「iTeachersカンファレンス 2017」レポート【第3回】
公立校の「教員の異動」はIT活用を阻害するか? 「1人1台タブレット」の現実策は?(2/2 ページ)
IT活用に多くの教員を巻き込むには
教員の異動や退職に伴うIT活用の停滞を避けるためには、一部の教員だけではなく、教員全体のIT活用スキルを底上げしていく地道な取り組みが必要になる。IT活用に積極的な一部の教員だけではなく、多くの教員にIT活用のメリットを広く実感し、実践してもらうのは簡単なことではない。大阪大学教授の岩居弘樹氏は「iPadカフェ」と称する情報交換の場を提供し、教員同士がiPad活用の実践内容を伝え合う場として活用してもらっている。だが全ての教員がこうした場を訪れているわけではないという。
IT活用の取り組みを広げるには、実質的にIT活用を主導している教員であっても「自分の役割を自分で決め付けず、他の教員の状況を把握した上で、自分のノウハウを共有していくのがよいのではないか」と、国際医療福祉大学大学院准教授の杉本真樹氏は助言する。佐賀市立大和中学校教諭の中村純一氏が実践する「職員室で聞き耳を立てて、他の教員の困りごとに敏感になるようにする」ことは、その具体例だといえる。どの科目でも利用できるデジタル教材やデバイスの機能などについて「『先生、こんなものもあるんですよ』と、押し付けにならない程度に教えることも有効」だと中村教諭は説明する。
同志社中学校・高等学校教諭の反田 任氏はIT活用を広げるに当たって、こうした「汎用(はんよう)的なIT活用について考えることが大切だ」と指摘する。数学の基礎知識定着にはドリル型のデジタル教材、理科の実験手順の確認には映像教材など、教科や学習内容によって最適なIT活用の仕方があるのは事実だ。だが「違う場所にいながらグループワークを進めるようなことは、教科に限らずできる。『この教科ではIT活用が難しい』などということはない」と、デジタルハリウッド講師の栗谷幸助氏は認識しているという。
IT活用を進めたくても、他の教員がどのようにITを活用しているのかが気になったり、他の教員とIT活用のレベルを合わせたい、と考えたりする教員は少なくないだろう。広尾学園中学校・高等学校の金子氏は、こうした声が多いことを認めた上で、IT活用に当たって教員同士で「足並みをそろえる必要はない」と強調する。教員によって授業のスタイルが異なるように、IT活用の仕方も異なるのは自然なことだ。さらに全教員がIT活用のレベルを合わせようとすると、もっと進んだ活用をしたくても、足踏みをして待たなくてはならない教員が出てきてしまう恐れもある。
最終回となる第4回では、最新技術が教育にもたらす可能性、今後の教育に求められる考え方について紹介する。
執筆者紹介
栃尾江美(とちお・えみ)
大学卒業後、ITコンサルタントとして外資系IT企業に勤務し、クライアント向けに業務システム(SAP ERP在庫購買管理モジュール)の導入などを担当。2005年にライターとして活動をスタートし、雑誌、Webなどに記事を執筆。ジャンルは多岐にわたり、働き方(女性活用、時短、リモートワーク)、IT、デジタル、子育て、教育、採用関連、経営者インタビューなど。プライベートでは2児(♂)の母。Webサイトはemitochio.net。
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