ライフサイエンス企業のCIOが描く成長戦略【第1回】
製薬企業のIT部門は販促活動の環境変化に備えよ――知っておくべき技術トレンド(3/3 ページ)
個別化への対応――ビッグデータによる患者中心指向へ
ライフサイエンスにおけるマーケティングの、もう1つのトレンドは「個別化」だ。医薬品メーカーは医療従事者に対して、医療従事者の状況や背景に応じた情報だけでなく、エンドユーザーである患者を中心に考え、患者タイプに応じて個別化した情報を提供しなければならない。医学・薬学研究でも、臨床データ、電子カルテ情報、処方データなどといった匿名化された患者レベルデータ(注4)を用いた、疫学的統計的情報分析に基づくEBM(Evidence Based Medicine)が主流となっている。
注4:治験や臨床試験などの研究目的で、個別患者を特定できないよう匿名化したデータ。
このような以前から存在する患者レベルデータだけでなく、ゲノムデータやモバイルアプリ/ウェアラブルデバイスのセンサーデータなどが加わると、患者データの激増は必至だ。匿名化された「患者レベルのビッグデータ」を活用することが、ライフサイエンス企業の生命線となりつつある。ただしビッグデータの活用に重要な分析システムは、戦略というよりは日々の業務を支えるシステムである。IMS Healthの調査では、患者やエンドユーザーのアクションを導く予測機能を多く備えたシステムを有しているライフサイエンス企業は、10%に満たないことが分かった(注5)。
注5:「New Strategic Information and Technology Roles in Life Sciences Companies(ライフサイエンス企業における新しい戦略的IT職務)」より。IMS Healthが人材管理会社Egon Zehnderの協力の下で独立的な立場で作成した資料。
社内のあらゆるデータをDWHとして統合しようとしたり、製薬企業にとっての顧客である医療従事者との活動を中心にデータ統合を推進したりするライフサイエンス企業は少なくない。これまでのように自社の保有する社内データを統合し、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを利用して見える化を推進するだけでなく、特に匿名化した患者レベルデータやパブリックデータ、インターネットのデータを組み合わせて統合解析する動きが活発化している。このようなビッグデータを扱うためには、DWHやDBMS(データベース管理システム)の仕組みも、今までの分析システムとは異なってくる。一般的にスケールアウトが難しいといわれるRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)ではなく、スケールアウトが容易で大量のデータを分散処理できる「Apache Hadoop」や「Apache Spark」などの製品やテクノロジーを採用することだ。機械学習のアルゴリズムはこれらの分散処理アーキテクチャと親和性が高く、折からの人工知能ブームと相まって新しい解析手法を用い、新しいテクノロジーで提供する方法に期待が集まっている。これら新旧のデータを管理し、高度なインサイト(洞察)を導出する情報プラットフォームの考え方に関しては、連載第3回で解説する。
IT部門の変革への取り組み
前述のような環境変化により、ライフサイエンス企業のIT部門は、そのテクノロジーイノベーションを導くことでビジネスの成功を促進するという、より戦略的な役割を期待されている。IMS Healthによる調査(注5)で、グローバルなライフサイエンス企業上位50社のIT化の進行状況を評価する独自のIT変革スコアリング(Information and Technology Transformation Scoring: ITTS)フレームワークを発表した。企業の技術変革における進展は、イノベーションと破壊、組織変革といった戦略的要素、ビッグデータと分析、インフラと仕事の未来といった業務的要素を組み込んだITTSで評価できる。ITTSの指標ならばテクノロジーを理解するだけではなく、それを具現化するための組織戦略の重要性や、企業の変革の取り組みも把握できる。ITTSの詳細については連載第4回にて解説する。
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ライフサイエンス企業のCIOが描く成長戦略
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