今こそ未来に備えるとき
Fordが自動車開発に活用 急拡大するAR/VRビジネスに必要なスキルとは(2/3 ページ)
ARを使用した商取引の普及
Accentureは、AR/VR技術の成熟が進んだここ数年、企業におけるAR/VR技術の活用事例を調査してきた。この調査がもたらした成果の1つに、同社でデジタル部門のコンサルティングを担うAccenture Digitalが、大手自動車メーカーFiat Chrysler AutomobilesのためにGoogleの「Tango タブレット開発キット」を使用して設計、構築した没入型の自動車販売アプリケーションがある。2016年初頭に発表されたこのアプリケーションは、タブレットの画面に映した実際の自動車の映像に、色や装備のさまざまな組み合わせを重ねて確認できる。「Accentureはこの販売形式を“Augmented Commerce”(ARを使用した商取引)と呼んでいる。自動車から家具に至るまで、あらゆるものを顧客がアプリケーションを使って没入型の世界で確認してから購入できる日も近い」とアリベルティ氏は予測する。
アリベルティは「この体験を可能にするには、一般的な企業のIT部門では見られないスキルが必要になる」と補足している。アリベルティ氏のチームは、3DアーティストやJavaの開発者に加え、AR分野で経験を積んだユーザーエクスペリエンスの専門家がメンバーとして参加している。どのメンバーも、リアルなARエクスペリエンスを作り上げるのに必要な高品質の画像や映像を実現するために欠かせない人材だ。
FordのVR研究所
大手自動車メーカーFord MotorでVR技術と高度視覚化技術の専門家として働くエリザベス・バロン氏は、次のように述べる。「Fordは1999年から没入型のAR技術とVR技術に取り組んでおり、現在は新しい超高解像度VR研究所を保有している。この研究所は、実際にいる場所にとらわれることなく、設計者とエンジニアがリアルタイムで自動車の製造に一丸となって取り組むことができる」(バロン氏)
Fordが初めてVR技術を使用したのは、仮想の試作自動車の中で人が装置に手を伸ばせる仮想環境を作って、人間工学的な問題を解決するためだった。Fordはその後、エンジニアリングと設計の仕様の再確認にVR技術を使用するようになった。
「作業員は仮想空間で自動車の車体表面を見て、製造過程における差異が最終製品にどれだけの影響を与えるのかを判断できる可能性がある」とバロン氏は説明する。もはや開発時に使えるデータは、エンジニアのスプレッドシートに表示される数字や、コンピュータやアーティストによるモデルの予想完成図にはとどまらなくなっている。「VR技術によって、顧客の目線でデータをモノとして見ることができるようになる。そして顧客が製品を受け取るときと同じように製品を確認できる」(同氏)
VR技術によって、Fordは色や材質を実際に目で見るように確認して、設計の早期段階で問題を特定できるようになったとバロン氏は語る。事実、同社の自動車「Mustang」は、作業員の手が届きづらいヒューズ盤があることを設計時に特定して、製造工程に入る前にプランを変更している。またFordの広報ページは、同社の設計者とエンジニアが193種類の仮想の試作自動車で、13万5000カ所を超える細部について検証していることを明示している。
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