キーワードでひもとくバックアップ最新事情【第1回】
“テープバックアップ”はもう時代遅れなのか?
次々と新技術が投入されるバックアップ製品の数々。特に昨今ではディスクバックアップが注目を集めている。多くの現場ではまだテープバックアップが主力だが、ディスクに移行するメリットは本当にあるのだろうか?
避けて通れないバックアップ
企業が自社システムで保有するデータのバックアップを取ることは、もはや一般常識であることに疑いの余地はないだろう。
その半面、かつて導入したバックアップ環境に大きな問題が生じない限り、見直しの必要性を感じていないユーザーも多く見受けられる。また、新しい技術が次々と登場してきても、自社が抱えている問題の解決につながるものなのかどうかを見極めるのが難しいために、本当はバックアップ環境を見直したくても先延ばしにしていることが多いのではないだろうか?
また、いずれにせよ今後新たにシステムを導入する際には、おのずとバックアップも検討課題になる。その際には、今まで採用したことのない新技術も導入候補として検討する必要に迫られるだろう。
さらに昨今では、日本版SOX法の施行・適用に伴い、電子メールや電子文書を証跡として保存する「アーカイブ」の重要性も高まっている。アーカイブとバックアップは往々にして混同されがちだが、それぞれまったく異なる目的を持っている。バックアップは有事の際にデータを復旧することが目的なので、リストアに必要なバックアップデータをとってあれば問題ない。それに対してアーカイブは、有事の際に過去のデータを参照できるようにしておくことが目的だ。従って、過去に作成されたデータをすべて保管しておく必要がある。
本連載では両者のうち、主にバックアップに関する最新の技術キーワードを毎回1つずつ取り上げ、簡潔に解説していきたいと思う。ただし、バックアップとアーカイブで共通に使われる技術もあるので、アーカイブに関する話にも折に触れて言及できればと考えている。新たにシステムを導入する、あるいは今現在のシステムの見直しをする際の参考にしてもらえれば幸いである。
第1回と第2回は、バックアップデータを保存するメディアとデバイスの話題を取り上げる。バックアップデータの保存先には、大別すると「テープメディア」と「ディスクドライブ」の2種類がある。
テープメディア
オーソドックスなバックアップ手段
テープは低コストであること、そして古くから使われていることから、バックアップとアーカイブの分野で一般的なメディアとして利用されてきた。
テープバックアップでは、LAN/WANの帯域幅を考慮せずとも容易にバックアップを作成して、オフサイトに保管することができる。これは、単にテープをテープドライブから取り出し、箱に入れて、リモートサイトに送るだけの作業だ。また、テープメディアを保管している間はテープドライブを稼働させておく必要がないため、不要な電力を消費しない。これは、昨今のグリーンIT推進の流れにも寄与し、データの長期保管を行う場合には重要なポイントである。
テープバックアップが抱えるリスク
災害からの復旧を目的として、テープを複製して遠隔地に保管するケースもある。コストや運用面を考えると、これはとても導入しやすい災害対策だといえよう。ただし、万が一データのリストアが必要になった場合には、気を付けなくてはいけないことがある。リストアの手順としては、まず目的のテープを見つけて、バックアップサーバまで運ぶ作業が必要になる。そしてテープが届いてから、それをマウントして、復旧時点を決めるなど、復旧作業の手間と工数が掛かることになる。
また、保管しておいたはずのテープが見つからない、あるいはエラーでデータが読み出せないといったこともあり得る。加えて、テープメディアを搬送中に紛失したり盗難に遭ったりするという危険性もある。情報セキュリティ事故の多くは内部犯行であるという統計もあり、そもそも企業の重要なデータを搬送可能なメディアに記録すること自体がコンプライアンス上好ましくないと考える企業も増えてきている。
導入・運用コストが抑えられるという理由だけでテープバックアップを利用している企業は、表面化していないリスクがあることを認識する必要があるだろう。これまでは、バックアップメディアの購入コストだけが単純に検討されてきたが、今日では情報のアクセス性やリストア時間に関する厳格なSLA(Service Level Agreement)の要求、法令順守などの新たなリスクが顕在化しつつある。企業は、これらの隠れたコストやリスクも念頭に置いた上で運用を行う必要がある。
また、バックアップやリストアの要件が変化した場合(例えばデータの増加、あるいはバックアップウィンドウの短縮など)、テープのパフォーマンスでは対応できないケースも考えられる。日々データが増加し続けている環境においては、従来のテープバックアップではリストアに要する時間が長くなり、アプリケーションの動作に影響を及ぼす可能性も出てくる。
ディスクドライブ
大きなメリットと高いハードル
ディスクはパフォーマンスと信頼性が高い半面、導入コストも高くなる。加えて管理が難しく、導入に当たってはこれまでのバックアップ手法を一から見直す必要も出てくるかもしれない。しかし、テープからディスクに置き替えることでさまざまなメリットを手に入れることもできる。
ディスクバックアップなら、データの信頼性やリストア速度が向上するだけではなく、データ量とコピー数を正確に把握することが可能になる。RAID、ハードウェアコンポーネントの二重化、データの自動複製などの機能を使用してバックアップの信頼性を高めることもできる。遠隔地のディスクユニット間でレプリケーションを行い、災害対策を施している企業もある。
つまり、ディスクを活用することは多くの企業にとって歓迎すべきバックアップ手法となり得る。ただし導入のハードルが高いため、まだ多くの企業がテープバックアップを必要としていることも事実である。
技術革新に伴うコスト低下
最近ではSATA(Serial ATA)HDDの大容量化によって、ハードウェアのコストは以前より低くなりつつある。また、コスト面でのハードルを下げる技術の1つとして、ディスクアレイに「データ重複除外」(重複排除)の技術を搭載しているものが増えてきている。これは、データ保存の際の無駄を最小限にすることで、効率の良いバックアップを実現する技術である。データ重複除外の詳細については、今後の連載の中であらためて取り上げる予定だ。
テープとディスクの長所/短所
以下に、テープメディアとディスクドライブそれぞれの長所と短所を表にまとめてみた。
| テープメディア | ディスクドライブ | |
|---|---|---|
| 長所 | ・メディアの単価が安い ・ディスクに比べて省電力 ・長期保管に適する ・枯れた技術で成熟している ・メディアの持ち運びができる ・当面は運用し続けられる |
・リストア時間を短縮できる ・データの整合性を定期的に確認することでデータの信頼性を確保できる ・冗長性を確保しやすい ・効率的な管理が可能 ・データの複製が容易 |
| 短所 | ・メンテナンスが面倒 ・メディアの盗難の危険性がある ・ランダムアクセスに弱く、リストアに時間を要する場合がある ・メディアの保管などの運用管理に人手を多く要する ・メディアの劣化やデバイスエラーの危険性がある ・テープドライブの世代間の互換性 |
・導入コストが高い ・容量単価がテープに比べ高い ・持ち運びができない ・バックアップ手段としては比較的新しい技術であり、まだ成熟していない |
バックアップにまつわる誤解
バックアップに関する情報は古くから書籍やインターネット上に数多く存在するが、中には一概に正しいとは言い切れないものも見られる。ここに、よく見受けられる誤解とその実際についてまとめてみた。
テープは速度が遅いため、大量データのバックアップには適さない
テープはランダムアクセスには適していない構造であるため、データにアクセスする時間はディスクと比べると一般的に遅い。ただし、データ転送速度に関しては速いものもあり、最近ではスループットが120Mバイト/秒(データ非圧縮時)に達する製品も登場している。従って、ランダムアクセスがあまり発生しない大量の連続データをバックアップするのには適しているといえる。
テープは1巻の容量が少ないため、運用が難しい
DATなど一部のテープ規格に関していえば、1巻の容量が少ないことは事実である。しかし最近では大容量化が進んでおり、1巻当たり1Tバイト(データ非圧縮時)を超える容量のテープ規格も登場している。
テープは劣化しやすい。読み出しエラーが発生しやすい
テープには耐久時間の目安が表示されている。その範囲内で運用することにより、劣化を最小限に抑えることが可能である。
ディスクは壊れやすいので信頼性に欠ける
ディスク単体の信頼性を見極めることは難しい。ただし、RAIDを構成したりコンポーネントを二重化することで障害時のデータ損失を避けることが可能である。
ディスクだと遠隔地に保存できないので、災害対策には適さない
確かにホットスワップのディスクを遠隔地で物理的に保存することは、実運用としては不適切である。ただし、データのコピーやレプリケーションをネットワーク経由で行うことによって、データを遠隔地にある別のストレージに保存することは可能である。
ディスクはデータの長期保管やアーカイブには向かない
一般的な外部ディスクストレージでデータの長期保管を行うのは現実的ではない。ただし、アーカイブ専用のディスクストレージ製品というものも存在する。こうしたデバイスはテープと比べ、必要なデータにより迅速にアクセスできるというメリットもある。
テープとディスクの使い分け
このように、システムにバックアップを導入する際には、まずはシステム環境や業務ニーズを把握し、それに合うようにテープとディスクをうまく使い分けることが重要である。また、最近の傾向としては「D2D2T」(Disk to Disk to Tape)といって、いったんディスクにバックアップを行い、一定期間が経過した後に最終的な保管メディアとしてテープにバックアップデータをコピーするような運用を行っている企業も多く見受けられる。
次回は、このD2D2Tについて詳しく解説したいと思う。
<筆者紹介>
羽鳥正明
EMCジャパン株式会社 マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネジャー
同社にてバックアップ・リカバリ関連製品のプロダクト・マーケティングを担当。
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この記事の著者
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