脱Microsoftプロジェクト
Microsoft帝国のロックイン――新たなる希望と帝国の逆襲
Microsoftによるロックインから脱却すべく、各国でOSSへの移行プロジェクトが進められている。成功したプロジェクトがある一方で、Microsoftによる巻き返しや政争へ発展して前途が不透明なプロジェクトもある。
Microsoftは、欧州全域の公的機関を実質上支配する帝国を築き上げており、その地位にあらがう試みはほとんど失敗に終わっている。だが、オープンソースソフトウェア(OSS)への移行をどうにか成し遂げた政府機関もある。彼らはどのような策を実行したのだろうか。
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欧州連合(EU)のデジタルアジェンダ委員長ニーリー・クローズ氏は2012年に、EUの機関だけでなく、欧州全域の政府機関がオープンスタンダードを採用すべきだと提唱した。プロプライエタリなソフトウェアのサプライヤーへの依存から公的機関が脱却することを狙ったものだった。
英国は、大規模な政府機関に対する働きかけの面では格段の進歩を遂げ、政府機関のGovernment Digital Service(GDS)が実施するイニシアチブによってOSSの利用を拡大させている。地方自治体とNHSは、依然としてプロプライエタリなソフトウェアに大きく依存しているものの、(OSS奨励の)メッセージは少しずつ、小規模な政府機関にも浸透しつつある。
しかしクローズ氏の発言から5年たった現在でも、EUの職員は「Microsoft Office」と「Windows」に頼っている。公共機関がそのようにMicrosoftの製品やサービスにどっぷり依存しているため、どの通貨においても数十億単位の費用がかかる事態となっている。この状況がイノベーションを阻害し、技術的、政治的、セキュリティ上のリスクを高めると専門家は指摘する。
EUの競争政策では、公的機関は公開入札によってソフトウェア利用契約を結ぶベンダーを決定するのが原則となっている。しかし、政府機関がMicrosoft製品を利用するという施策自体が「もはや現行の法規に適合しなくなっている」と話すのは、欧州緑の党所属の欧州議会(MEP)議員であり、EUの一般データ保護規則(GDPR)に関する責任者(ラポーター)を務めている、弁護士のヤン・フィリップ・アルブレヒト氏だ。
欧州全域で、租税、保健医療、警察、裁判所記録などの公的なITシステムは、Microsoft製品をその基盤として構築されている。また、欧州に居住する人々について収集した人口統計データは、各国政府がそれぞれ独自のファイル形式で保存している。Microsoft製品からOSSやフリーソフトウェアに切り替える場合、職員の再教育やそのためのリソースに多額の投資が必要になる。
OSSを採用したからといって、今まで支払ってきた費用がまるまる浮くとは限らない。公共機関は、Red HatやCanonicalなどの企業とサポート契約を結び、その費用を支払うことが珍しくない。それでも、オープンソース支持者たちは、政府機関が単一のサプライヤーにロックインされている状態を脱することが、結局は納税者の利益につながると主張する。
Microsoftの価格設定モデルは、実際にその職務に就いている職員たちから見ても、項目に整理するのは難しい。契約パッケージの内容は国によって異なり、各国政府機関が支払っている費用を同列に並べて比較するのはほとんど不可能だからだ。
「どんな場合でも特定企業の独占状態になると、顧客はその独占企業の製品に強く依存するようになる。ビジネスモデル全体が複雑になるため、顧客にとってもジャーナリストにとっても、競合製品との価格の比較が困難になる」と、ノルウェーのアーケシュフース県でITアドバイザーとプロジェクト責任者を兼任しているビヨルン・ヴェン氏は話す。
Microsoftが市場での地位を乱用しているのはEUの競争法に違反するとして、欧州委員会(EC)が同社と争ったのは、そう遠い昔の話ではない。この係争は、MicrosoftがECに数百万ポンドの制裁金を支払うことで決着した。EUの競争法によると、1社が市場を支配すること自体は違法ではない。ただしその地位を得た企業は、市場で競争を制限することを目的とした行動を取らないことを保証する、特別な責任を負う。
Microsoftには現在再び、反トラスト法違反の疑いが掛けられており、新たな調査が始まる可能性もある。この疑惑は複数のITセキュリティソフトウェアプロバイダーとECの間で交わされた議論が発端となった。MicrosoftがセキュリティソフトウェアであるDefenderをWindowsにバンドルしていることと、公共機関におけるWindows利用契約のシェア(が実質上独占的であること)がやり玉に挙げられている。
「われわれはMicrosoftが支配的な地位を乱用していると認識している。ただし現状では、われわれはどちらかといえばGoogleに対する調査に注力しているため、(Microsoftについては)正式な告発を待っているところだ」と、あるEU関係者は明かす。
慣習を破る
公共機関は従来、ソースコードが非公開のソフトウェアを好む傾向があった。だが最近はこの傾向が変わってきていることを示す例が欧州各地で徐々に増えている。
続きはComputer Weekly日本語版 6月21日号にて
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