ビジネス向けではオーバースペック?
新MacBook Proがビジネス市場でWindows PCと勝負しない理由
法人市場では依然としてWindows PCがMacよりも優勢だ。対して、一般消費者向けの市場ではMacも広く使われている。Appleの戦略とは? Macがどのような市場で強いのかを含めて紹介する。
専門家の予想では、Macが法人市場で勢いを増すことは当分なさそうだ。
Appleが提供している「Mac」のデスクトップやノートブックは、一般消費者や学生の間では人気だ。だが、ビジネスの世界で支配的なのはMicrosoftの「Windows」搭載クライアントPC(Windows PC)だ。2016年10月27日にAppleが発表したノートブック「MacBook Pro」の新モデルは、典型的なAppleユーザーに照準を合わせた新機能や仕様を搭載する。Macが法人市場で後れを取っている背景には、Appleのマーケティング戦略やビジネスアプリケーションの欠如など、さまざまな要因があるが、中でも最大の理由はコストだ。
企業が多数の従業員に対し、Microsoftのオフィススイート「Microsoft Office」や電子メール、Web閲覧など基本的な業務プロセスをこなすためのクライアントPCを支給したい場合、必要なのはハイエンドなクライアントPCやMacではなく、手頃な価格のWindows PCだ。AppleリセラーであるTSPの創業者でマネージングディレクター兼最高技術責任者(CTO)のマイケル・オー氏はそう指摘する。「数種類のアプリケーションを使っているだけの従業員に必要なのは、安価なWindows PCだ」と同氏は語る。
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Apple製品の価格は長らく批判の的となっている。新しい13インチのMacBook Proの価格は1499ドルからだ。一方、HPの最新Windows 10搭載クライアントPC「HP Spectre」は1099ドルから、Dellの最新Windows 10搭載ノートPC「Dell XPS 13」は799ドルからである。さらにDellやHPは、ローエンド向けの一部のWindowsクライアントPCを200ドルという低価格で販売している。
企業向けソフトウェアの点でも、Macは不利な立場にある。そう指摘するのは、医療技術事業者MillarのIT管理者であるスティーブン・パワーズ氏だ。Appleのコンピュータはデザイナーや動画編集者といったクリエイティブなユーザーに人気だが、そうした専門職ユーザーが企業の全従業員に占める割合は依然としてごくわずかだ。
「Macは長年アーティスト向けのデバイスとされてきた。そのため、ビジネスインテリジェンス業務をこなすためのアプリケーションがWindows PCほど充実していない」とパワーズ氏は語る。Millarの従業員数は200人弱だが、職場にMacは2台しかないという。
例えば、広く使われているDellの統計解析ソフトウェア「Statistica」は、Windowsにしか対応していない。Intuitの会計ソフトウェア「QuickBooks」のように、最初はWindowsにのみ対応し、後にmacOSにも対応したというビジネスアプリケーションは多くの場合、Mac版とWindows版で機能に差がある。
ただし、Macが浸透している分野が1つある。教育分野だ。この分野は、3D画像で人体解剖学を学ぶためのアプリケーション「Pocket Anatomy」など、macOSにしか対応していない各種の学生向けアプリケーションが存在している。フロリダアトランティック大学で最高技術責任者(CTO)を務めるメーラン・バシラトマンド氏によれば、教育以外の分野で、AppleはMacを法人市場に浸透させるための取り組みをほとんど実施していないという。同大は教室とコンピュータラボに約400台のMacデスクトップとノートブックを導入している。
「Appleは法人市場での成長を目指すまとまった戦略がない。Appleの関心は主に消費者市場に向いている」とバシラトマンド氏は語る。
MacBook Proの新機能
新型MacBook Proは、一般消費者やクリエイティブな専門職ユーザーの役に立ちそうな新機能を幾つか搭載する。
新機能「Touch Bar」は、従来のファンクションキーとEscapeキーに代わってキーボード上部に配置されるRetinaディスプレイの薄型タッチスクリーンだ。Touch Barには、ユーザーが使用中のアプリケーションに合わせてさまざまな機能やコマンドを表示でき、カスタマイズすることも可能だ。画像編集ソフト「Photoshop」を使用中であれば、「切り抜き」や「明るさ調整」などのコマンドの他、光のスペクトル(分光分布)が表示され、指をスライドさせて色を選択できる。
さらに新型MacBook Proは安全な認証方法としてキーボードに指紋認証センサー「Touch ID」を搭載し、Appleの決済サービス「Apple Pay」の認証に利用できる。ディスプレイは高解像度のRetinaディスプレイを搭載し、プロセッサはカスタマイズが可能だ。13インチTouch Bar搭載モデルであれば、2.9GHzデュアルコアIntel Core i5プロセッサや3.3GHzデュアルコアIntel Core i7プロセッサを選択できる。
Microsoftも2016年10月26日、クリエイター向けの新しいデバイスとして一体型クライアントPC「Surface Studio」を発表している。同社にとって初めてのデスクトップ型PCとなるSurface Studioは、28インチの4500×3000ピクセルでタッチ対応ディスプレイを搭載する。
「今後は、クリエイティブな専門職ユーザーのニーズに応えるのはAppleだと決めてかからず、『macOSとWindows 10のどちらを使っているのか』という会話が成立することになる」と調査会社Technology Business Researchのアナリスト、ジャック・ナーコッタ氏は語る。
Surface Studioの価格は2999ドルから。新型MacBook ProはTouch Bar搭載の13インチモデルが1799ドルから、15インチモデルが2399ドルからだ。新型MacBook Proは現在予約注文を受け付け中で、出荷開始は2~3週後の予定だという。
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