2017年には一般利用も
レジなし店舗「Amazon Go」が採用、小売業を根本から変える“すごい技術”(2/2 ページ)
センサーフュージョン
センサーフュージョンは利用可能だが、ほとんど使用されていない。買い物客のスマートフォンからデータを取得するアイデアについては頻繁に議論されている。だが、取得したデータを使用するには、プライバシーの問題を避けて通ることができない。この機能を利用する小売業者は、顧客にお得意様アカウントへのサインインを求めて、移動や購入履歴を追跡できるようにする個人のID情報を頼りにしている。この“チェックイン”の処理は、店舗内を移動中の買い物客を追跡する上で欠かせない。今日では、Acuity Brandsといった照明関係の会社のおかげで、可視光通信やBluetooth搭載ビーコンの両方が市場で利用できるようになっている。Amazonがこれらのテクノロジーを組み合わせて使用し、店舗で買い物客の位置追跡を実現している可能性は非常に高い。RFID(非接触型ID)については言及されていないが、Amazonが使用する可能性はある。だが、同社のコンセプトはRFIDに依存していない。
コンピュータビジョン
コンピュータビジョンは、この種類の応用例において実績がない。PointGrabなどの幾つかのスタートアップ企業は、センサー感知に低解像度の動画を利用しているが、住宅以外の分野でハイエンドなコンピュータビジョンを使用している企業は存在しないに等しい。顔認証のような機能にコンピュータビジョンを用いる住宅のセキュリティカメラは現在も発展途上で、満足のいく性能ではない。さらに、カメラ自体が処理機能を搭載している必要があるため、カメラ1台につき250~400ドルとデバイス自体のコストが高い。1台のカメラの範囲が約1.4坪だとすると、1店舗当たりのコストはカメラだけで150万ドルにまで膨らむだろう。棚に設置するセンサーのコストは含めていないが、こちらのコストも必要になるであろう。TechTargetがある業界CEOにインタビューを行ったところ、「かなり困難で特殊なケースが出てくるだろう」という指摘があった。また、シリコンバレーの企業に勤める別の経験豊富な担当者は、個人の識別という難しい問題への対処方法として、指紋認証を推奨している。
AI
AIは意味のあるユースケースに絞り込むのに適用不可欠だ。新しいAmazon Goの店舗は、水面下でAIを実装して特定の問題を解決し、小売りプロセスの中で驚くべき革新を実現する方法を具現化している。同社によれば、この新しい店舗では、大規模でクリーンなデータセットに頼る“ディープラーニング”を使用しているという(半教師あり学習を参照)。
現時点ではAmazonがどの程度AIテクノロジーを使用しているのかは定かでない。だが、同社の広告にある自立走行車のAIにディープラーニングを実装している例は、Amazon Goの店舗におけるディープラーニング応用の可能性を示唆している。例えば、現在では、顔や物体の認識などのタスクにおける画像の処理に畳み込みニューラルネットワーク(ConvNet)が広く用いられている。究極的には、ConvNetを使用すると、店舗内で買い物客を案内して、手に取った商品を検出するようになるなど、個人を監視できるようになるだろう。
それから、買い物客の購入履歴を追跡することで、センサーから得た情報を補足して、ユーザーが手に取った商品に関する情報をシステムにもっと正確に伝えられるようにもなるだろう。他に考えられる深層ニューラルネットワークの応用例としては、購入履歴を入力履歴として使用することで、消費者が興味を持ちそうな商品を製品推薦エンジンが提案できる。
また、異常検知によって怪しい客の行動を検出して窃盗を防ぐことも可能だ。全体的に見て、人工知能(AI)やディープランニングという言葉を使うのはマーケティング戦略にすぎないかもしれない。だが、Amazon Goのエコシステムには非常に興味深く予測可能な幾つかのディープランニングの応用例が見られる。また、この報道が同社の「Amazon AI」の発表直後になされたことからも、Amazonが発表した内容を裏付けるだけの技術を持っており、AIを用いて未来型のデジタル食料品店を実現したことは間違いないであろう。
本質的に、小売業者は経営状況を明かさない。だが、これらのテクノロジーが経営状況を改善しながら買い物客のエクスペリエンスも向上するため、小売業者はテクノロジーを試しているのだろう。ただし、多くのAISテクノロジーには明確なROIがない。それはAmazon Goの店舗も同様だ。Amazonにとって鍵となるのは、未来のユースケースにAISテクノロジーの機能を活用することである。具体的には、棚の補充にロボットを使用したり、店内で個人に合わせた栄養計画を提案したりすることなどが考えられる。
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