「AI」はセキュリティ担当者を救うのか【第1回】
セキュリティ対策を“対症療法”で済ませるのは、もう終わりにしよう(2/2 ページ)
セキュリティ対策の切り札となった「CSIRT」
こうした中、企業側が有効な対策として注目し始めたのが、冒頭でも触れたCSIRTやSOCの構築だ。増大するアラートの中からクリティカルなものは何か、その原因は何かをいち早く特定して対処できるようにするために、CSIRT/SOCを自前で構築したり、外部委託サービスの導入や検討を進めたりする動きが進んでいる。
CSIRTの一般的な役割はインシデントの事前、事中、事後対応だ。クライアントPCだけでなく、インターネットとLANとの境界にあるネットワーク製品が発するアラートに加え、機密情報を含むデータベースやファイルサーバといったリソースに対するトラフィックの兆候を分析する。
NRIセキュアテクノロジーズの2014年の調査では、CSIRTを構築済み(7.3%)、もしくは情報システム部門で類似機能を実施(34.5%)を合わせて、CSIRT構築済みとの回答が41.8%に上った。またCSIRTの連携機関である日本シーサート協議会に加盟するCSIRTは、2016年10月3日現在で186チームに及ぶ。
“アラート地獄”に悩むCSIRT担当者
筆者の職業上、CSIRTの現場担当者と話をする機会がよくある。その際に必ずと言っていいほど挙がるのが、アラート対応の問題だ。CSIRTは、セキュリティ製品が日々発する大量のアラートに対して原因を特定し、影響度を確認する必要がある。リスクの見える化を実現するには、こうした作業を全てのアラートに対して、かつアラートが上がった当日のうちに実施しなければならない。
ある金融機関のCSIRTは、1日に20万件を超えるアラートの対応を迫られることもあったという。CSIRTはアラートの緊急度に応じて、その一つ一つの原因を特定し、なるべくリアルタイムに対応を進めなければならない。だが実際はプライオリティ(優先順位)が低いと見なされたアラートは未処理となり、最悪の場合はそれを原因とする情報流出が発生する可能性もあるわけだ。
リスク侵入の3つのポイント
リスクの侵入ポイントは、平たく言うと以下の3点だ。それぞれに対して未知の脅威を含むリスクをリアルタイムに見える化し、動きを止めるための施策が求められる。これにより脅威を可能な限りLAN内に入れない仕組みや、さらには対処が必要なアラートを減らす仕組みが実現できる(図2)。
- 監視すべき通信
- Web(HTTP、HTTPS)通信: Webサイトの閲覧に加え、オンラインストレージ、Webメール、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などのWebアプリケーション経由でのファイルアクセスやダウンロード
- メール通信:企業アカウントまたは私用アカウント経由でのメールに含まれるURLおよび添付ファイル
- ファイル通信(FTPなど):ソースファイルのダウンロードやファイル共有
- 監視すべきソース
- 社内端末/サーバ(本社、拠点含む)
- ネットワークに接続する持ち込み端末
- ネットワークに接続するスマートデバイス
- インターネットにつながるモノ(IoTデバイス)
- 遮断すべき通信
- 許可しないアプリケーション
- 許可しない通信国
- 許可しないプロトコル
- リアルタイムにリスクを持つ通信先(C&Cサーバ、不正サイトなど)
セキュリティ人材不足やCSIRTの負荷の高さといった課題を乗り越え、こうしたリスクに対処していくための有力な手段となり得るのが、セキュリティインテリジェンスとAIとの組み合わせだ。次回は、近年よく聞くようになったセキュリティインテリジェンスの定義とその活用方法を、事例を交えて詳しく解説する。
執筆者紹介
高岡隆佳(たかおか・たかよし) ブルーコートシステムズ
セキュリティ業界での約15年の経験を生かし、標的型攻撃・内部不正対策製品を包括的に担当。データセキュリティスペシャリストとして企業のセキュリティリスク、対策、課題に精通しており、情報漏えい対策関連などの啓発活動に力を入れている。またデータベース・セキュリティ・コンソーシアム(DBSC)の運営委員として、データベースセキュリティの技術向上と、その普及を推進し、現在「DB内部不正対策WG」と「DB暗号化WG」のリーダーを務める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「AI」はセキュリティ担当者を救うのか
セキュリティ対策の課題解決に向けて、人工知能(AI)を活用する動きが活発化し始めた。そもそもなぜAIが必要なのか。セキュリティ対策にどう生かすのか。動向を整理する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー