verse」など、新たなテクノロジーを活用したメール製品/サービスの登場も、企業がリプレースを検討するきっかけになるだろうと眞鍋氏は見ている。
ファイル同期/共有ソフトでは、「OneDrive for Business」や「Google Drive for Work」など、「ビジネス版のクラウド型ファイル共有サービスが大きく伸びている」と眞鍋氏は話す。その背景について同氏は次のように説明する。「以前からコンシューマー向けのサービスを利用していたエンドユーザーが多く、ビジネスの場でも使いたいという要望が高まっている。ただし、コンシューマー向けサービスの利用をむやみに認めると、IT管理部門の目の届かないところでエンドユーザーが勝手にクラウドサービスを用いる『シャドーIT』となって管理しきれないため、ビジネス版を導入する企業が増加した。ビジネス版でも使い方はコンシューマー向けと変わらないので、エンドユーザーへの教育は必要ない。メールに添付していた資料も、こうしたサービスで共有すれば容量を気にすることなく利用できる」
カンファレンスシステムがよりパーソナルへ
同じく成長市場となったIPカンファレンスシステム市場。ただし、同市場について眞鍋氏は「これまで特にビデオ会議システムを中心に市場が成長していたが、ビデオ会議は既に多くの企業に行き渡り、ここ数年は伸びていない」と指摘する。その一方で、現在同市場で注目されているのは、より小型なWeb会議システムだという。
「これまでのビデオ会議システムは、参加者全員が会議室に集まり大画面の前で会議するという手法で活用されていった。一方、今ではカメラが搭載されたノートPCも多く、それを活用し、インターネットを介して1対1で会議するといったWeb会議システムが増えている。Web会議で特に重要なのは、音声や資料の共有。それさえできれば画質が多少悪くても問題ないため、安価でパーソナルな小型システムが求められるようになった」と、眞鍋氏は市場の動向を解説する。
コンタクトセンターではデジタル化が鍵に
最後のIPコンタクトセンターシステム市場については、約5年に一度巡ってくるリプレースの谷間にあたったことから「2014年は市場の調子が良くなかった」と眞鍋氏は言う。次の“谷”が来るのは2019年ごろとなるが、この時期はオリンピック特需も見込まれることから、「あまり大きな谷となることはないだろう」と眞鍋氏は話す。
コンタクトセンターでは、リプレースまでの期間が長くなっているようだと眞鍋氏は指摘する。その要因の1つは、次世代のコンタクトセンターに必要なものが何なのか、企業が慎重に検討していること。例えば、ソーシャルメディアとの連係や、音声を使うだけのシステムからデジタル化されたシステムへの移行など、「今後5年で、さまざまなメディアをミックスした方向に移行していくだろう」と眞鍋氏は指摘する。
中でも最近特に注目すべきは、「LINE」を活用したカスタマーサポートだ。2014年12月にはトランスコスモスが、日本オラクルのカスタマーサポートサービス「Oracle Service Cloud」と「LINE ビジネスコネクト」を組み合わせた「オムニチャネルサポートPowered by LINE ビジネスコネクト」を発表。LINEユーザーが問い合わせ先企業のアカウントと友達になることで、LINEトークから問い合わせができるサービスを展開している。眞鍋氏は、「コンタクトセンターのデジタル化により、企業は電話やメールといった多様な手段で問い合わせを受けることができるようになった。今後もLINEのようなツールがカスタマーサポートで使われるようになるだろう」と話す。
また、「コグニティブコンピューティング(※)」の活用も進むと眞鍋氏は指摘する。その一例が、三井住友銀行のコールセンターでの「IBM Watson」の導入だ。オペレーターがWatsonに質問を投げ掛け、Watsonが最適な回答を導き出す。これにより、コールセンターのオペレーター間での知識の差が吸収でき、誰が対応してもほぼ同様の回答が得られるようになるという。
※コンピュータが自ら膨大なさまざまな相関関係を見つけては仮説を立て、分析し、学習するシステム。
クラウド化の進むUC&C市場
最後にIDC Japanの調査による、各市場のベンダーシェアを紹介しておこう。
IPテレフォニー市場
IPテレフォニー市場は、NEC、日立製作所、沖電気工業といった国産ベンダーが強いという。
コラボレーティブアプリケーション市場
コラボレーティブアプリケーション市場では、Office 365を抱える日本マイクロソフトがトップだが、「Gmail」を企業で採用する企業が増えていることからグーグルも存在感を示している。
IPカンファレンスシステム市場
IPカンファレンスシステム市場は、シスコシステムズとポリコムジャパンが2大ベンダーだったが、近年ブイキューブが急速に成長しているという。シスコシステムズはビデオ会議システムとWeb会議システムの両方を提供する一方で、ポリコムはビデオ会議システムのみ、ブイキューブはWeb会議システムのみを提供している。現在Web会議システムが成長していることから、ポリコムとブイキューブの差は縮小していると眞鍋氏は指摘する。
IPコンタクトセンターシステム市場
IPコンタクトセンターシステム市場では、沖電気工業が長年トップの座を維持している。このほか日本アバイアやNECも同市場で一定のシェアを得ているが、この分野でもクラウド化が進んでおり、クラウド形式でコンタクトサービスを提供する「インタラクティブインテリジェンス」が急速に伸びているという。
眞鍋氏は、日本マイクロソフトやシスコシステムズなど、従来オンプレミスの世界で幅を利かせていた企業でもクラウドを推進するようになったと指摘。「クラウド化の流れに乗り遅れると、これから先が危ない。クラウドユーザーは、一度利用し始めると特に不満がない限りベンダーを乗り換えない傾向にある。そのため、一度ついたユーザーに対して良いサービスを提供すれば長期的な関係が続くだろう」と話す。
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