捨てられないコールドデータをどう保存するか
徹底比較:HDD、テープ、SSD、光ディスク コスト効率の高いコールドストレージは?(2/2 ページ)
コールドストレージのコスト効率
コスト効率に優れたコールドストレージシステムには、コスト効率の高いコールドストレージメディアが欠かせない。これは最終的に容量密度、つまりHDD、SSD、テープ、光カートリッジの物理容量の総量と、総所有コスト(TCO)の問題になる。TCOには購入費用に加え、インフラのサポートコストも含まれる。例えば、電力、冷却、保守、運用などである。
テープカートリッジや光カートリッジなどの取り外し可能なメディアは、HDDやSSDに比べて電力と冷却の必要性が低い。しかも、カートリッジを取り外してしまえばこれらは不要になる。HDDは回転速度を下げることで省電力化し、冷却を減らすことができる。一方、高密度な3D QLC SSDは、HDDと比べてそのどちらもわずかにしか必要としない。本稿執筆時点では3.5インチフォームファクターのHDDは主に7200rpmで動作し、その最大物理容量は12TBだ。その容量の範囲は4TBから12TBまで提供されている。
コールドストレージメディアのオプション
HDDはGB単価が比較的安く、検索や分析の効率が非常に高い。また、イレージャーコーディングを併用することでデータ耐久性が高くなる。だが、電気機械式のデバイスのため、多くの電力を消費し大量の熱を発する。冷却もそれだけ多く必要となる。摩耗寿命が比較的短く、給電せずに約4年を超えてデータを維持することはできない。大容量HDDはSeagate、東芝、Western Digitalが提供している。
3D QLC SSDは物理容量の密度が信じられないほど高い。ドライブ数やラック数が少なくて済み、電力、冷却、人的サポートの必要性も減る。データ重複排除やイレージャーコーディングとの相性が良い。3D SSDは製造工場での生産量が比較的少なく、需要の高さも相まって、価格は予想よりも高止まりして。その結果、3D QLC SSDの価値提案が下がっている。生産量と供給量は2018年まで増加するはずだ。それにより価格が下がり、コールドストレージの要件に合うようになる。3D QLC SSDはSK Hynix、Micron TechnologyとIntel、Samsung、Western Digitalにより提供される予定だ。
LTOテープカートリッジは最も安価なコールドストレージメディアだ。リリースのたびにパフォーマンスが徐々に上がり続けており、そのテープテクノロジーは本稿執筆時点ではLTO-10まで仕様が定まっている。最近、富士フイルムとIBMによってテープ密度の向上が発表された。これにより、LTOでは今後10年以内にカートリッジ当たりの物理容量が330TB、圧縮時には825TBまで増加することになる。その結果、テープのコスト効率はさらに上がる。ただし、テープの場合、検索能力と操作パフォーマンスが限られ、低速だ。また、膨大な量のデータに対してはロボット機構の大型なテープライブラリが必要になる。ライブラリからテープを取り出すと検索や分析はさらに難しくなり、耐え難いほどに遅くなる。LTO-7テープカートリッジが、富士フイルム、IBM、ソニーおよびこれらのベンダーのOEMから提供されている。
光メディアカートリッジは、利用可能なメディアの中でも最も不変だ。有効期間が最も長く、50~1000年にわたってデータの損失が起こらない。スループットパフォーマンスもHDDやLTOテープカートリッジのレベルに追い付いている。デメリットは、サプライヤーがM-DISC、パナソニック、ソニーに限定されることだ。しかも、ソニーは本腰を入れて取り組んではいない。操作パフォーマンスはまだ低いが、全ての光データは事実上永続的になる。
LTOテープは本稿執筆時点ではLTO-7に対応している。物理容量は最大6TBで、圧縮時の容量は15TBになる。3D QLC(1セル当たり4ビット)SSDはまだリリースされていない。だが、2.5インチフォームファクターで物理容量が128TBになる見込みだ。Blu-ray、アーカイバルディスク、M-DISCといった光ディスクは大幅に容量が増えている。
コールドストレージのクラウドサービス
コールドストレージが再び流行しているのはFacebookのおかげとされることが多い。だが、Amazon Web Services(AWS)の方がさらに大きなけん引役になっている可能性がある。AWSは当初、「Amazon Glacier」コールドクラウドストレージを1カ月当たりのGB単価が1セントという低価格でリリースした。このときに、クラウドストレージサービスプロバイダー間の苛烈な競争に火が付いた。なお、本稿執筆時点では「Amazon Glacier」の1カ月当たりのGB単価は0.4セントからとなっている(東京リージョンは0.5セント)。
コールドストレージのパイオニア
大手ハイパースケーラーであるFacebookではコールドデータが急激に増加している。同社は、拡張性の高い光ストレージシステムや、HDDと3D QLC SSDでのスキニーオブジェクトストレージの開発では草分け的存在だ。PBからEBのコールドストレージを透過的に処理して管理する方法を改善しようと継続的に取り組んでおり、開発中の全データをOpenCompute.orgに公開している。
Facebookでは、拡張性の高い光ディスクとHDDでのスキニーオブジェクトストレージを大量に使用している。スキニーオブジェクトストレージでは、ストレージサーバノード数を最少にしながら、ノード当たりのドライブ数を最多にする。それと同時にイレージャーコーディングも活用する。Facebookはさらに、3D QLC SSDでのスキニーオブジェクトストレージも完成させる予定だ。
Facebookのコールドストレージシステム設計は商品化されている。大容量の光ストレージシステムをパートナー企業のパナソニックが「freeze-ray」として提供している。本稿執筆時点では19インチラック当たり1.9PBまで拡張できる。2020年までには6PB以上にまで増加する予定だ。また、パートナー企業のTachyumも、Facebookが開発している3D QLC SSDでのスキニーオブジェクトストレージを商品化する計画を立てている。
本稿執筆時点では、多数の企業がさまざまな種類のコールドストレージサービスを提供している。これにはHDDでの各種スキニーオブジェクトストレージも含まれる。また、LTFSテープシステムを使用しているサービスもある。これらは全て安価であり、1カ月当たりのGB単価が1セントのものから、わずか0.1セントのものまで存在する。だが、システムでのデータの読み取り回数や取得速度に応じてコストが2倍、3倍、さらには4倍に膨れ上がる可能性がある。とはいえ、これはコールドストレージだ。そのため、データの取得はささいなことであり、ほとんど行われないと想定される。コールドクラウドストレージは全ての主要クラウドベンダーが提供している。これには、AWS、Google、IBM、Microsoft、Oracleを筆頭に、他にも多数のベンダーを含む。
非構造化データの管理と移動
非構造化データは、最初に保存されたストレージからコールドストレージへと移動させる必要がある。これにより、従業員が集中的にデータを手動で移動しなければならないというその場限りの問題が起こりがちだ。データ移行のたびに、多くの人員や専門サービスを必要とする大規模プロジェクトが立ち上がることになる。このようなプロジェクトにかかるコストは、コールドストレージへのデータ移行によるコスト削減を上回る可能性がある。そのため、コールドストレージの市場は長い間冷え切っていた。
だが、非構造化データを管理するソフトウェアのおかげでコールドデータの状況が変わってきている。こうしたソフトウェアは、ポリシーに基づいてプライマリーストレージからコールドストレージにデータを透過的に移動する。例えば、アクセスの量や頻度、データの古さ、最終アクセスからの経過期間などだ。元のプライマリーストレージ上にあるファイルやオブジェクトはコピーされ、移動された後に削除される。これにより、使用頻度の高いアクティブデータ用のストレージが解放される。ユーザーとアプリケーションは自動的にそれぞれのデータに再び関連付けられる。
ソフトウェアでは、必要なだけファイルやオブジェクトのコピーを作成できる。そして、それらのデータをクラウドコールドストレージ、LTFSフロントエンドATL、光ストレージシステム、スキニーオブジェクトストレージにメディアを問わず配置できる。このようなソフトウェアを提供するベンダーには、Actifio、Catalogic、ClarityNow、Cohesity、Commvault、Enmotus、Komprise、Moonwalk Universal、NTP Software、Primary Data、Rubrik、Starfish、StrongBox Data Solutions、Veritasなどがある。
非構造化データの管理と移動に対応するソフトウェアによりコールドストレージが実用的なものになっている。特に、コスト効率に優れた新しいコールドストレージシステムやメディアの登場がそれを後押ししている。冷え切っていた市場が熱を帯び始めている。
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