あるバーベキューチェーンの挑戦
「Alexa」でBIダッシュボードを強化、音声アシスタントが職場を変える
Amazon の音声アシスタント「Alexa」を調理場で活用する米バーベキューレストランチェーン Dickey’s Barbecue Pitの事例を見ていこう。
米バーベキューレストランチェーンのDickey’s Barbecue Pit(以下Dickey’s)は、フランチャイズ店舗の従業員が調理中に運営情報を取得できるようにAmazon の音声アシスタント「Alexa」の利用を計画している。このダッシュボードならバーベキューピット(バーベキュー調理に使用する大型の調理器具)から離れた場所でも利用できる。
バーベキューレストランで肉をスモークする仕事は、汚れがちな現場での調理作業となるため、キーボードを使用してBIダッシュボード上に表示される業務情報を確認するには適していない。この問題を解決するために、Dickey'sでは、音声ベースの問い合わせを利用する新しい分析ツールの追加導入を進めている。
米国内に約600軒のレストランを展開するDickey's Barbecue RestaurantsのCEOであるローラ・リア・ディッキー氏は、Alexa上にアプリケーションを展開し、現場で調理しているフランチャイズオーナーが音声でレストランの運営状況を確認できるようにする予定だと述べた。例えばその日の売上高や在庫状況、サプライヤーからの配達予定などの最新情報をAlexaに確認できる。さらには顧客からの評価、最適なスモーク時間まで知ることができる。
オペレーションからマーケティング、顧客の感想や意見に関する情報まで可視化するBIダッシュボードは、分析システムの中核であり続けるだろうと、ディッキー氏は語った。同氏は2017年の初めにこの家族経営チェーンのCEOに就任する以前、同社のCIOだった。彼女は、調理をしていないときに長期的な分析や計画を行う場合でも、主としてタブレット端末を介してダッシュボードにアクセスすることになると考えている。
さらに、フランチャイズ店舗の従業員が利用時に手袋を脱いだりピットから離れたりするせずに済むインタフェースを提供する考えだ。この音声技術なら、食品安全の手順や廃棄物管理に関するリマインダーなど、調理プロセスにおいて何か特定のことを行う必要がある場合に、その指示を出すこともできる。
ディッキー氏によると、レストランのオーナーは社内研修プログラムを通じて「ピットマスター」の認定を受ける必要がある。また、ほとんどのオーナーは現場で調理も行う。さらにDickey'sでは、客席から調理場が見えるようなデザインを採用しているため、オーナーが引きこもるスペースがない。つまり、スプレッドシートを眺めるためのオフィスマネージャーの事務所などは存在しないのだ。
分析処理への参入障壁
ダッシュボード上の運営情報を分析するためにタブレット端末の使用が必要であったことは、2015年にDickey'sが導入したクラウドベースの分析プラットフォームをレストラン店舗へ展開する際に障壁となった。「Smokestack」と呼ばれるこのアーキテクチャは、Syncsortのデータ統合ツールを実装したAmazon RedshiftデータウェアハウスとYellowfinのBIおよびダッシュボードソフトウェアを組み合わせている。このプロジェクトの第1段階では、企業レベルでのより良い分析を可能にするために、サイロ化したデータセットを収集することに重点を置いていたとDickey氏は説明した。
第1段階の完了後、Smokestackの構築を支援してきたコンサルティングサービス会社のiOLAPは、分析プラットフォームへのインタフェースとして作成した新しい音声環境の使用をDickey'sとの会議の席で提案した。ディッキー氏と他の経営幹部は、この音声機能の採用はSmokestackを「調理の現場で」使いやすくするための方向性を示していると考えた。
しかし、Alexaを店舗で使用する際には幾つかの課題がある。同社は2017年2月に数十店舗のレストランでAlexaアプリケーションのテストを開始した。これには、画面やBluetoothとの接続の有無など、さまざまなハードウェア設定のテストが含まれ、「まだ微妙な調整作業に取り組んでいる」段階であることをディッキー氏は認める。
ディッキー氏が指摘したもう1つの問題は、オーナーと従業員が音声認識デバイスへ容易にアクセスでき、煙や油汚れ、周囲の騒音からデバイスを保護できる最適な設置場所を見つける必要があることだ。ディッキー氏は、2017年後半にはシステムの稼働を開始したいと望んでいるが、テストの状況とハードウェア設定の最終決定によっては、2018年にずれ込む可能性があるという。
iOLAPのアドバンストアナリティクス担当バイスプレジデント、ダグ・クラウス氏は「ダラス・フォートワース国際空港を含む他の幾つかの組織でも、iOLAPとAlexaを利用した音声アプリケーションに取り組んでいるが、Dickey'sは稼働開始に最も近い」と述べた。
多様な質問にどう答えるか
Alexaの持つ人工知能の能力にもかかわらず、Dickey'sのユーザーが繰り出す可能性のあるさまざまな質問方法の全てをAlexaに理解させることが課題である、とクラウス氏は述べた。iOLAPの開発チームは、どういう言い回しで質問するべきか、いくつかのガイドラインを示しているが、それにも限界がある。 「誰もが同じように質問しなければいけないとはいえません。それは現実的ではないからです」と彼は説明した。
クラウス氏によると、今のところ、開発者は手動で1つの質問に対して40個の異なる言い回しをDickey'sのアプリケーションに学習させている。彼らはまた、あまり使われない、または不明瞭な言い回しの意味を特定する能力を向上させるために、機械学習および自然言語処理コンポーネントのカスタマイズに取り組んでいる。2018年には、これらのテストを開始できる予定だ。
音声アプリケーションはBIダッシュボード同様、Redshiftのデータに直接接続するとクラウス氏は述べている。iOLAPは、ユーザーがダッシュボード内の視覚化されたデータにアクセスし、音声コマンドを介してそこから情報を引き出すことができるアドオン機能を検討している。また、エネルギー業界の別の顧客と共に、音声でダッシュボードとレポート作成を起動できる機能についても取り組んでいる。
コンサルタント会社TreeHive Strategyのドナルド・ファーマー氏は、「ダッシュボード、音声技術、その他の種類のツールを使用する場合でも、企業は情報の活用方法に適したBIと分析システムを構築する必要がある」と述べる。 同氏はDickey'sショーのプロジェクトにおいても、「これを行う方法は1つではないと語った。
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