IT部門の選択肢は
「オブジェクト対応NAS」で再確認したオブジェクトストレージの利点(2/3 ページ)
オブジェクトストレージを理解する
オブジェクトベースのストレージは、バイナリデータ(オブジェクト)を保存する手段としては比較的新しい技術だ。1990年代半ばにFilePoolという企業が「コンテンツにアドレスできるストレージ」というアイデアを発表したのが同技術のルーツだ。FilePoolを買収したのがEMC(現社名はDell EMC)で、FilePoolの技術は「EMC Centera」製品として登場した。その後、多数のベンダーが非構造型コンテンツを大量に保存する機能を提供するアイデアを携えて市場に参入した。
共通ファイルシステムに対する改善策
物理ストレージアーキテクチャとしてのオブジェクトストアは、NAS製品が用いるファイルシステムに非構造型データを保存するのに伴う性能問題と整合性問題の多くを解消する。これはオブジェクトストアがファイルシステムという概念を採用せず、単一のフラットな名前空間あるいは階層にデータを保存するからだ。
以下に示すように、オブジェクトレベルのストレージは幾つかの重要な点でNASと異なる。
- Webベースのプロトコル(HTTPまたはHTTPS)でアクセスし、基本的にステートレス
オブジェクトプラットフォームとのやりとりは全て、保存、作成、更新、削除といったシンプルなコンストラクトを使用する。
- ファイル構造が存在しない
オブジェクトレベルのストレージは、非階層型のフラットな方法でデータを保持する「バケット」(論理ストレージコンテナ)を備える。
- コンテンツのフォーマットや構造に関知しない
データは、コンテンツを記述した属性を保持するメタデータとともに保存される。これはシステムメタデータ(保存日時など)の場合もあれば、コンテンツ検索手段を外部アプリケーションに提供するためにユーザーが定義したメタデータの場合もある。
- 通常はイミュータブルな更新
新規オブジェクトの保存は「オールオアナッシング」のプロセスであり、更新はインプレース方式ではなく「削除&作成」プロセスとして処理される。
- 当初のオブジェクトストアは高い拡張性を想定して設計された
多くのIT部門は、大量のバイナリデータを保存する必要がなければオブジェクトストレージを導入する意味がないと考えたのかもしれない。だが、この状況は変化しつつある。
- RAIDに代わる手法でデータ保護を実装
オブジェクトの複数コピーの保持やイレージャーコーディングなどの手法でデータ保護を実装する。
- コンテンツロッキングに異なる手法を採用
NASはコンテンツロッキングによってデータの整合性を維持する。個々のファイルは排他アクセスあるいはライトアクセス用として開けるので、データは一度の1つのソースからしか書き込めない。オブジェクトストアは本来、ロッキング機能を備えないが、オブジェクトをイミュータブルとして扱う。これは、整合性を維持するためにオブジェクトを上書きする場合もあることを意味する。
これら2つのストレージ方式を見れば、両者のデータの保存方法には多くの共通点があることが分かる。どちらも非構造型データに対応し、保存されたオブジェクトに関する情報を把握するのにメタデータを利用する。このことから、オブジェクトストアを改良してNASプロトコルを利用できるようにするのも十分に可能だと思われる。
統合型ストレージ
NASとオブジェクトストレージを統合すれば、1台のストレージプラットフォームを運用することで物理的ストレージを節約できるだけでなく、以下のようなメリットがある。
- オブジェクトストアは、データ保護とデータアクセスを地理的に分散した場所に拡張するためにイレージャーコーディングなどの手法を使用する
これはデータ全体のコピーを保持する従来のレプリケーション手法が必要でないことを意味する。これがストレージハードウェアの節約になるのは明らかだが、メリットはそれだけではない。レプリケーションで一般的なポイントツーポイント方式と比べると、データアクセスを複数の場所に効率的に拡張できるのも利点の1つだ。ただし注意すべきこともある。効率的な分散型オブジェクトベース方式を実現する上で重要な要素である地理分散型ファイルロッキングを行うのは容易ではないのだ。
- 各種のプロトコルを使用する多数のシステムから同時にデータにアクセスできる
NFSやSMBなどの従来プロトコルでコンテンツにアクセスできるのに加え、オブジェクトベースの効率的なアクセス方式を利用することによってコンテンツを他の目的で分析できる。オブジェクトプロトコルはステートレス方式であるため、コンテンツへのアクセスに伴うオーバーヘッドが少なくて済む。こうしたオーバーヘッドとしては、ファイルのロッキングやトラッキング、ロックの分散、オープンファイルハンドルの把握などがある。
- オブジェクトストレージメディアは拡張性が高く、安価
オブジェクトストレージは、アーカイブとして利用するだけでなく、従来型のファイルアクセスも提供できるようにするのが理想的だ。長期的なコールドストレージなどの目的でクラウド上のオブジェクトレベルストレージにデータを移行した場合でも、適切なメタデータを使ってコンテンツを検索する機能を維持できる。このアプローチを採用すれば、物理リソースとクラウドベースのリソースを併用したハイブリッド型プラットフォームの開発が容易になる。
オーバーヘッドの削減
オブジェクト-NAS統合型システムのマルチプロトコル機能は、ユーザーがリードオンリー分析やアナリティクスなどの日常的業務でデータにアクセスするだけならば、データアクセス速度の低下をもたらす可能性があるグローバルファイルシステムや新規データの書き込みといった複雑な機能を使わなくても済むことを意味する。このため、開発者が書き込みを行うときはNASプロトコルを使ってコンテンツロッキングと整合性維持の機能を利用する一方で、別の場所ではパフォーマンスの低下なしに読み出しができる。
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