「佐賀県情報漏えい事件」で再考する学校セキュリティ【後編】
予算がなくても最低限やってほしい、学校のセキュリティ対策「3つのポイント」(2/3 ページ)
ポイント1:クラウドの活用
ノウハウもリソースも十分とはいえない教育機関がシステムの安定運用を実現するためには、そもそも運用しやすいシステムを構築することが近道となる。だがシステムの構築や運用ノウハウが十分でない教育機関にとって、運用性に配慮したシステムを自前で構築するのは難しい。だからこそ、専門知識に長けたベンダーが提供する製品/サービスを活用するなど、外部の知見を積極的に取り入れることが良い選択となりやすい。
システムの運用リソースが割けないのであれば、教育機関自らが運用する必要があるオンプレミス型のシステムよりも、ベンダーが運用してくれるクラウドサービスが適している。教育関係者の中には「クラウドへ大事な情報を預けることは怖い」と考える人もいるだろう。だが本当にそうだろうか。
クラウドサービスの先駆けとなったAmazon Web Servicesの「Amazon EC2」「Amazon S3」が2006年に登場してから、既に10年以上が経過した。ハードウェアのリプレース間隔が約5年(減価償却や機器の保守期限などが要因)であることを考えると、最初期のクラウド導入企業は、既に関連するシステムの一部または全体のリプレースやその検討を経験していることになる。
クラウドベンダーは企業からの批評の目にさらされ、リプレースによる流出を食い止めるべく、自社サービスの改善を進め、セキュリティに関する課題や不具合も解消してきたと考えられる。少なくとも、こうした知見を十分に持たない教育機関が一からシステムを構築・運用するよりも、ベンダーが運用するクラウドサービスを利用した方が、リスクを抑えることができるはずだ。
ポイント2:無線LANの安全性確保
SEI-Netの事件は、教育関係者に無線LANのセキュリティ対策の課題を再認識させた。とはいえ教育機関がネットワーク環境を整備する際、無線LAN以外の選択肢は考えにくいのが現状だ。ほとんどの教育機関の校舎には、有線LANケーブルを敷設できる「OAフロア」という床下の空間がない。現在販売されているクライアントPCやタブレットなどのデバイスも、無線LAN接続しかできないものが主流だ。IT活用を進める教育機関にとって、無線LANのセキュリティ対策から逃れることはできないのである。
無線LANのセキュリティ対策は、第一に認証だ。ネットワークセキュリティにおいて認証はそもそも重要だが、物理的なケーブル接続のない無線LANの場合、通信を制御する手段が限られるため、認証の重要性がより大きくなる。
認証の仕組みは幾つかあるが、無線LANの一般的な認証規格である「IEEE 802.1X」に準拠した認証システムの採用が、教育機関でも今度必須となるだろう。IEEE 802.1Xはユーザー認証の仕組みとして、主に「RADIUS」という認証プロトコルを利用することから、「RADIUS認証」と言った方が分かりやすい人もいるだろう。
IEEE 802.1Xでは、ID/パスワード認証の代わりにデジタル証明書を利用する「EAP-TLS」という認証方式も選択できる。ID/パスワードの漏えいによるなりすましと、それによる不正アクセスを防ぐことが可能だ。
デバイスのMACアドレスによってデバイスを識別する「MACアドレス認証」と、ID/パスワードによるユーザー認証の組み合わせも一般的だが、MACアドレスを偽装する手法が一般化しているのでお勧めできない。佐賀県への不正侵入でも、偽装によってMACアドレス認証を突破されてしまったとみられる。
生体認証も有効 “野良AP”への接続防止にも目を
教育機関での運用のしやすさを考えれば、生体認証の利用も効果的だ。運用としては、校舎に来た教員や学習者が登下校時に認証することで、そこにいる人しかネットワークへアクセスできない仕組みにするだけでよい。
始業時や終業時の出欠確認は、教育機関にとってなじみ深い。その運用に合わせて生体認証ができれば、なりすまし対策として効果的だといえる。生体認証の種類は指紋認証、静脈認証、虹彩認証などさまざまだが、安全性や認証精度に深刻な違いがあるわけではない。コストや認識スピードなどを考慮して選択するとよいだろう。
併せて推奨したいのが、デバイスから無線LANアクセスポイント(以下、AP)への接続制限だ。“野良AP”などと呼ばれる不正なAPへ接続させて、デバイスにマルウェアを感染させる攻撃への対策として機能する。デバイスから正規のAPへしか接続できない設定にすることで、マルウェア感染による重要情報の漏えいを防ぐことができる。
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