SDSの定義とトレンド【前編】
徹底解説:vSAN、HCIベンダーが提供する「SDS」の長所と短所(1/2 ページ)
「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)の定義はベンダーによって異なる。ハイパーバイザーベースやハイパーコンバージドベースなど、さまざまな種類のSDSについて長所と短所を解説する。
ストレージの分野で、「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)ほど見解に相違が見られる用語はない。一般的に受け入れられている定義はなく、SDSの定義はベンダーによって異なる。ベンダーは、自社の製品に当てはまるようにSDSの定義を作り上げており、全てのストレージベンダーがSDSを提供しているように見えているのが実情だ。
SDS市場において、SDSの見解について一致しているのは、アーキテクチャではなくマーケテクチャ(マーケティング上の工夫)くらいだろう。
SDSでは、データストレージのハードウェアを管理するソフトウェアからハードウェアが分離されており、ストレージソフトウェア自体はハードウェアに依存していない。コントロールプレーンはデータプレーンから分離しているのが一般的だが、断言できるとは限らない。
このように広範な定義によって、現在利用可能なほぼ全てのストレージがSDSと認められている。そのため、SDS市場では、最適な機能を備えた製品の判断は消費者の手に委ねられている。
SDSのトレンドを後押しする原動力
あらゆるストレージシステムは、ソフトウェアによって定義されてきた。変化したのは、ソフトウェアを持ち運べるようになったことだ。
これまでストレージシステムのソフトウェアは、管理対象のハードウェアに付随しているのが標準だった。ハードウェアの容量やパフォーマンスが不足した場合は、ハードウェアを取り換えなければならなかった。そして、ハードウェアと合わせてソフトウェアのライセンスの再購入も余儀なくされていた。
事態を大きく悪化させていたのは、ストレージシステムのアーキテクチャが孤立したサイロを形成していたことにあった。一意なインフラが原因で、ストレージのプロビジョニング、データの保護、災害復旧、機器のリフレッシュ、データの移行、電力、冷却といった全ての要素が徐々に維持できなくなっていった。現在、データには、データの急増および増加の一途をたどるデータを保管するニーズというトレンドが見られる。このトレンドと現在市場に出回っているアーキテクチャの相互作用によって、ストレージシステムは非常に複雑で難解な存在であるだけでなく、高価な価格によって維持できなくなっているのが実情だ。
SDS市場が現在のようになったのには、幾つかの技術的な要因もある。まず、x86コンピューティングアーキテクチャの継続的な向上がもたらした必然的な結果と捉えることができる。x86アーキテクチャのパフォーマンス向上と特定のストレージ機能でコアが利用できることになったことで、ストレージシステムではx86アーキテクチャが標準になった。
SDSを後押しする他の技術的な要因には、サーバ、デスクトップPC、アプリケーション、ネットワーク(SDN)におけるx86仮想化の普及が挙げられる。この事実は、データイメージが存在するハードウェアからデータイメージを分離することをIT部門が受け入れる態勢を整えるのに一役買っている。
クラウドテクノロジーの人気も、SDS市場を後押しする大きな要因となっている。クラウドデータセンターは、業界標準とコモディティハードウェアに基づいた安価な新しいストレージアーキテクチャを必要としていたからだ。
SDSを後押しする他の技術的な要因には、サーバ側のフラッシュストレージ、メモリとサーバストレージを他の物理サーバホストと透過的に共有できるようにするソフトウェアなどが挙げられる。
これら全てのテクノロジーの変化によって、サーバとストレージハードウェアの垣根がなくなり、ストレージソフトウェアの携帯性と柔軟性は高まった。それから、ストレージのコストが大幅に減少していることも見逃せないだろう。
各SDSの長所と短所
標準的なSDSの定義が存在しない中で、SDS市場ではさまざまなテクノロジーが生まれてきた。前編では、以下2つのSDSの種類を取り上げる。
- ハイパーバイザーベースのSDS
- ハイパーコンバージドインフラ(HCI)のSDS
上述の各種類には重要な相違点と類似点があり、複数の種類に分類される製品もある。SDSでは「柔軟性」「使いやすさ」「スケーラビリティとパフォーマンス」「総所有コスト(TCO)」が重視されるため、本稿では、この4つの基準から各SDSの長所と短所を評価する。
ハイパーバイザーベースのSDS
この種類を生み出したのは、「VMware v SAN」を提供しているVMwareだ。過去、vSANは、「VMware Virtual SAN」と呼ばれていた。Scale ComputingやStoridgeなど、この種類のSDSを提供するベンダーは存在するが、依然としてトップの座に君臨しているのはVMwareだ。
vSANは、「VMware vSphere」の構成要素となるように設計されている。そのため、vSphereの1機能として動作し、vSphereの全ての仮想マシン(VM)と仮想デスクトップPCと連動している。vSANのソフトウェアはVMwareの「VMware ESXi」カーネルで動作するため、仮想ストレージアプライアンスではなく、実行にVMを必要としない。
ハイパーバイザーベースのSDSの長所
- 柔軟性
vSANは、DIMMベースのフラッシュドライブ、PCIe、SAS、SATA、NVMeを含むSSDとHDDの両方に対応している。また、ハイブリッドモードではHDDとSSDの両方、オールフラッシュモードでは全てのSSDがサポートされる。
- スケーラビリティとパフォーマンス
vSANは高い拡張性を持ちながら、高いレベルのパフォーマンスを発揮する。vSphereのクラスタ化を通じてスケールアウトを行い、1つのクラスタで最大64台のvSphereホストをサポートできる。なお、各vSphereホストは約140TBの物理ストレージ容量、1つのクラスタでは8PBを超える物理ストレージ容量に対応している。パフォーマンス面では、各vSANホストは10万以上のIOPSを供給でき、各クラスタでは数百万のIOPSが実現される。
- 使いやすさ
VMwareのスタックとしてネイティブに統合されているため、vSANは使いやすい。vSphereの他の機能と同じように使えるため、vSphereの管理者は直感的にvSANを理解できる。vSANのソフトウェアでは、ストレージタスクがVM単位で自動化される。自動化の対象となるタスクには、プロビジョニング、スナップショット、データ保護、高可用性、拡張クラスタ、災害復旧、ビジネスの継続性などがある。また、vSANへのデータ移行も、VMwareの「vSphere Storage vMotion」を使用して比較的簡単に行える。
- 総所有コスト(TCO)
レガシーストレージアーキテクチャに比べて、ハイパーバイザーベースのSDSのTCOは小さいはずだ。その理由は、ストレージシステムのドライブ(HDDとSSD)の価格が、サーバ用ドライブの価格と異なることにある。通常、サーバ用ドライブの価格はストレージシステムの3倍になる。他にも、vSANのコスト面の利点には、スケーリング、ストレージ管理とデータ保護の統合、災害復旧、ビジネス継続性についての予測しやすい従量課金方式、ストレージネットワークの統合などが挙げられる。
ハイパーバイザーベースのSDSの短所
柔軟性の問題:vSANは「VMware vSphere 5.5」以降にしか対応していない閉鎖的なSDSだ。ESXiの古い実装、他のハイパーバイザー、物理PCは、vSANに対応していない。つまり、vSphereクラスタの構成要素ではないVMや物理PCではvSANを使用できない。また、vSANにはDIY(自分で作る)の要素がある。例えば、使用できる安価なコモディティハードウェアは、VMwareのハードウェア互換性ガイド(HCL)にある程度制限される。このガイドに記載がないハードウェアはサポートされない。
- スケーラビリティとパフォーマンスの問題
VMで必要なIOPSが1台の物理vSphereホストが提供できるIOPSより多い場合、クラスタ内の他のノードからIOPSを補うことはできる。だが、その代償として、少なからぬ遅延が生じる。また、クラスタ間のストレージのパフォーマンスも問題になるだろう。ほとんどのvSANクラスタは、10Gbpsから40GbpsのイーサネットとTCP/IPを使用し、ホストを相互接続している。このアーキテクチャでは、決定的なシステムバスが非決定的なTCP/IPネットワークに置き換えられるため、ホスト間の遅延の程度が大きく上下する。クラスタで高性能かつ高速な相互接続が利用されない限り、ストレージのパフォーマンスはクラスタによって大きく異なり、一貫性は見込めないだろう。
- 使い勝手の悪さ
サイロ化したストレージ環境を純粋なvSANに変換するには、まずVMではないイメージをVMに変換する必要がある。vSphereを使用していない環境では、この作業にかなりの時間を要する。
- TCOの問題
vSANにはバージョン6.2まで、重複排除と圧縮の機能が備わっていなかった。そのため、データ削減機能を搭載したSDS製品に比べて、使用可能なTB当たりのコストが大幅に高かった。また、特定のクラスタ化されたvSphereホストで障害が発生しているときでも、そのホスト上にあるデータとVMDKをクラスタの残りの部分で確実に使用できるようにするには、複数のコピーによるミラーリングが必要になる。ベストプラクティスに従うと元のデータのコピーが少なくとも2つ必要だが、多くの管理者は3つのコピーを用意している。このような対応によって、ドライブの価格面の利点はなくなってしまう。さらに、vSANはvSphere専用のストレージでだ。そのためだけにライセンス費用が掛かるため、このコストは相当な額になる可能性がある。
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SDSの定義とトレンド
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