ビジネスチャットの地殻変動
Slack vs. Microsoft Teams以上に注目したい「働き方の劇的変化」
今、ビジネスチャットに注目しているユーザーたちは「Microsoft TeamsがSlackに仕掛けた戦い」に夢中だ。しかし、Microsoft参入はもっと大きな、「働き方の本質」を変えようとしている。
Microsoftはニューヨークで開いたイベントで、チャットベースの業務用ツール「Microsoft Teams」(以下、Teams)を公開した。最高経営責任者(CEO)のサトヤ・ナデラ氏はオーケストラやクリケットの試合を実例に挙げ、個々のメンバーの創造性を引き出す上でのチームワークのなせる業と、共通のフレームワーク(楽団員にとっての楽譜、選手にとっての作戦)の重要性を説いた。
その日、オンラインチャットアプリで高いシェアを持つ「Slack」の開発ベンダーSlack Technologiesは、Microsoftのオンラインチャット市場参入をNew York Timesに掲載した全面広告で「歓迎」した。その広告では、「新しい、もっといい働き方に慣れるためにはユーザーのサポートと連係に対して抜本的に異なるアプローチが必要だ」とMicrosoftをけん制している。
併せて読みたいお薦め記事
Teamsは何がすごい?
Slackの勢いは止まらない?
Microsoftが擁するコミュニケーションツール
Teamsの立ち上げは、Slackの宣伝戦略のおかげで巨大企業と新興企業との競合と印象付けることに成功した。しかし、ビジネスのスピードが加速しリアルタイムでの対応が必要になってきたという根本的な変化を裏付けるものであり、私生活のコミュニケーションや、意思決定の手段(あらゆる形態のデジタルチャット)が仕事にも適用できる実態を、MicrosoftやIBM、Cisco Systems、そして多数の新興企業が認識しているという裏付けでもあった。
「仕事のルーティン性は薄れ、より動的に状況に合わせて新しい方法を使うようになっている。それが組織の働き方を変えてきた」と指摘するのは、Gartnerでコラボレーションとソーシャルソフトウェアを担当する調査副社長マイク・ゴッタ氏だ。「古い働き方は極めて文書中心的で、チームのサイトに大量のファイルを投稿し、そこへ行って話し合いをしていた」
やがて、「Microsoft Yammer」や「Jive」などのコミュニケーションツールによってソーシャルコンポーネントが加わった。「チームの相互交流は今、文書からソーシャルネットワーキングへ、そして今やチャットというスタイルにある」とゴッタ氏は言う。このチャットモデルが組織において役に立つのは、仕事に必要な全てのツールやサービスにつながる広がり方に起因する。今、IT業界ではTeamsのグループチャットプラットフォームがエンタープライズコラボレーションに何をもたらすか、そしてMicrosoftがSlackにどう対抗するかが話題になっている。
選択肢の増加かレガシーによる混乱か
TeamsについてMicrosoftはオンデマンドのWebキャストで内容を詳しく紹介している。それ以外にも詳細なレビュー記事がWebにあふれている。その内容は、Teamsの豊富な機能とMicrosoftが数多く持つ他のコミュニケーションアプリ(「Skype」やYammer、さらに「Microsoft Word」「Excel」「PowerPoint」「SharePoint」「OneNote」「Power BI」まで)のハブとして機能できるという評価で一致する。Teamsのユーザーはグループでも1対1でもチャットができ、絵文字を使った会話のパーソナライズ、ファイルの共有、Skypeのビデオ通話、ボットとのやり取りもできる(Microsoftによると、T-BotはTeamsの使い方に関する質問に答え、Who-Botはチームメンバーについての情報を調べてくれる)。
ハブによるアプローチの功罪については意見が分かれている。ナデラ氏が、Teamsの製品の集合をメリットとして挙げたことに不思議はない。同じ作業チームは2つとなく、同じように機能する作業チームも2つとないとナデラ氏はいう。ナデラ氏自身は社内外とのコミュニケーションには電子メールを、情報の配信にはOutlook Groupsを、会社の掲示板にはYammerを、リアルタイムコミュニケーションにはSkypeを利用するといい、Teamsの「ユニバーサルツールキット」は選択肢を与えると説明した。
だが、Constellation Research アナリストのアラン・レポフスキー氏はこの豊富な選択肢について、プラス面ではなく、レガシーソフトウェア企業が抱えるジレンマの表れと評価する。レポフスキー氏は、ユーザーが望んでいるのはコミュニケーション手段の選択肢が減ることで、そうした製品を通じたルック&フィールの統一だと指摘した。
「Microsoftはこのポートフォリオを利点として売り込んでいて、それは同社が語らなければならないストーリーに沿っていると私は思う。なぜならそれが同社の製品ラインアップの特徴だからだ。もし何もないところから始めるのであれば、わざわざ同じことをする人は誰もいないだろう」とレポフスキー氏は話す。
表面上、Teamsは企業にとって、あるいは少なくとも「Office 365」を使っている企業にとっては、簡単に使えそうだ。2017年正式リリースの段階では、全バージョンのOffice 365が追加料金なしで組み込む。
だがCIOは「同じようなチームは2つとない」というナデラ氏の言葉を肝に銘じることになるだろう。レポフスキー氏、ゴッタ氏とも、Teamsの成功はこのプラットフォームが作業グループのニーズに合わせてどの程度カスタマイズできるかにかかっているとの評価で一致する。
「組織における連係体制は矛盾だらけだ。何千人ものユーザーが共同作業をするわけではなく、われわれはチームで共同作業する。もしTeamsがそのチームのニーズに合わず、Slackや『HipChat』がニーズに合っていたとしたら、極めて具体的な料理があるのに盛り合わせの皿を出すことになり、導入を試みたCIOは社内からの抵抗にあうだろう」とゴッタ氏は指摘している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー