Gartnerのアナリストが予言
「Office 365」「Slack」を音声操作? 音声アシスタントは企業でどう普及するか
AIを搭載した音声アシスタントが人間同士の会話に近づくために解決すべき技術的課題とは何だろうか。音声アシスタントの利用動向を予測する。
直近四半期の収益を知りたいなら「Cortana」に聞けばいい。そんな日が来るとしたらどうだろうか。
Gartnerでアナリストを務めるスベトラーナ・シキュラー氏は、そういう日が来るという。同氏は「Gartner Data and Analytics Summit」で、音声アシスタントが人間同士の会話に近づくためにこれから解決すべき技術的課題について語った。例えば、音声アシスタントはコンテクストを認識する能力や時間帯による意味の変化への対応などがまだ弱いという。また、同氏は人工知能(AI)サービスに会話型技術を組み込む場合のポイントや、ベンダー各社のAI関連技術の進歩によって音声アシスタント対応のビジネスアプリケーションが登場する展望についても語った。
「(AI音声市場に参入している)各社は皆、ビジネス分野に進出する準備を進めており、ビジネス関連機能を開発している」とシキュラー氏は語る
現在は、音声アシスタントの機能はまだ初期段階にあり、会議室の予約や、複数参加者の会議のスケジューリング、電子メールの読み上げなど単純な用途に限られている。しかし、そう遠くない将来、シキュラー氏が「従業員用アシスタント」と呼ぶ職場向け音声アシスタントが、単に会議を予約するだけでなく、会議で主体的な役割を果たす日が来るかもしれない。
そのような会議では、音声アシスタントが従業員にビジネスデータやアナリティクスの情報を伝えることができる。それも「何千行ものレポートを一度に読み上げるのではなく、データから重要な分析結果や変更点をかいつまんで伝えてくれるようになるだろう」(シキュラー氏)というのだ。
金融機関などでは、音声アシスタントをコンプライアンス対策に試験運用しているという。従業員は「これは問題ないか」「あれは会社の規約に違反しないか」と、音声アシスタントに質問して確認できる。こうした限定的な使い方も検討の余地があるだろう。
音声アシスタントが機密情報を読み上げてしまったら?
音声AI技術は当初、企業より個人の利用を念頭に開発された。そのため、職場での利用にはセキュリティ上の問題が多いとシキュラー氏は指摘する。音声アシスタントが機密情報を読み上げてしまったらどうするのか。機密情報をそうした事態から保護するにはどうすればよいか。会議の出席者は、機密情報に対する権限レベルがそれぞれ異なる。出席者の声を聞き分けて提供する情報を制限することはできるのか。
音声AI技術に関わるデータをどこに保存し、誰が管理するかも、音声アシスタントのセキュリティ戦略の難しい問題だ。IT責任者は、暗号化やアクセスの課題に取り組まなければならない。Googleなど音声AIプロバイダーの企業向けサービスでは、企業データのセキュリティや暗号化の機能を提供している。
文化的衝撃
音声アシスタントを職場で利用するには職場文化の変革も必要だ。音声が飛び交う職場に従業員が順応し、慣れていける環境を用意しなければならない。これは音声アシスタントが日常業務に浸透するために非常に重要な要素だという。
職場に導入可能な音声AI技術の選択肢はいろいろあるが、Windowsを使う企業のデスクトップは「Cortana」の独壇場だという。MicrosoftはCortanaの電子メールインテリジェンス機能を少しずつ強化しており、近々「Office 365」アプリに電子メール読み上げなどの機能を追加するものとみられる。
「Slack」に対抗するMicrosoftの職場コラボレーションツール「Microsoft Teams」もCortanaを統合する予定だ。そうなれば、電話をかけたり、会議に出席したり、会議の参加者を追加したりする操作を、自然な発話で行うことができる。さらに、議事録作成や会議中の発言の自動記録、それらのクラウド保存もできるようになる。
シキュラー氏は、職場に音声AIの時代が到来する日は想像以上に近いと断言する。CIO(最高情報責任者)にとって、少なくともそれだけは疑いの余地のない将来図といえそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー