KPIを行動につなげる方法論「WHW」とは
考えるな、感じろ……KPIは“右脳の言葉”で定義する(2/2 ページ)
“右脳の言葉遣い”とは
――KPIの名前を変えることの重要性を話されましたが、どのようないきさつでこうした手法を開発するに至ったのですか?
ヤック氏 私たちはデータ可視化のスペシャリストですが、9年前に会社を立ち上げた当初は、私たちの可視化は「見栄えは良いが、効果的ではない」というものでした。私たちはいつもなぜそうなってしまうのか、と自問せざるを得ませんでした。そして可視化の対象を検討したところ、私たちが可視化していたKPI自体に問題があったことが判明しました。チャートの種類や、色、きれいさが問題だったわけではなかったのです。
そこで私たちは、「こうしたKPIを綿密に調査し、その質を高める方法を見いださなければならない」と考えました。私たちはこの課題を社内で共有しました。市場に見られる手法をできるだけ多く評価し、“右脳の言葉遣い”や、シンプルさに加え、完璧なKPIは具体的にどのようなものかを学びました。こうして私たちは、「KPIに名前をつけることが出発点」という認識に達し、この認識に基づく手法を開発するに至りました。
――“右脳の言葉遣い”とは何ですか?
ヤック氏 インターネットで右脳と左脳の言葉遣いの違いを調べると、さまざまな見事な図が見つかります。それらの図は、右脳が私たちの創造性をつかさどり、左脳が分析に関わっていることを示しています。
その点で言えば、ほとんどの開発者は左脳を使っています。分析やコーディング、もろもろの複雑なことを手掛けているからです。これに対し、アーティストやクリエーターは、複雑な数学は理解できないかもしれませんが、右脳を使っています。こうした人々の創造的な活動について見ると、直感的な言葉を使うときに大脳皮質が働きます。私たちは、KPIの名前を変更することと、人々の心に響く適切な言葉遣いをすることは、別物であることに気付きました。
利益率を例に取りましょう。私たちのWHWによって変更されたKPI名が、「2017年までに利益率を25%増やす」だとします。あなたにこの「増やす」という言葉の可視化を頼んだ場合、あなたは上向きの矢印を使うでしょう。これは、視覚的ですが、感情に訴える言葉ではなく、左脳の分析的な言葉です。これに対し、「成長させる」といった右脳の言葉の可視化を頼んだ場合は、あなたは緑の葉や植物を思い浮かべるはずです。そのとき、あなたの脳では、葉を考えたことから、連想が働いているのです。
ほとんどの人には、「成長させる」という言葉に関わる個人的な経験があります。何らかの記憶が残っているのです。ですが、「増やす」という言葉については、同様な関係性はありません。こうした関わりがあると、人々がそのKPIを覚える可能性や、そのKPIのための行動を取る可能性が高くなります。
KPIを念頭に置き、目標KPIの達成に向けた行動を取るよう人々を促すことは課題となっています。KPIが右脳に訴えるように、時間をかけてKPIの記述を工夫したり、KPI自体を変更したりすることで、KPIに対する人々の取り組み方が変わります。
――CIOはKPIによって、売り上げ目標に対する従業員の意識付けをどのように促進できますか?
ヤック氏 私たちは、KPIの名前に工夫を尽くしたら、従業員の行動に対するKPIの影響にフォーカスを移します。
昔、ニューヨークのあるCIOが私にこう言いました。「覚えておくべき最も重要なことの1つは、全ての人に、WIFMを意識させなければならないということです」。私が「WIFMとは何ですか」と尋ねると、「What's in it for me(私にどんなメリットがあるのか)の略です」とのことでした。
WHWが引き寄せる2つの効果
KPIをWHW形式に変更する利点は、「何を(KPI名)、いくらで、いつまでに行う」が、全て名前として表現されることにあります。先程の例で言えば、25%という利益率の増加目標を、2017年という期限とともに設定するだけでなく、その目標を月、四半期、さらには日という単位期間に分割して設定することもできます。
さらに、その目標を達成するための売上高目標を設定するとともに、これに対する個々人の貢献度も設定することができます。こうして一人一人に定量的な貢献や行動を求めることが可能になります。
これは多くの場合、2つの成果につながります。まず1つは従業員一人一人に貢献を求めることができるようになります。もう1つは「これがあなた個人の目標だ。この目標と全社目標の関係や、他の人の目標達成状況と比較してどうすればよいか考えてみよう」と伝えることで組織内の前向きな競争を活性化することができます。
貢献を求めること、競争の活発化の2つは、KPIに影響を与える重要な要素です。心理的な要素はささいですが、その心理的な部分への働きかけが不足するとKPIに悪影響を及ぼしてしまいます。そのため私たちは認知的な面を掘り下げ、前向きな競争を保つ方法を模索してきました。その結論がKPIを右脳の言葉遣いで名前をつけ、かつ心理的な働きかけも併せて実施することが重要だ、ということです。
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