ビジネスの現場で導入が進む
「Google Glass」は失敗したのではない、軌道修正をしたのだ(1/2 ページ)
発表と同時に話題となったGoogle Glassだが、セキュリティや利用者のマナーといった点で問題が起きた。しかし現在Google Glassプロジェクトは新たな段階へと移行しているという。その内容を追った。
2017年5月、産業用ウェアラブル技術の使用に焦点を当てた米イベントEnterprise Wearable Technology Summitが開催された。そのイベントの講演者は口をそろえ、「企業がまず初めにビジネス上の問題を解決しようとしない場合、技術は無駄になる」と強調した。
「問題の本質が何であるかを最初に理解した上で、その問題に対処できる最適な実践ビジネス手法を考え出すべきだ。そのようにしてこそ初めて適切な技術を適用できる」とブライアン・ラフリン氏は語った。ラフリン氏は航空機開発企業Boeingの民間航空部門モバイル機器ITアーキテクトである。
GoogleのエンジニアリングチームはGoogle Glassデバイスに関する講演のために同イベントに参加していたが、ラフリン氏の助言はGoogleに当てはまるだろうか?
解決すべき問題を見つけるためにGoogle Glassを開発
メガネ型の光学ヘッドマウントディスプレイであるGoogle Glassの開発に際し、同社はラフリン氏の指摘とは逆の手順を踏んだようだ。つまり、解決すべき問題が見つかってからデバイスを発明したのではなく、解決すべき問題を見つける必要のあるデバイスを最初に発明したのだ。
「Googleの拡張現実機能を持つメガネへの取り組みは、確かに解決すべき問題は何かというアイデアから始まった」とGoogle Glass開発企業X(旧Google X Lab)のプロジェクトリーダーであるジェイ・コタリ氏は語った。Google Glass開発の一番の目標は情報の過負荷問題を解決することだった。Googleのエンジニアが、世界中の情報をユーザーの視界内に全て表示することを可能にすれば、世界中の誰もがそれを手に入れようとして我先に殺到すると期待した。
でも実際はそうではなかった、とコタリ氏は述べた。実は、Googleは本当にGoogle Glassでどのような問題を解決すればよいか分からなかった。Googleはデバイスの存在理由を明らかにするために、アーリーアダプター(早期導入者)がどのようにGoogle Glassを使っているのかを調査した。この動きを総称して「エクスプローラープログラム」と呼んだ。
「エクスプローラープログラムは、技術の一例としてGoogle Glassを市場に投入し、『この技術を使ってあなたなら何をしますか?』『これは最終的に何の役に立ちますか?』と問いかけるものだ」とコタリ氏は言った。しかし、この調査は散々たるものだったと同氏は言う。「私たちはかなりの広範囲にわたって調査結果を集めた。だが、その利用方法についての回答の中で、どれ1つとして消費者市場でのデバイスの存在を正当化する利用方法に言及したものはなかったのだ」
Google Glassプロジェクトの新たな章の始まり
市場展開の調査について求める結果は得られなかった。だがGoogleにおいては、それは失敗ではなく、ただ単なる軌道修正にすぎない。
消費者市場への投入で失敗に終わったのであれば、Googleのエンジニア以外は誰も解決できなかった問題を解決する、すばらしい提案を直接企業に伝え、適用してみようと考えた。
「私たちは、Google Glassが消費者向けのファッションデバイスであると考えていたところから始めました。後に、機能性に優れ、非常に明確な利用方法を提供するデバイスである、というように捉え方を変えた」とコタリ氏は語った。そこで再び、チームは企業内におけるデバイスの「明確な活用方法」がどのようなものか、をまずは特定しなければならなかった。
さまざまな業界の協力者と調整しながら、最終的にGoogleチームは、Google Glassが産業界で何をなし得るのかを学んだ。「私たちは業界の内部を知らなかったので、まず学ぶ必要があった。そのためにGoogle Glassを幅広い分野で利用できるようにし、ユーザーにさまざまな状況で試してもらった。その結果、Google Glassでユーザーは何ができるようになるのかを見つけることができた」とコタリ氏は語った。
最も効果が表れたのは、ユーザーが両手を使えなくてはならない職場での利用だった、とコタリ氏は語った。例えば、作業者は動画や画像などの指示を自身の視界内に表示して確認することができ、途中で手を止めて作業を中断し、次に何をすべきかを調べようとして資料やPCを見る必要がなくなる。製造、物流、保守点検、ヘルスケアの4分野で現在Google Glassが注目を浴びている、と同氏は述べた。
Google Glass開発チームは販売時には調査とは別のアプローチを取った。販売先に向けて、技術については触れずGoogle Glassが企業や業務の中でどのようなことを実現できるのか、ということを念入りに話した、とコタリ氏は言う。その結果Googleは多様な分野の企業と取引し、GE、ロジスティクス業界の大手企業DHL、病院やその他医療施設を運営する非営利団体Dignity Health、Boeing、自動車製造のVolkswagenなど約50社の企業と提携している。
改良したGoogle Glassデバイス(バッテリーの大容量化と寿命の向上)の導入により、GEの整備士たちの作業効率は8~12%向上した。DHLのパッケージ仕分け作業者たちは、Google Glassを介して情報を視界内に表示することで両手が自由になり、仕分け作業の効率が15%向上した。Dignity Healthの医師たちは、Google Glassを使用することで、患者のカルテへの入力やその他の管理作業を33%削減した。コタリ氏は、現在もGoogle Glassを生かせる場所を探し、全速力で前進していると強調した。
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