不審な取引の分析を「点」だけでなく「面」でも
セブン銀行が不正口座対策で“脱Excel”を実現、その具体策とは?(2/2 ページ)
Excelでの手作業を大幅に効率化
作業をもっと合理化したいという考えから、セブン銀行が目を付けたのが、エルテスの可視化ツール「VizKey」(開発:エストニアのReal Systems)だった(画面)。VizKeyは、いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれるような膨大なデータについて、データ同士のつながりをグラフ(チャート)として可視化する分析ツールだ。例えば名義人や口座番号といった口座の属性情報に関するデータと、送金の金額や日時といった口座間の取引に関するデータを登録すると、VizKeyが取引の流れをチャートとして表示。特定の口座に送金が集中しているといった事実を含め、口座間の関連性が一目で分かる。
こうしたVizKeyの特徴が「取引を点だけでなく面でも見たい」というセブン銀行のニーズにぴったりはまったという。「たまたま、何かのセミナーで資料をもらったことをきっかけにVizKeyを知り、うまく使えるのではないかと考えた」と、安田氏は選定のいきさつを話す。約1カ月の間、エルテスのサポートを得ながら検証し、2016年9月には運用を開始するというスピード感で導入した。
決め手は使い勝手だ。「VizKeyの機能はシンプルなので、半日もあれば担当者が使いこなせるようになった」(安田氏)という。ルールの作り方など細かなところはエルテス側にサポートしてもらったが「皆、すぐに使いこなせるようになったのが印象的だ」(同氏)。
導入の結果、これまで“Excelの達人”による手作業で、1週間から10日に及ぶこともあった分析作業を大きく効率化できた。分析に時間をかけたにもかかわらず、不正の疑いのある口座や取引が見つからないときもある。「被害がないのはいいことだが、担当者のショックは大きい」(同氏)。VizKey導入により「1日に3つも4つも仮説を作成し、追うことができるようになった」と同氏は説明する。気軽に分析できる環境が整ったことで、「念のため確認しておこう」といった使い方もできるようになったという。
安田氏は「VizKeyはモノとモノ、情報と情報の関係性を可視化する機能に優れていると感じている」と述べる。今は犯罪や不審な取引を見つけるために活用しているが「例えばネットワーク構成図の管理などにも使えるのではないか」と同氏は活用拡大の可能性を示す。
VizKeyの使い勝手には大きな不満はないものの「パフォーマンスがより高まれば、使い道が広がる」と安田氏は語る。登録するデータ量が多い場合、チャートの表示に時間がかかることがあるという。多くの仮説を検証する担当者にとっては、チャート表示のたびに待ち時間が発生すれば、分析作業の遅れにつながりかねない。現在は不正口座の可能性がある程度見込める取引に絞って分析をしており、パフォーマンスが問題になることはほとんどないという。ただしパフォーマンスが向上すれば「例えば該当期間の全ての取引を分析対象にすることも現実的になるのではないか」と期待を込める。
安心・安全の分野では協力を、金融業界全体に知見を還元
セブン銀行はこのように、既に導入済みだったBankSaviorやCAFIS BrainにVizKeyを加えて多面的に取引を監視し、不正口座や不正取引の発見に務めている。担当者はBankSaviorやCAFIS Brainのアラートを基に、気になることや特徴的なことがあれば、VizKeyを使って広い視点で確認。その上で再度、取引明細などミクロな部分を詰めていく、といった具合だ。
安田氏はさらに、VizKeyの初期導入ユーザーとして公開できる情報やノウハウを積極的に公開し、提携各行と協力していく考えだ。「セブン銀行だけで不正を防止できてもあまり意味はない。日本の金融機関全体で不正防止を実現していかなくては、お客さまの不安を払拭(ふっしょく)できない」。サービスや新規商品ではどんどん競争すべきだが、セキュリティや不正防止は競うところではなく、業界全体で協力していくべき――。同行はこうした考えを基に、今後も各行と協力しながら、不正の「事後対策」から「未然防止」に取り組んでいく。
執筆者紹介
高橋睦美(たかはし・むつみ)
一橋大学社会学部卒。1995年、ソフトバンクの出版事業部(現: SBクリエイティブ)に入社。以来「Internet User」誌をはじめ、インターネット/ネットワーク関連誌にて、ファイアウォールやVPN、PKI関連解説記事の編集を担当。2001年にソフトバンク・ジーディーネット(現:アイティメディア)に転籍し、「ITmedia エンタープライズ」「@IT」といったオンライン媒体で10年以上に渡りセキュリティ関連記事の取材、執筆ならびに編集に従事。2014年8月に退職しフリーランスに。
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