進化する「DDoS攻撃」にどう挑むか【第1回】
「Mirai」だけが脅威ではない 今こそ「DDoS攻撃」に注目すべき4つの理由(2/2 ページ)
DDoS攻撃拡大の理由
この背景には幾つかの理由が考えられる。主な理由は以下の4つだ。
- インターネット接続デバイスの増加
- 手軽なDDoS攻撃手段の充実
- 「リフレクター攻撃」の増加
- アプリケーション層DDoS攻撃の増加
それぞれの理由について詳しく見ていこう。
理由1:インターネット接続デバイスの増加
まず考えられるのは、より多くのコンピュータがインターネットへ接続し、そしてより多くのコンピュータがマルウェアに感染し始めているということだ。
DDoS攻撃の発生源となるデバイスは、マルウェアに感染したクライアントPCやサーバ、そして昨今ではセンサーデバイスやネットワークカメラをはじめとするモノのインターネット(IoT)デバイスが挙げられる。マルウェアに感染したこれらのデバイスは、コマンド&コントロール(C&C)サーバを通じて、実際の黒幕である「ボットハーダー」(ボットネットの指令者)の指令を受け、DDoS攻撃に加担することとなる。
多くの企業は、エンドポイントやネットワークのセキュリティ対策によりマルウェア感染を防ぐべく努力しているはずだ。だがその効果は100%完全なものにはならない。シグネチャや機械学習などその手段によらず、どのような対策でも抜けや漏れは発生するからだ。
DDoS攻撃を実行するマルウェアは、攻撃パケットを攻撃先のサーバへ向かって送る動作をするだけだ。そのため感染PCそのものの動作に大きな影響が及ぶことはなく、エンドユーザーが異常に気が付くまでに時間がかかる場合が多い。
IoTデバイスについては、さらに深刻な状況だ。2016年10月に、DNS(Domain Name System)の動的更新サービス「DynDNS」に対して発生したDDoS攻撃は、「Mirai」というマルウェアに感染した10万台以上のIoTデバイス(主に監視カメラ)が攻撃元になっていたといわれている。
多くのIoTデバイスは、そのデバイスの設定画面へのログインに用いるIDとパスワードの管理が十分ではないため、第三者にログインされてしまうことがある。これにより容易にマルウェアに感染し、結果としてDDoS攻撃に加担しているとみられている。
IoTデバイスはOSが特殊だったり、十分なストレージやメモリを備えていなかったりすることが多く、マルウェア対策の導入が難しい。仮に感染してもIoTデバイスとしての動作そのものには影響しないことがほとんどであり、対策がなかなか進まないのが現状だ。
理由2:手軽なDDoS攻撃手段の充実
次に考えられる理由は、DDoS攻撃を実行できるサービスが誰でも使えるようになったことだ。「Booter」「Stresser」などと呼ばれるこれらのサービスの背後には、前述したMiraiなどの大量のボットで構成するネットワーク「ボットネット」が動作していると考えられる。誰もがWebサイトで支払い手続きをするだけで、何千、何万ものボットを時間貸しで利用できるのだ。知識を持たない一般の人でも、いつでもたやすくDDoS攻撃の実行環境を手に入れることができるようになっている。
2014年には、高校生がオンラインゲーム事業者のWebサイトにDDoS攻撃を仕掛けた事件があったが、前述のようなDDoS攻撃実行サービスが1つのきっかけになっていると考えられる。以前はボットネットといえば、いわゆるハッカーが技術を競い合って構築してきたものだといわれてきた。だが今では、そのボットネットも飽和状態にあり、ハッカーはこれをビジネスへと転換してきている。
理由3:「リフレクター攻撃」の増加
管理が行き届いていないDNSサーバやNTP(Network Time Protocol)サーバの存在も、DDoS攻撃拡大の原因の1つとなっている。インターネットにあるこれらのサーバは、しばしばDDoS攻撃の踏み台として活躍する。よく耳にする「DNSリフレクター攻撃」「NTPリフレクター攻撃」といったリフレクター攻撃(アンプ攻撃とも)がこれに値する。ATALS が観測したDDoS攻撃の解析結果からは、2016年には、このリフレクター攻撃が全世界のDDoS攻撃の約25%を占めていたことが確認できている。
リフレクター攻撃は、DNSサーバやNTPサーバなどインターネットに公開されているサーバ(リフレクター)を悪用して攻撃を仕掛ける。攻撃者はリフレクターに対して、送信元として攻撃対象のIPアドレスを指定した問い合わせパケットを送信。リフレクターからの応答先が攻撃対象となるので、攻撃者は間接的に攻撃を実行できる。
ネットワーク機器の自動設定に利用されるプロトコルSSDP(Simple Service Discovery Protocol)によるリフレクター攻撃の多くは、一般家庭にもあるブロードバンドルーターが踏み台になっているケースが多い。ファームウェアのバージョンアップといった対策を取る必要がある。さらにCHARGEN(文字列データの自動生成に利用)やSNMP(ネットワーク管理に利用)などのプロトコルによるリフレクター攻撃も確認されており、まだまだ動向に注目する必要があるだろう。
理由4:アプリケーション層DDoS攻撃の増加
最後の理由は、OSI基本参照モデルにおけるアプリケーション層へのDDoS攻撃の増加だ。DDoS攻撃は前述した大規模攻撃以外に、サーバに対して小規模のトラフィックでインパクトが与えられるアプリケーション層への攻撃が知られている。アーバーネットワークスが2017年1月に発表した「第12版年次ワールドワイド・インフラストラクチャ・セキュリティ・レポート」によると、2016年には回答者の95%がアプリケーション層へのDDoS攻撃を報告している。
幾つかのDDoS攻撃ツールは、ゆっくりとしたHTTPリクエストの送信を可能にしている。これによりサーバのリソース消費量が通常より高まってスローレスポンス状態になったり、場合によってはダウンしたりすることが考えられる。このような攻撃はBooter/Stresserからも指定でき、ソースコード解析の結果、Miraiでも同様の攻撃が可能だと判明している。
あなたの会社が運営しているサーバ(ホスティングも含む)は、DDoS攻撃を受けた場合、ベンダーにきちんと防御してもらえることを確認できているであろうか。約款をいま一度ご確認いただきたいが、場合によっては大容量の通信があった場合には接続サービスを一時遮断するなどの記述があるかもしれない。つまり大規模DDoS攻撃を受けた場合は、そのサーバに対する通信が全て止まってしまう、ということだ。これは攻撃者にとってみれば、DDoS攻撃が成功したことを意味するものであり、再び攻撃を受ける可能性が高くなるともいえる。
インターネットの性質上、他企業が攻撃を受けた場合、同一回線上にある自社がその影響を受ける可能性も否定できない。そのような場合に、ベンダーがどのような対処を施してくれるかについても確認が必要だ。
DDoS攻撃は、インターネットが自由であることを逆手にとった“負の産物”だといわざるを得ない。現状われわれが利用しているIPv4/IPv6には、多くのセキュリティの弱点がある。にもかかわらず、残念ながらしばらくは利用を続けるしかない状況だ。読者の皆さんには、今DDoS攻撃が来た場合に、自社に対する影響のみならず社会的責務の観点からも、サイバー攻撃に屈しないという心構えで、いま一度リスクの精査をお願いしたい。
佐々木 崇(ささき・たかし) アーバーネットワークス日本オフィス SEマネージャー
1991年にJALインフォテックへ入社し航空機整備システムなどの運用を担当後、ディレク・ティービーでCS放送の立ち上げを経験。2000年からシスコシステムズでプリセールスSE(システムエンジニア)として主にNTT東日本、東京電力を担当。2004年からエラコヤネットワークスで、DPI(Deep Packet Inspection)テクノロジーによるアプリケーション識別のソリューションを提案。2008年より現職。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
進化する「DDoS攻撃」にどう挑むか
大量のトラフィックを発生させてシステムを停止に追い込む「DDoS攻撃」。その現状はどうなっているのか。求められる対策とは。DDoS攻撃の傾向と対策を示す。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー