アーリーアダプターが絶賛
Amazonの音声アシスタント「Alexa」に対話型インタフェースの未来を見た
音声アシスタント機能付きスピーカー「Amazon Echo」に採用された音声インタフェース「Amazon Alexa」は、セキュリティおよび管理上の制限が企業に利用拡大のネックになっているものの、将来は明るそうだ。
Amazon.comの音声ユーザーインタフェース「Alexa」は、IoT(モノのインターネット)デバイスのさまざまな新しいユースケースの実現を可能にする。企業はAlexaの機能をAmazon Web Services(AWS)インフラと組み合わせ、スピーカーやインターホン、冷蔵庫といったデバイスの音声機能を簡単に開発できる。また、Alexaは消費者に、自宅やオフィスの照明、温度、セキュリティをコントロールするオプションを提供する。だが、Alexaの機能は、セキュリティ、管理、アプリケーション配信に関しては限られている。このことは、企業におけるAlexaの広範な導入や実装の妨げになっている。
それでも、一部のアーリーアダプターは、IoTタグを使って会議室管理、研究設備の操作制御、医療ワークフローの改善といった形でAlexaの概念実証を行っている。長期的には、音声ユーザーインタフェースの柔軟性のおかげで、多種多様なエンタープライズユースケースが生まれそうだ。
AWSエコシステムの拡張
このところ、人気のある対話型音声アシスタントのエコシステムが幾つか市場に登場している。Appleの「Siri」と「HomeKit」、「Google Assistant」と「Google Home」、「Microsoft Cortana」などだ。Amazonは、未来型の対話インタフェースとしてAlexaに大きく賭けている。Alexaは大規模なベンチャー投資を獲得し、1000社以上の開発会社に支持されている。
Amazonは、「Alexa Skills Kit(ASK)」を使って音声アプリケーションを開発できるようにしている。ASKは、任意のWebサービスや「AWS Lambda」の機能と連係して特定のタスクを実行する音声コマンドを簡単に開発できるようになっている。開発者はASKを使って、SaaS(Software as a Service)のクエリ、ビジネスプロセスの強化、オフィスにあるデバイスの管理の容易化などを実現できる。
また、「Amazon Alexa Voice Service」によってデバイスメーカーは、手を触れずに操作できることがメリットになる会議システムなどのオフィス機器や、キオスク、医療設備などに新しい音声入力機能を追加できる。この機能は、AWSエコシステムとの密接な連係によって実現される。
有望な初期事例
タッチフリーの音声統合は、医療業界のビジネスプロセスを大幅に改善する可能性がある。Boston Children's Hospital(ボストン小児病院)は、「KidsMD」というAlexaスキル(機能)を導入した。KidsMDは、親が子どもの症状について問い合わせるのに利用できる。移動や視覚が不自由な親は、音声で情報を入手したり、環境をコントロールしたりできる。IoT対応のタグが一定レベルのコンテキストや認証機能を提供し、操作性を高めている。
NASA(米航空宇宙局)のジェット推進研究所は、宇宙船の設計、開発、運用、サポートに携わる職員の業務の効率化に向けて、Alexaの概念実証を進めている。開発済みの初期プロトタイプとしては、音声コマンドを使った会議室の構成、研究設備の異常の通知、さらには惑星や衛星の探査車の制御といったアプリケーションなどがある。
また、人々や部屋、機器の追跡を行うIoTビーコンの開発を手掛けるBecoは、オフィスの会議室の予約と利用を管理するプロトタイプAlexaアプリケーションを開発した。
手がふさがっているワーカーが音声で情報収集や機器操作を行うというユースケースは、バリエーションがたくさんある。また、音声でこれらが可能なユースケースは、危険な環境で治安や防衛といった任務や製造業務に当たる場合にも便利だ。音声インタフェースは、ワーカーによるハンズフリーの情報アクセスや機器操作を可能にする。
企業利用における制限
消費者市場では、オーケストレーションやセキュリティ、アイデンティティーおよびアクセス管理(IAM)、ガバナンスに関する要件が企業市場ほど厳しくない。Amazonは、Alexaスキルと高度なアプリケーションを統合するための抽象化レイヤーを構築してきた。既に1500以上のスキルが利用できるようになっている。開発者はカスタムAlexaスキルにより、アプリケーションやデバイスを含むほとんどあらゆるプロセスを実現できる。また、ASKに含まれる「Smart Home Skill API」は、幅広いデバイスの制御に必要なコーディングの量を軽減する。「Alexa Scenes」は、一連のデバイスの管理のオーケストレーションを1つのコマンドで簡単に行えるようにする。しかし今のところ、Alexaの機能は家庭向けのユースケースをターゲットにしている。
セキュリティについて見ると、Alexaスキルは全てパブリックマーケットプレイスで提供されている。企業で使用するモバイルアプリで一般的となっている、安全なエンタープライズアプリストアを構築する方法は、現時点ではない。「社内の全員が1つの開発者アカウントにアクセスできるようにする」といった次善策もある。だがこれでは、管理者は個々のユーザーやロールの権利と特権を管理できない。
セキュリティ上の問題は他にもある。現在のAlexaデバイスは、消費者向けの基本的なWi-Fiネットワークにしか対応していないことだ。これらのデバイスはWPA2セキュリティや、多くの企業で一般的なブラウザベースのログイン画面をサポートしていない。
Appleの「iPhone」は、消費者にターゲットを絞ってリリースされたが、間もなく企業はスマートフォンアプリケーションのインフラやユースケースを作るようになった。音声インタフェース業界はまだ草創期にあるが、同様のパターンによる企業での導入が、モバイルデバイスの場合よりも急ピッチで進みそうだ。
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