基本構造と価格、安定性、利用シーンを紹介
NANDフラッシュメモリ基礎編:SLC、MLC、TLC NANDは何が違うのか(2/2 ページ)
Multi Level Cell NANDフラッシュメモリの基礎
コストを引き下げるためにベンダーが作成したのがMulti Level Cell(MLC)フラッシュだ。このフラッシュでは各セルに2ビットのデータが格納される。それにより、低いビット単価で大きな容量を実現している。名前に「マルチ」という言葉が入っているにもかかわらず、MLCは2ビット構造を指すのが一般的だ。
残念ながら、MLCフラッシュにはSLCフラッシュほどのパフォーマンスはない。また、データの破損の確率が高くなり、耐久性のレベルが大幅に低くなる。例えば、セル当たりのビット率が高いので電圧をはるかに正確に読み取る必要がある。それにより、MLCチップは高温の影響を受けやすくなる。また、各セルで処理する必要があるビット数が多いためセルレベルの操作が複雑化する。
データの破損率が高いことでより強固なECCプロセッサも必要になる。これがさらにパフォーマンスに影響する可能性がある。その上、電圧状態を制御する物理メカニズムが早く摩耗する。その結果、障害が発生しない書き換えのしきい値は3000回から1万回となり、SLCフラッシュよりも大幅に少なくなっている。
ただし、SLCフラッシュと同様、MLCフラッシュはウェアレベリング、ガベージコレクション、キャッシュ、オーバープロビジョニングなどの高度な手法を使用している。これにより、信頼性と耐久性を最大限に高めたSSDを実現しているのである。
また、一部のベンダーはeMLC(エンタープライズMLC)フラッシュも提供する。これはセルに書き込むデータの速度と密度が下がっているものの、MLCアーキテクチャを使用している。このアプローチでは耐久性が従来のMLCの3倍に延び、最大3万回の書き込み消去サイクルが実現できる。さらに、SLCフラッシュの安価な代替品にもなる。とはいえ、eMLCフラッシュにMLCフラッシュ並のパフォーマンスはない。
Triple Level Cell NANDフラッシュメモリの基礎
企業データの需要は増え続けている。そのため、ベンダーはTriple Level Cell(TLC)フラッシュを完全なものにするため継続的に取り組んでいる。TLCフラッシュは、セル当たり3ビットのデータを格納する。これらの取り組みの一環として、ベンダーはチップにより多くのセルを配置できるように、追加のビットをもっと小さなセルに詰め込もうとしている。その結果、SLCフラッシュとMLCフラッシュよりも大幅に密度が向上した。これにより、SSD価格の低下がさらに後押しされている。
だがフラッシュには、密度が高まるにつれ、電圧操作がより繊細になりデータ管理がもっと複雑になる問題がある。これにより、パフォーマンスがより一層低くなり、エラー率が高くなる。書き込み消去サイクルもMLCフラッシュよりも少なくなる。また、セル同士が接近するため、コントローラーではさらに正確に該当セルの電圧の状態を判断し、設定する必要がある。ビット率が上がればセル層の摩耗もなおさら速くなる。
こうした制約があるため、TLCフラッシュの予測寿命は、わずか500回から1000回の書き込み消去サイクルにとどまっている。これを超えるとチップに障害が発生する。多くの企業は読み取り負荷の高いワークロードにのみTLCフラッシュを使用し、書き込み負荷の高いものには使用していない。
MLCフラッシュと同様、補助機能は短期間で進歩する。遠からずTLCフラッシュは他の種類のワークロードをずっと適切に運営できるようになるだろう。当分、組織では書き込み負荷の高い重要なアプリケーションにSLCフラッシュかMLCフラッシュを使い続けたくなる可能性がある。だが、TLCフラッシュをより実用的な代替手段へと変えられる新しいテクノロジーがあるなら話は別だ。その筆頭が3D NANDである。
3D NANDフラッシュメモリの基礎
代表的なNANDフラッシュチップには単一層のメモリセルが組み込まれる。これはプレーナー型と呼ばれる。ベンダーはビット率を上げ、セルサイズを縮小することで、密度が高くGB単価の低いSSDを製造できるようになっている。だが、このように密度が上がると電気的干渉が増え、耐久性も低くなる。そのため、現状のプレーナー型のしきい値を超えることは難しくなる。
NANDの物理制約に対処するためにベンダーが取り組んでいるのが3D NANDだ。これはチップ内でメモリセルを積み重ねて複数の層にすることで、垂直的なレイアウトを作る。各層はMLCまたはTLCのアーキテクチャに基づく。ただし、プレーン型よりも間隔を空けてセルが配置される。その結果、電気消費率と電気的干渉を減らしつつ、高い密度を実現している。
3D NANDの階層型アーキテクチャによって、信頼性が大幅に向上し、耐久性が最大限に引き上げられている。また、プレーナー型のMLCやTLCフラッシュよりも高い書き込みパフォーマンスが実現され、ビット当たりのコストをさらに引き下げられる。3D NANDのおかげでTLCフラッシュも、書き込み負荷の高い企業アプリケーション用の代替手段としてより実用的になっている。3D NANDがあればQuad Level Cell(QLC)フラッシュさえ、遠くない将来に実現可能になる見込みがあるかもしれない。
3D NANDの最大の問題はチップの製造だ。層とブロックを完璧に整列させるために高い精度が要求される。また、ベンダーはチップを製造できるようになるまでに、必要なテクノロジーに多額の投資を行わなければならない。Samsung、Intel、米半導体企業のMicron Technologyなどの企業がけん引役となり、3D NANDは企業向けSSDの最も信頼のおける標準になろうとしている。
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