業界団体SNIA-Jの会長が詳細解説
よく分かる「コールドストレージ」入門(2/3 ページ)
コールドストレージの特徴
SNIA Japanは先述したコールドストレージの定義に加え、以下の要件をコールドストレージの特徴だと定義している。
- 「性能よりも低コストを重視するために、大容量化、長期保管性、低消費電力といった特徴を持つ」
この特徴は「コールドストレージは、性能をある程度犠牲にしている」と言い換えることもできる。
図3は、クラウドストレージサービスにおける応答時間(レイテンシ)とサービス価格(1月当たりのGB単価:入出力・通信料金を含まない)の関係を示した図である。この図から価格とレイテンシがトレードオフの関係にあることが分かる。
これからコールドストレージ導入を検討する場合、まずこれらのトレードオフの関係の中で、自社が必要としている性能や価格がどの辺りにあるのかを最初に明確にすることをお勧めする。例えば、レイテンシに関するSNIAのユーザー調査では、「3秒以内」を求めるユーザーが全体の16%、「3時間以上でもよい」とするユーザーが7%、「数分以内」というユーザーが30~50%という結果になった。
同調査では、「現在コールドストレージで困っていること・課題」をヒアリングしている(図4)。上位2項目は「データマイグレーションの時間や頻度」に関する内容であり、3位は「データマイグレーションを回避するために圧倒的な大容量が欲しい」という回答になっている。このようにコールドストレージ導入に当たっては、データマイグレーションにかかる時間や頻度に考慮する必要があるだろう。
ここからは、現時点のコールドストレージを記憶媒体(メディア)ごとに整理していく。SNIA Japanでは「低速大容量HDD」「光ディスク」「テープ」「クラウドストレージ」について詳細に分析している。
低速大容量HDD
低速大容量HDDは、SATA接続のHDDや高密度化技術「SMR(Shingled Magnetic Recording)ヘッド」を持つHDDなどが該当する。いずれも3.5インチ型であったり、回転数を遅くしたりするなど大容量化の基本的要件を備えている。また、最近ではSMRヘッドを用いて記録密度を大幅に上げた製品が出てきている。低速大容量HDDは、レイテンシもコールドストレージとしては比較的早く、システムレベルでも3秒以内を維持できる。上記で挙げたユーザー調査において、3秒以内の応答を必須とする「アクティブアーカイブ」のニーズに応えられる唯一の製品だといえる。
アクティブアーカイブとは比較的新しい概念であるが、「人間が普通に我慢できる程度のレイテンシ」といわれており、現在非常に注目されている分野である。クラウドアーカイブサービスとしても「Amazon S3 標準 - 低頻度アクセス(標準 - IA)」や「Google Cloud Storage Nearline」などが2015年から市場が立ち上がり始めている。サービスコストで見ると、従来のHDDベースのGB単価(1月当たりのGB単価:約10円)と比較してGB単価が3円と約3分の1の低コストを実現している。
光ディスク
1982年に販売開始されたCDに始まり、現在のBlu-rayディスクまでに至る光ディスクストレージ。最近では、パナソニックとソニーが開発した「Archival Disc」などアーカイブ専用の光ディスクも出てきている。
ディスク当たりの容量は100GBから300GBと比較的小容量であるが、専用カートリッジ「マガジン」を使うことで、1.2TBから3.6TBまでの高容量化と、指紋などによる汚れを回避する高信頼性を同時に実現している。
光ディスクは後方互換性があることが最大の特徴だといえる。後方互換性とは、より新しい製品が既存の(古い)製品を扱うことができることを指す。例えば、30年以上前のCDを現在のBlu-rayレコーダーで再生できることが挙げられる。そのため、光ディスクでは、データマイグレーションが事実上不要である。
光ディスクを採用したクラウドアーカイブサービスは現時点では出てきていないが、数十年もマイグレーションが不要な点、データセンターの外気導入型空調にも対応可能という点で評価されている。例えば、米Facebookは自社のデータセンターに大量導入している。コストは月間で1GB当たり約1円程度と推定される。
テープ
昔からバックアップ用途の媒体として広く使われてきているのがテープだ。現在でもバックアップ用途では圧倒的なシェアを誇る。近年では、その容量当たり単価の安さからテープライブラリ装置を中心にアーカイブ用途としても使われ始めている。メディアとしてのテープ単体も分子レベルでの技術開発が進み、大容量化を実現している。専用の保存庫が必要にはなるが棚管理も可能であり、レイテンシをある程度妥協できるのであれば最も容量当たり導入コストの安いストレージだといえる。「レイテンシ3時間以上でもよい」という応答時間をそれほど気にしないユーザーに最適の媒体だといえる。
放送局や映画業界では従来、撮影用カメラで専用テープを使っていたこともあり、テープアーカイブがデファクトとなっている。一方、データマイグレーションに課題があり、長期保管する場合にはデータマイグレーションの頻度や必要なコストも考慮する必要がある。
クラウドストレージ
クラウドストレージは、分散オブジェクトストレージソフトウェアを利用してスケールアウト型のアーカイブストレージを構成する。既にこれらのソフトウェアを採用したクラウドサービスが存在する。またプライベートクラウドストレージとして多くの企業内部で利用されている。非構造化データのアーカイブが多く、サービスプロバイダーが提供する画像や音声、ゲーム、ニュースなどのデータである「コンテンツデポ」のストレージとしての利用が多い。ストレージ容量の追加が自動化されて非常に簡単であることが特徴である。
さらに、IaaS基盤構築ソフトウェア「OpenStack」のオブジェクトストレージ「Swift」では、ストレージ階層化機能を組み入れる動きが見られる。SNIAもコールドストレージの市場拡大という観点から、Swiftでの階層化機能のサポートを積極的に支援している。早ければ2016年後半のバージョンから組み入れられると期待している。
コールドフラッシュ
従来は高速ストレージ領域で主に利用されてきたNANDフラッシュは、急速な容量の増加、急速な低コスト化でコールドストレージの媒体としての利用も視野に入ってきた。一部の先行ベンダーでは「コールドフラッシュ」という名称でコールドストレージ向けフラッシュのリリースを予定している。SNIAでも次世代不揮発メモリ技術分科会などで議論が進み、コールドストレージ技術分科会でも調査を開始した。主にアクティブアーカイブ用途での利用だと考えている。
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