SNIA会長が語るストレージの未来像とは?
SSDの次に来る「コールドストレージ」とは?
ストレージおよびストレージネットワークに関する米国の非営利業界団体であるSNIA。このほど来日したSNIA会長に同団体の活動やストレージ業界の動向などについて話を聞いた。
ストレージおよびストレージネットワークに関する米国の非営利業界団体であるSNIA(Storage Networking Industry Association)。米国の主要ストレージベンダーを中心にさまざまな活動を展開しており、日本支部「SNIA-J」も国内のストレージ関連ベンダーが勢ぞろいして活動している。
このSNIAの会長を務めるのが、米NetAppで業界標準担当ディレクターおよびテクニカルエバンジェリストを務めるデイビッド・デール氏だ。このほど来日した同氏に、SNIAの活動やストレージ業界の動向などについて話を聞く機会を得た。
年々変化のスピードが早くなるストレージ業界
──SNIAの活動内容について簡単に教えてください。
デール氏 世界中の約160社の会員企業と、3500人のボランティアによって成り立っているストレージ業界の非営利団体です。ストレージおよびストレージネットワークに関するさまざまな活動を行っています。
活動内容は大きく4つの領域に分かれています。1つが、業界標準や国際規格の策定です。これまでISO規格を含む多くの標準規格作りに関与してきましたが、現在は特にSMI-S(Storage Management Initiative - Specification)、CDMI(Cloud Data Management Interface)、LTFS(Linear Tape File System)の3つの標準規格の策定に力を入れています。
2つ目の活動領域は、異なるベンダーの製品同士の相互運用性に関する活動です。各ベンダーが自社製品を互いに持ち寄って相互接続性を担保するためのテストなどを実施しています。そして3つ目が、各ベンダーの新たなストレージ技術を広めるための各種の啓蒙活動です。さらに4つ目の活動領域として、特定のベンダーに依存しない中立な立場でのストレージ技術に関する教育活動や技術情報を発信する活動をしています。
──デールさん自身はストレージ業界において長いキャリアをお持ちですが、これまでの業界の変遷を振り返って、現在どのようにお感じですか。
デール氏 ストレージ業界には本当に長くいるのですが、毎年毎年変化のスピードが上がっているように感じます。常に「去年と比べてこんなに変わっている」と実感できるところが、この業界の面白い点だと思います。特に近年は「仮想化」「SSD」「クラウド」「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」といった新たな技術トレンドが、ストレージ業界に極めて大きなインパクトを与えています。今日のストレージには、こうしたさまざまな変化に迅速に対応することが求められています。
──こうした変化に、ストレージベンダーはどうしていくべきでしょうか。
デール氏 さまざまな技術やサービスが台頭してきたということは、すなわち顧客が従来よりも多様なワークロードに適応する必要が出てきたことを意味します。つまりベンダーは、多種多様なワークロードにそれぞれ適したストレージを提供することが求められています。これによって、顧客のIT投資の効率をさらに向上させることが可能になるでしょう。一方、システムの管理性もシンプルかつ容易であるべきです。つまり、「多様なワークロードに個別に対応しつつ、システム全体ではシンプルな管理性を実現する」。この2つの要素をいかに両立させるかが、今後ストレージのエンジニアリングにおける大きな課題になってくるでしょう。
アクセス頻度の低いオンラインデータを「コールドストレージ」で管理
──現在、ストレージに関する技術が急速に進歩する中で、デールさんが特に注目されている技術やトレンドがあれば教えてください。
デール氏 ストレージにおけるNANDフラッシュ活用のトレンドは、今後も継続していくでしょう。既に次世代SSD(ソリッドステートドライブ)の開発がかなり進んでいますし、その実用化の道筋も見えています 。また、さまざまなクラウドインフラの利用が広がっていることも、ストレージ業界に極めて大きなインパクトをもたらしており、この傾向も今後続いていくと思います。さらには、「コールドストレージ」の活用が今後急速に進んでいくと予想しています。
──コールドストレージとは、一体どのようなものなのでしょうか。
デール氏 企業システムにおいて、常時オンライン参照できる状態にしておく必要があるデータの量は、年々増え続けています。しかしそれらの中には、オンラインにする必要があるものの、めったに参照されないデータも多く含まれます。そうしたデータを格納しておくストレージには「低コスト」「長寿命」「大容量」など、頻繁に参照されるホットデータを格納しておくストレージとは異なる要件が求められます。こうしたストレージのことをコールドストレージと呼びます。現在、このコールドストレージの普及を後押しする技術革新が、ディスクやテープの世界で起きています。SNIA-Jにおいても、このコールドストレージに関する分科会が立ち上がって、多くのベンダーによって研究や啓蒙活動が行われています。
──テープが再び脚光を浴びているというのは興味深いですね。
デール氏 テープは従来、データをオフラインで保管するためのメディアとして使われてきましたが、先ほどのコールドデータの保管メディアという新たな用途のために、再びテープに注目が集まっています。その背景には、先ほど挙げたLTFSのような、テープをオンラインメディアとして扱うためのテープファイルシステムの技術が成熟してきたことがあります。
──一方で、テープとは対極の性質を持った高速フラッシュディスクの存在感は、日に日に増しています。
デール氏 確かに高速フラッシュディスク、中でもSSDの技術発展には目覚しいものがありますが、かといって今後SSDが全てのメディアに取って替わるというわけではありません。先ほど申し上げたように、今後のストレージはさまざまなワークロードに対応していくことが求められてきます。そのためには「この用途にはSSD」「このタイプのワークロードには高速HDD」「この目的にはテープ」といった具合に、ワークロードのタイプごとにそれぞれ適したメディアを選んで使い分けていくようになるでしょう。
──現在、エンタープライズ向けストレージ製品の多くが、異なるメディアを階層化して管理する技術を採用しています。今後メディアの種類や使い分けが多様化することで、ストレージ管理も複雑化してしまうリスクはないのでしょうか。
デール氏 個人的には、今後のストレージは単一のデバイス内での階層化が進むというよりは、より分散化の方向に進むと予想しています。例えば、業務アプリケーションの主要トランザクションにはSSDとHDDが混在したストレージアレイをスケールアウトさせていくことで対応します。その一方で、めったに使われなくなったデータは別途コールドストレージで管理する。さらには「OpenStack」のようなフレームワークを通じてクラウドストレージのサービスをオブジェクトストレージとして活用する。このように、データやシステムの用途に応じて、それぞれ異なるストレージにデータを分散させていく方向に進むと考えています。
今後はセキュリティや省エネの分野にも積極的にコミット
──SNIAの今後の活動方針や、特に注力していきたいと考えている技術領域などがあれば教えてください。
デール氏 先ほどのコールドストレージの分野に加え、他にも幾つかの分野への取り組みを強化していく予定です。その1つが、セキュリティです。近年、ISOがストレージセキュリティに関する標準規格を公開しました。この規格を策定する過程において、SNIAは非常に重要な役割を演じてきました。2016年以降もストレージの専門家に対してセキュリティに関する教育や啓蒙のサービスを提供するなど、引き続きセキュリティ分野における取り組みに力を入れていく予定です。
また省エネも、現在力を入れている分野の1つです。2013年8月、米国の環境保護庁(EPA)が国際エネルギースタープログラムの一環として、データセンター用ストレージのエネルギー効率に関する指針を出しました。その中では、SNIAが策定したエネルギー効率指標が採用されています。現在はSANデバイスのみが対象ですが、次期バージョンではNASデバイスのエネルギー効率の測定指標も網羅すべく、現在環境保護庁と作業を進めているところです。
──最後に読者に向けて、IT活用のアドバイスなどがあればお聞かせください。一般的には、日本におけるIT活用は米国と比べて遅れていると見なされることが多いようです。
デール氏 私自身、日本の事情にそれほど詳しいわけではありませんので、あまり確かなことはいえませんが、それでも一般には「日本企業は米国企業などと比べ新しい技術の導入に対して保守的で、古い仕組みを長年使い続ける傾向が強い」といわれていますね。ただ個人的には、日本企業がIT活用において必ずしも遅れているとは考えていません。モバイルやソーシャル、ゲームといったコンシューマーテクノロジーの分野では日本は昔から力を発揮してきました。また、そうした技術が徐々にエンタープライズITに取り込まれつつある状況を見ると、日本企業がエンタープライズITの分野で米国にキャッチアップするのもそう遠い未来のことではないのかもしれません。
今あえて読者の方々にアドバイスを贈るとすれば、新しいストレージ技術を否定するのではなく、うまく取り入れることで多様なワークロードを適切に処理できるようになりますから、臆することなくぜひ積極的に新しい技術にチャレンジしてほしいですね。
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