KPIを行動につなげる方法論「WHW」とは
考えるな、感じろ……KPIは“右脳の言葉”で定義する(1/2 ページ)
KPIを設定したものの、従業員が思うように動いてくれない。問題は従業員ではなくKPIの名前かもしれない。感覚的な観点とドラッカーの思想を取り入れた新しいKPI手法「WHW」で解決する。
KPI(ビジネスの目標達成のために設定する重要な指標)の名前を工夫することで、KPIを行動につなげることができる――。この認識から出発して開発されたKPI手法が「WHW」だ。開発したBI(ビジネスインテリジェンス。組織上のデータを収集、分析して経営の意思決定に役立てる手法)のコンサルタントが詳しく解説する。
「今はやりの人工知能(AI)のような技術は魅力的だが、CIO(最高情報責任者)はBIの基本に立ち返り、重要業績指標(KPI)の手法を見直すべきだ」。BIコンサルタントのミコ・ヤック氏はアドバイスする。
コンサルティング会社のBI Brainz Groupの共同創設者でCEOを務めるヤック氏は、「企業はKPIを行動につなげることに依然として苦労しているが、それは取り組みが不十分だからではない」と指摘する。実はデータの測定方法に問題があるのではなく、KPIを記述する言葉に問題があることが分かっているという。
「KPIの活用で課題となっているのは、データの測定方法ではなく、人々のKPI解釈だ。KPIを巡る問題の多くは、人々が行っているKPIの解釈の仕方に起因している」。同氏は2017年7月に開催されたBIとアナリティクス(データ解析)に関するカンファレンス「Real Business Intelligence Conference」での取材に対し、語った。
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WHWの理論とは
ヤック氏に、同氏のKPI方法論「WHW」では、どのようにKPIをシンプルな要素に分解するのか、研究を経てKPIの名前の心理的な影響を重視するようになったいきさつなどについて話を聞いた。なお、以下のやりとりは簡潔さと明確さのために編集している。
――あなたはチームが3~5つのKPIを持つことを勧めています。このアドバイスはどのような理論に基づいているのですか?
** ヤック氏** コンサルティング会社Franklin Coveyのコンサルタントらが著した『The 4 Disciplines of Execution』(邦訳:実行の4つの規律)という本があります。素晴らしい本です。彼らはこの本の中で、1つのチームが持つWIG(Widely Important Goals:最重要目標)は3つ以下にすべきと説明しています。彼らは調査を行い、長期間(KPIの追跡、モニタリング、管理の一般的な単位期間である1年、3カ月、6カ月)において、人が行動を取って成果を挙げられる目標は3つまでであることを実証しました。その一方で、5~8つのKPIが重要だとしている調査会社もあります。
私は、KPIレポートの追跡が最も行われるのは、モバイルデバイス(タブレット端末やスマートフォンなど)からであることを講演などで皆さんに話しています。人が1日に受け取る広告は3万件以上で、その半数はモバイルデバイス経由であることが実証されています。KPIは常にこうしたKPI以外の情報と競争していることになります。不要な情報のせいでKPIそのものに注意が払われる時間が短くなっているのですから、KPIはなおさら明確かつ具体的でなければなりません。そして人々がKPIに注意を払っているときは、「目標KPIを達成するには、具体的に何をすべきか」の意識付けが行われなければなりません。さもないと、KPIをうまく活用できません。
――あなたが開発したKPIの手法は、「WHW」と呼ばれています。WHWとはどのようなものですか?
ヤック氏 WHWは、「What」「How」「When」(何を、どのように、いつ)の略語です。私たちはピーター・ドラッカーの「SMART」の考え方を参考にしています。ドラッカーは誰もが知っていますが、例えば、「測定できないものは管理できない」という言葉が有名です。ドラッカーの方法論はSMARTと呼ばれています。これは「Specific」「Measurable」「Accurate」「Results-oriented」「Time-oriented」(明確、測定できる、正確、結果指向、時間指向)の略語です。ドラッカーは、KPIが有効であるためには、この5つの要素を全てKPIに盛り込まなければならないと述べています。
私たちは、「ドラッカーが勧めていることに目を向け、これらの要素を抽出して、文として構造化する」ことを提唱しました。そのためには、どのようなKPIについても、3つの質問を自問します。まず、「このKPIでは、目標達成のために何を行う必要があるか」(What do you need to do with it?)。これは、WHWの1つ目の「W」です。また、「いくらの費用で行う必要があるか」(By how much?)。これは「H」です。そして、「いつまでに行う必要があるか」(By when?)。これは2つ目の「W」です。これらの質問の答えを使って、KPIの名前を次のように変更します。「何を(KPI名)、いくらで、いつまでに行う」。
――WHWは、KPIの手法としてどこが優れているのですか?
ヤック氏 使いやすいことです。私たちは、KPIの手法に優劣があるとは考えていません。例えば、OKR(Objectives and Key Results、目標と期待値を明確にして個人と組織がやるべきことを明確にする手法)を使うのも、同様に効果的です。ですが、人々が表現できる文章でKPIを表現する方が、はるかに迅速な運用ができると思います。ある企業に赴いて、「KPIが20あります。これらを全て変更しましょう」と提案するとします。一部の手法では、そのためにはかなりの作業を要します。
これに対し、私たちが企業にKPIを表現する文の構造を説明し、3つの質問に答えるだけで、KPIを変更できることを示すと、企業にとっては"目からうろこが落ちる"体験になります。もちろん、この方法は、KPIの使い方にも影響します。KPIは具体的なものになっているので、大きな目標を人々が業務を通じて取り組むための小さな目標に分割しやすくなります。
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