ハードルは高いが……
HCIアプライアンスではなく、あえて“自作”の意義とは? そのメリットとデメリット
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)ベンダーはHCI構築ソフトウェアだけを提供するオプションも用意している。これを利用すれば、IT部門はベンダーロックインとスケーラビリティの問題を回避できるが、別の問題もある。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)にはある程度のベンダーロックインは付きものだ。そのため、各リソースを個別に拡張するという基本的な自由度が不足している。だが、ソフトウェアのみのHCIオプションが登場したことにより、ユーザーが独自のハードウェアやシステムを用意し、そこにHCI構築ソフトウェアを適用できるようになった。これは実質的にHCIアプライアンスの機能を模倣するものだが、柔軟性は向上する。
HCIは、基盤となる同一のハードウェアで複数のワークロードを実行するのに優れている。「Cloud in a Box」(筐体の中のクラウド)システムとして販売されることが多いHCIは、リソースを柔軟に割り当てられる。また、リソース利用効率が高く、手動によるシステム管理をそれほど必要としない。
HCIの初期事例は、仮想デスクトップインフラの導入をターゲットにしていた。だが、本稿執筆時点では、HCIの利点を生かせるワークロードの種類が大幅に増えている。
2017年10月時点でのHCIソフトウェアの展望
HCIのソフトウェアベースのシステムが利用できるようになったのは今に始まったことではない。だが、その文脈では「ハイパーコンバージド」という言葉が誤用されていることが少なくない。DataCore SoftwareやVMwareなどのベンダーがソフトウェアのみのHCI製品を提供している。だが、これらのシステムが重点を置いているのはストレージプラットフォームの最適化だ。こうしたプラットフォームでは、IT部門によるストレージの利用方法を強化するためにコンピューティング能力が利用されても、運用環境のコンピューティングワークロードは実行されないことがある。これに対しハイパーコンバージドとは、ワークロード用のコンピューティング、ストレージ、ネットワークを単一のシステムに内蔵した完全なプラットフォームを指す。つまり、前述のシステムは、実際のところコモディティハードウェアに搭載されるソフトウェア定義のストレージシステムにすぎない。
独自のHCIを構築できる機能を備えたソフトウェアシステムがある。例えば、Pivot3は完全に構成済みのHCIアプライアンスだけでなく、顧客独自のハードウェアで実行できるソフトウェアのみのシステムを提供している。また、Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE SimpliVity」では、HPEのハードウェアに適用できるソフトウェアのみのシステムを用意している。
Red Hatは「Red Hat Hyperconverged Infrastructure」をリリースした。これは、同社の「Red Hat Enterprise Linux」と、「Red Hat Gluster Storage」「Ansible」自動プロビジョニング、「Red Hat Virtualization」を組み合わせた単一のソフトウェアシステムだ。Cisco Systemsは、Springpathベースの「Cisco Unified Computing System」ハイパーコンバージドプラットフォームを「HyperFlex」ブランドで提供している。だがCisco Systemsは、長年のパートナーだったSpringpathを買収したことで、SpringpathのHCIソフトウェアスタックを全面的に利用可能になった。それにより、任意の組み合わせのx86サーバ、ストレージ、ネットワークで実行できる、ソフトウェアのみのシステムを提供できるようになった。
ソフトウェアのみのHCIプラットフォームの課題
一般的なHCI製品の多くは、汎用(はんよう)的なハードウェア設計になっていない。Intel製CPU、標準ネットワークカード、ストレージディスクを採用しても、独自の要素が含まれている場合がある。例えば、システム同士は特殊な形で相互接続されている。そうすることで、システムでできる限り高速にデータを移動できるようにしているのだ。
コモディティハードウェアを使用できるといっても、ベンダーは特定のハードウェアで動作するようにソフトウェアを最適化している可能性が高い。ベンダーは一般に、ソフトウェアベースのHCIシステムに対して、既知のハードウェアスタックとアーキテクチャを組み合わせることを推奨する。そうすれば、ベンダーは既知のパラメーターに基づいてサポートを提供できる。ユーザーが好き勝手にハードウェアを選んだらどうなるだろう。例えば、ベンダーAのサーバセット、ベンダーBのストレージアレイセット、ベンダーCのネットワークシステムを利用するとしよう。その場合、考えられる全ての組み合わせをソフトウェアベンダーがサポートすることはまず不可能だ。
HCI構築ソフトウェアの利点
ソフトウェアを適用するハードウェアを、適切な組み合わせで選べるのなら、HCI構築ソフトウェアが組織にとって最適なものになる可能性がある。ハードウェア自体に標準のハイパーバイザーとクラウドレイヤーを導入する場合に比べ、HCI構築ソフトウェアによって全体的に優れたプラットフォームが実現できるはずだ。その最終的なHCIプラットフォームでは、HCI構築ソフトウェアによる優秀なプロビジョニング機能、監視機能、管理機能を利用できるようになる。全体的なリソース使用率に関する柔軟性がさらに向上し、必要に応じてワークロードを動的に出し入れすることが可能になる。また、プライベートクラウドとパブリッククラウドを併用するハイブリッド構成でHCIプラットフォームを利用することを考えている場合も、より優れた機能を利用できるようになるだろう。
ソフトウェアのみのHCIオプションでは、専用HCIアプライアンス並みの完全なパフォーマンスとサポートは提供されない可能性が高い。だが、導入コストは安上がりになるだろう。耐用年数まで使用したときのコストが専用HCIシステムよりも安価になるかどうか、試してみてはどうだろうか。
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