不審な取引の分析を「点」だけでなく「面」でも
セブン銀行が不正口座対策で“脱Excel”を実現、その具体策とは?(1/2 ページ)
振り込め詐欺や還付金詐欺に利用される「不正口座」を早期に見つけ出すため、さまざまな対策を実施してきたセブン銀行。被害の未然防止に向け、より広い視点で口座の動きを解析するために着手したこととは。
古今東西、犯罪者の多くは「カネ」を狙ってきた。そのカネが行き来し、資産として保管される「銀行」も、しばしば犯罪者のターゲットとなっている。新たな手口が生まれるたびに銀行側はさまざまな対策を講じてきたが、犯罪者とのいたちごっこは続いてきた。それは、インターネットを用いた取引が当たり前の時代になっても変わらない。
コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の店舗を中心に、2万3000台以上のATM(現金自動預け払い機)を設置し、提携金融機関と共にATM・金融サービスを展開するセブン銀行も、顧客向けサービスの改善、拡大と同時に、金融犯罪の防止に取り組んできた。ATM操作時の安全性を高めるため、監視カメラをはじめとする物理的な対策を取ると同時に、インターネットバンキングのセキュリティを確保するため、専用アプリケーションやワンタイムパスワードを用いて認証を強化。不正送金マルウェアによる被害を防止している。
もう1つ、セブン銀行が力を入れているのが、振り込め詐欺や還付金詐欺をはじめとする犯罪に利用される「不正口座」のチェックだ。こうした詐欺では、犯人が被害者から現金を手渡しで受け取るケースの他に、犯人側が不正に用意した口座に振り込みをするよう、被害者に指示するケースがある。不正口座は、架空名義や第三者からの譲渡といった不正な手段で開設された口座のことだ。
不正口座は不正取引の温床になるため、早期の発見が重要になる。不正口座を洗い出し、実被害が発生する前に食い止めたい――セブン銀行はそんな狙いで、さまざまなシステムを導入して口座監視システムを構築してきた。「『未然防止』に力を入れている。不正が起きてから見つけても、事後処理にしかならない。不正が起きる前に、どれだけ見つけられるかがポイントになる」。セブン銀行の金融犯罪対策部7BK-CSIRT次長、安田貴紀氏はこう述べる。
事業拡大に伴って、セブン銀行の取引件数は増加の一途(いっと)をたどっている。日々大量に生じる取引情報の中から、疑わしい口座をどのように効率的に見つけ出すかが、同行にとって大きな課題となっていた。
3段構えのチェックで不正口座の発見に取り組む
セブン銀行の業務は、ATMを中心とした非対面取引が主だ。こうした特徴もあって、経営層から現場に至るまで、不正取引・不正口座対策の重要性が徹底している。「安全性あっての利便性であり、サービスを提供する以上は、しっかりそこを担保していく」(安田氏)という姿勢で、長年にわたって対策を積み重ねてきた。
同行の金融犯罪対策部は不正口座を早期に見つけ出すため、「口座申し込み時の内容の検証」に加え、「PCからのアクセス情報の監視」「取引内容の監視」という3段構えでチェック。不審な口座や不審な取引を検知すると、いったん処理を停止し、振込元の金融機関に確認した上で入金を実施する、といったプロセスを取っている。
例えば犯罪者が、架空名義でセブン銀行に口座を作ろうとした場合には、申し込みフォームに記した氏名、住所、生年月日といった情報を確認し、疑わしいものは受け付けない仕組みだ。「対面ならば、本人と面と向かうため不自然さを感じることができる。非対面ではそこが分かりにくいため、申し込み内容をしっかり検証している」(安田氏)
口座開設後も、取引の動向を監視している。2008年にSCSKの「BankSavior」を導入し、取引データの情報を解析。犯罪に利用されている可能性の高い口座を抽出する仕組みを整えてきた。2015年にはNTTデータの「CAFIS Brain」を導入し、振り込みといった処理をするデバイスについて、IPアドレスやWebブラウザの設定情報などを基に識別。本人による操作か、それともなりすましによる不正な動きかを区別して即座にアラートを上げることで、実際に取引が成立して被害が生じる前に食い止める仕組みを整えた。
“点”の確認から“面”での分析へ
こうして各口座、各取引が正当なものなのか、それとも犯罪につながる不正なものなのかを迅速に把握できるようになってきたが、まだ課題はあった。確かに“点”の取引、つまり限られた時間軸での取引を見て、怪しいものがあればアラートを上げることはできるようになった。ただし犯罪組織による資金の流れを見ようとすると、全体を俯瞰して“面”、つまり長い時間軸で見る必要がある。残念ながらそれまでの仕組みは「面での分析での解析に十分に強いとは言い切れなかった」と安田氏は明かす。
犯罪の手口は年々巧妙化しており、銀行側が対策を打つと、それを研究してまた別の手口を試みてくる。怪しまれないよう、時間をかけて不自然に見えないような取引を重ねて監視をかいくぐろうとすることもあるという。それを見分けるには、取引を点ではなく、面で見ていく必要がある。
例えば、突然ある1つの口座にお金が集まってくることがある。詐欺で不正に詐取した金銭を集めている恐れがあるが、もしかすると単なる飲み会の精算やオークションの入金である可能性は否定できない。正しい取引なのか、それとも不正取引なのかを判別するには「取引発生時のチェックだけではなく、ある程度の期間にまたがって監視する必要がある」と安田氏は指摘する。しかも「口座開設者の属性なども加味して、口座間にどんな関係があるのかを可視化しないと分かりにくい」(同氏)。
担当者がこれまでの経験と勘に照らして引っ掛かる動きがあった際は、そこに関わった口座間に関連性があるのではないかという「仮説」を立て、検証することになる。これまでセブン銀行は、表計算ソフトウェアの「Microsoft Excel」(以下、Excel)を使って、こうした確認作業を手作業で進めていた。確認や分析自体はできるが、このような手作業では「1件の仮説を検証するのに1週間や10日といった時間がかかってしまっていた」(安田氏)。
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