「Snap」により10万台規模のIoTデバイス更新も可能
オープンソースOS「Ubuntu Core」でさらに進むIoTデバイスの活用(2/2 ページ)
IoT向けOSにはオープンソースが理想的か
Canonicalによれば、Ubuntu CoreはIoT向けのオープンソースソフトウェアに対するニーズを満たすことができるOSだ。
「人々はベンダーロックインを望んでいない。必要に応じて自由に運用を拡大できるようにしたいとはずだ」とベル氏は語る。さらに同氏はUbuntu Coreのもう1つの強みとして、非常に多くの開発者がUbuntuを使用しているので、競合となるクローズドなOSと比べてセキュリティの問題が迅速に解消される点を挙げる。
IoTのフォームファクタ(ハードウェアの大きさ、形状)やアプリケーション、利用場面は実に多様であり、導入する業種も農業から企業IT、政府、ヘルスケア、産業まで多岐にわたる。「IoT向けOSは1つに絞られるというよりも、複数のOSが共存することになるだろう」と調査会社451 ResearchのIoT担当調査ディレクター、クリスチャン・ルノー氏は語る。
調査会社GartnerでIoTを担当する主任調査アナリストのアーポ・マーカネン氏も同じ意見だ。「IoTでは実にさまざまなものをインターネットに接続しなければならず、IoT向けOSに対するニーズと需要は実に多様だ」と同氏は語る。
IoTデバイスには、常に電源に接続するためリソースに制限を受けないという大きなものもあれば、制約のある環境に合わせて緻密に最適化されたセンサーのように小さなものもある。「多種多様なデバイスに対応するため、市場には各種OSが参入する余地がある」とマーカネン氏は語る。
さらにマーカネン氏によれば、Ubuntu Coreの真価は開発者にとって非常に使いやすいことにある。開発者は、これまでIoT以外の分野で習得してきたLinuxやUbuntuのスキルセットをそのまま活用することが可能だ。
451 Researchのルノー氏は、Ubuntu Coreが処理能力の低いデバイスでも広く実行可能な点を高く評価する。「現状では、IoTデバイスの大半は処理能力が限られている」とルノー氏は語る。現行のIoTデバイスは、オイルポンプセンサーやポータブル内視鏡、農作物の水分測定器など、いずれ計算処理を実行するようになるとは想定されていなかったものが大半だ。
今後はUbuntu Coreが備えるこうした柔軟性のおかげで、さまざまなIoTシステムのセキュリティとオーケストレーション(システムの構築、運用管理を自動化すること)が実現可能となりそうだ。「Ubuntu Coreはセキュリティやデバイス管理、アプリケーション開発の一般的なアプローチに一貫性を持たせることができる」とルノー氏は語る。Intelは子会社Wind Riverの組み込みOSで同様のゴールを目指しており、他にも多くの企業がこの分野への参入を図っている。
ただしルノー氏によれば、従来型のITベンダーはIoTデバイス向けのOSよりも、メモリ容量やCPU性能、アプリケーションなどの分野に力を注いでいるという。
あらゆるものがインターネットに接続された環境を実現するためには、業界はIoT向けにオープンソースの汎用的なOSを開発するという大きな課題を克服する必要がある。「5000種類以上のIoTデバイスが5000種類もの異なるOSを搭載するようなことになれば、接続どころではない。そのようなデバイスを管理し、セキュリティを確保する方法などないからだ」とルノー氏は語る。
DellがIoTゲートウェイにUbuntu Coreを採用
ITインフラベンダーのDell Technologies(以下、Dell)は既にUbuntu Coreを採用している。同社は2017年2月、Ubuntu Coreを搭載するIoTゲートウェイシリーズ「Dell Edge Gateway 3000」を発表した。
「その価値があると思ったからこそ、このシリーズのOSとしてUbuntu Coreを選べるようにした」とDellのIoT戦略およびパートナーシップ担当責任者のジェイソン・シェパード氏は語る。PCではWindowsが主流だが、IoTに関しては非常に多くのデバイスがLinuxで動作しているので、Linux OSを選ぶべきであるのは自明だったという。
DellはISV(独立系ソフトウェアベンダー)の視点から、どのOSが広く使われているかを調べ、Canonicalを戦略的Linuxパートナーに選んだ。必ずしもUbuntu Coreではないが、大半の人たちがUbuntuを使用していることが分かったという。Dellはその後、サーバ用Ubuntuとデスクトップ用UbuntuとUbuntu Coreの中から、Ubuntu Coreを選択した。Ubuntu Coreは新しいOSであり、一部のLinux OSとは異なり、市場での評価に関する長期的な情報はない。だがDellの意思決定者は、IoTシステムにとってはUbuntu Coreが最適な選択肢になると判断したという。
「IoTデバイスでは、まず必要最小限のOSを実行し、そこにソリューションの実行に必要となる要素だけを追加するというのが、正しいアプローチだ。そうすれば、攻撃対象領域を最小限に抑えられる」とシェパード氏は語る。
Ubuntu Coreはまさに必要最小限のカーネルでSnapパッケージを動作させるOSであり、この仕組みのおかげで、セキュリティ要素を追加したり、各アプリケーションの動作やアクセス可能なシステム領域をパッケージ単位で隔離したりといったことが可能だ。
さらにUbuntu Coreはトランザクション型のアップデートによって、アップデート時のエラーを確実に回避できる。「何か処理を実行中に任意のSnapアプリケーションをアップデートしたい場合、わざわざシステム全体を止める必要がない」とシェパード氏は語る。アップデート中にエラーが発生したとしても元の状態までロールバックできるので、システム全体を止める必要がなく、エラーを全て解決できるまで待つ必要もない。
Dellにとっては、Canonicalのバックエンドソフトウェアリポジトリも魅力の1つだ。DellはこのリポジトリにSnapパッケージをロードするだけで、リポジトリに接続されている全てのシステムにアップデートを配布できる。シェパード氏はこの仕組みを気に入り、特に製品やサービスのスケーリング(運用規模の調整)に便利だと考えている。「Linuxのディストリビューションは多数あるが、スケーリングのニーズを想定していないものが多い」とシェパード氏。この問題を解消したのがUbuntu Coreだ。
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