業界団体SNIA-Jの会長が詳細解説
よく分かる「コールドストレージ」入門(1/3 ページ)
アクセス頻度の低い大量のデータを取り扱う「コールドストレージ」の市場が立ち上がり始めた。コールドストレージの種類や市場動向、導入効果などの基本的解説をお届けする。
IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能など、大量のデータを取り扱うことによって新たな価値を生み出すITシステムが注目を浴びている。その動きの中で、低コストで大量のデータを格納する「コールドストレージ」の市場が立ち上がり始めた。
ストレージに関する啓発活動や標準化活動に取り組む業界団体SNIA Japan(Storage Networking Industry Association)は2014年度、「コールドストレージ」「次世代不揮発メモリ」「グリーンストレージ」の3つの技術分科会を新設し、専門家による技術ディスカッションを開始した。本稿では、その中からコールドストレージ分科会(11社、50人)で議論された内容を中心に「コールドストレージ」の定義や概要、製品選定のポイントを紹介する。
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コールドストレージとは
SNIA Japanは、コールドストレージを次のように定義している。
- 「比較的アクセス頻度の低いデータ(いわゆる「コールドデータ」)を低コストで保存するデータストレージ」
現在は米国のSNIA本部でもTaxonomy(分類)およびDefinition(定義)の作業を進めており、SNIA全体での定義が確定する予定である。定義後、一般公開中のストレージ用語集で随時公表していく。だが技術が急速に変化するので、アクセス頻度やコストの絶対値を提示することは困難であると考えている。
コールドストレージの記憶媒体としては、低速大容量なHDDや光ディスク、テープなどがある。また「コールドフラッシュ」と呼ばれる新たなデバイスも登場しつつある。
現時点でのコールドストレージを説明できる例として、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)データの取り扱い方を考える(図1)。図1は縦軸にアクセス頻度とコスト、横軸に経過時間を取っている。ある時点でアップした写真や記事に対して数分から数時間以内に多数のアクセスとコメントが殺到する。この期間、データは高速かつ低遅延のフラッシュメモリに格納される。さらに数日がたつと、SNSとしては古いコンテンツとなりアクセスが急激に減少する。SNS事業者はストレージ階層化技術により、データをフラッシュメモリから通常のHDDに移行する。こうしたストレージの保存コストは、フラッシュメモリの約3分の1と試算できる。
さらに半年から1年と時間が経過するとほとんどアクセスが無くなる。ただしゼロになることはない。この古くアクセス頻度の少ないデータを非常に低コストで保存する用途として、コールドストレージが使われる。想定コストはHDDでまかなう場合の約10分の1程度となる。
コールドストレージの市場動向
コールドストレージを考える前に「バックアップ」と「アーカイブ」を明確に分けることが重要だ。バックアップはデータの保護が目的であり、マスターデータを別媒体または別装置にコピーしておくことである。マスターデータに万一の事があった場合にバックアップからデータを復元することができる。一方、アーカイブはそれ自身がマスターデータであり、データの長期保存を目的とする。コールドストレージは後者となる。
コールドストレージ市場で既に存在するのが「ライブラリ」分野である。ライブラリ分野とは、かつてはフィルムや紙媒体で保存していたデータをデジタルアーカイブする市場である。映像ライブラリや図書ライブラリ、写真ライブラリなどが該当する。かつての媒体も多く残っているが、それらをデジタル化したり、また最近は元データ自身がデジタル化されたりしている。コールドストレージはこれらを長期保存する目的で利用される。
最近特に注目されているコールドストレージ市場はSNS分野である。Twitterのデータをマーケティング用途、社会研究用途に使うのはよく知られているだろう。その他にも、ECサイトの閲覧履歴や口コミ情報、スマートデバイスからの位置情報・写真情報なども重要視されている。これら大量のデータを保存して解析する「ビッグデータ」用途にもコールドストレージが使われ始めている。
学術研究用途の分野も見逃せない。大学や研究所などで採取される貴重な実験データや大規模実験装置から出力されるデータを格納するには、やはりコールドストレージが欠かせない。近年ではゲノムデータの保存などで数十PB級の容量を必要とするユーザーも出てきた。また、コールドストレージは改ざん防止のための装置としても注目されている。
SNIA Japanは2015年3月、コールドストレージに関するユーザー調査を実施した。回答者の82%が「コールドストレージに興味を持っている」と答えた(図2)。コールドストレージに対するニーズが大きいことがうかがえる。
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