SDSの定義とトレンド【前編】
徹底解説:vSAN、HCIベンダーが提供する「SDS」の長所と短所(2/2 ページ)
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)のSDS
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)では、サーバ、ストレージ、ネットワーク、ハイパーバイザーが、クラスタ化したノードにまとまった状態で販売されている。HCIは、導入時に必要な統合作業の負担、高価なサーバ、過剰なストレージのプロビジョニング、高可用性の問題、複雑なストレージ管理、ハードウェアの互換性に関する問題をなくすように設計されている。HCIのSDSは、さまざまなメーカーが多くの選択肢を提供している。例えば、Atlantis Computing、Cisco Systems、Dell EMC、富士通、日立製作所、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、HyperGrid、IBM、Lenovo、Maxta、NEC、Newisys、Pivot3、Quanta、Scale Computing、SimpliVity、StarWind、StorMagic、SuperMicroなどがHCIのSDSを提供している。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)のSDSの長所
- 柔軟性
VMwareのvSANと同様、VMの管理者はストレージを管理することができる。実際HCIのSDSには、VMwareの「VMware EVO:RAIL」参照設計を含むvSphereとvSANに基づいたものも幾つかある。vSphere、Microsoftの「Hyper-V」、Red Hatの「KVM」、Citrix Systemsの「Citrix XenServer」など、複数のHCIベンダーでハイパーバイザーの選択肢が提供されている。他にも、ハイパーバイザーが不要な「Docker」コンテナを使用した「Linux」で利用可能なベアメタル製品を用意しているベンダーもある。多くのHCIのSDSでは、さまざまな容量のノードをクラスタで使用することができる。Atlantis Computing、Maxta、StarWind、StorMagicなどは、ソフトウェアのみの実装となっているが、これは少数派だ。Maxtaは、Dell EMC、Quanta、SuperMicroといった大手サーバメーカーの大半とパートナー関係を結んでいる。
- スケーラビリティとパフォーマンス
HCIは、クラスタにノードを追加するのと同じくらい簡単にスケーリングできる。ストレージの容量を拡張するには、ノードの最大容量までドライブ(HDDやSSD)を追加するか、ノードを新しく追加するだけでよい。HCI製品のスケーラビリティとパフォーマンスの上限は、製品によって異なる。しかし、ほとんどの製品はPB規模でスケーリングすることが可能で、パフォーマンスはクラスタに追加したサーバノードに比例して向上する。
- 使いやすさ
HCIは、配線した後に電源を入れて構成すれば使用できる。これほどシンプルなシステムはまれである。自分たちで作業をする必要はなく、問題が起きればHCIのメーカーに問い合わせれば良い。
- 総所有コスト(TCO)
TCOは、VMware vSANとあまり変わらない。多くのHCIベンダーはインライン重複排除や圧縮の機能を搭載しており、総容量の要件とTCOを大幅に抑えることができる。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)のSDSの短所
- 柔軟性の問題
HCIは閉鎖的なSDSシステムであるため、ストレージは同じクラスタのサーバノードでしか機能しない。HCIクラスタに含まれない物理ホストや仮想ホストが、HCIストレージにアクセスすることはできない。ただし、NutanixとPivot3は例外だ。さらに、クラスタのハードウェアは、HCIベンダーが提供している製品か、ソフトウェアのみのHCIで認められているハードウェアに限定される。そして、HCIではVMware vSANと同じようにベンダーロックインが生じる。別のベンダーの製品に移行するには、移行元のHCIから全てのものを新しいHCIに移行するようベンダーに求められる。これはかなりの時間がかかる複雑な作業だ。
- スケーラビリティとパフォーマンスの問題
HCIクラスタの容量は、クラスタでサポートされているノードの数と各ノードでサポートされている容量が上限となる。VMで必要なIOPSが特定のホストが提供できるIOPSより多い場合、クラスタ内の他のノードからIOPSを補うことはできる。だが、その代償として少なからぬ遅延が生じる。また、クラスタ間のストレージのパフォーマンスも問題になる。ほとんどのHCIクラスタは、10Gbpsから40GbpsのイーサネットとTCP/IPを使用して、ホストを相互接続している。そのため、ホスト間の遅延の程度は大きく上下する可能性がある。
- 使い勝手の悪さ
サイロ化したストレージ環境をHCIクラスタに変換するには、まずVMではないイメージとVMの両方をHCIのVMかDockerのコンテナに変換しなければならない。だが、この作業には時間を要する。
- TCOの問題
vSANと同様に、HCIでは、特定のHCIノードで障害が発生した場合に、そのノードにあるデータ、VMイメージ、仮想デスクトップイメージ、Dockerコンテナイメージを、クラスタの残りの部分で確実に利用し続けられるとは限らない。現状では、複数のコピーを使ったミラーリングが必要になる。ベストプラクティスに従うと、元のデータのコピーが少なくとも2つ必要だが、3つのコピーを準備するのが一般的になっている。だが、このような対応によって総容量の要件とそれに関連するコストが増すことになる。
後編ではストレージ仮想化のSDS、オブジェクトストレージのSDSについて長所と短所を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
SDSの定義とトレンド
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
5
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
AI導入後に発覚する「社内文書を読めない」問題 情シスは何を直せばいい?
-
8
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー