格安航空会社に似ている?
IaaSのダークホース「Alibaba Cloud」分析、ビッグスリーの競合となるか
AlibabaがIaaS市場での勢いを増し続けている。一部のライバルほど幅広いサービスを提供しているわけでもないのに、一部の小企業がAWSからの乗り換えを検討し始めている。
「Amazon Web Service」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)、「Google Cloud Platform」(GCP)がパブリッククラウドの「ビッグスリー」であることはほぼ認知されている。だが、このレースにダークホースが登場した。それが「Alibaba Cloud」だ。企業の購入担当者はこのダークホースに関心を寄せ始めている。
2017年にGartnerが公開したデータによると、Alibaba Cloudは2016年のInfrastructure as a Service(IaaS)の世界市場シェアにおいてGCPを上回ったという。同社のデータでは、収益成長率の点で、Alibaba Cloudの売り上げは2015年の2億9800万ドルから6億7500万ドルへと126.5%の急増を見せている。
Alibaba Cloudの顧客の大半は中国を拠点とする。ただし、その中国経済だけが同サービスを押し上げているのではない。
併せて読みたいお薦め記事
4位以下のクラウドベンダーの戦い
ビッグスリー以外のIaaSも比較
AlibabaとAWSの比較
Alibaba Cloudの特徴は簡単に説明できる。コンピューティング、ネットワーキング、ストレージなど、IaaSのコアサービスを提供する。ストレージには、オブジェクトストレージサービス(AWSの「Amazon S3」に類似)やテーブルストレージを含む。ハイエンドサービスも幾つか提供する。Dockerコンテナを実行する機能などがその例だ。また、自社の「ApsaraDB for RDS」、オープンソースの「MongoDB」「Redis」などのデータベースサービスも提供する。この点もAWS製品に似ている。
Alibaba Cloudは、AWSをスリムにしたバージョンというのは正しくないかもしれないが、それほど的外れでもないだろう。AWSは、機械学習やIoT(モノのインターネット)に関連するサービスなど、コアインフラとハイエンドプラットフォームのサービスを多数取りそろえている。だがAlibabaは基本サービスだけを提供することで満足しているようだ。
そして、小規模企業の多くは、価格が手頃なら基本サービスだけがあれば問題ない。Alibaba Cloudが参入する余地はそこにある。
利用可能なコンピューティングオプションの数が多いため、AWSとAlibaba Cloudの価格を同一条件で比較するのは難しい。どちらのプロバイダーのコスト効率が優れているかは、実際には「顧客次第」ということになる。
例えば、クロスプラットフォームクラウドバックアップサービスを提供するプロバイダー、CloudBerry Labが行った価格比較調査がある。同報告書によると、CPU1基とメモリ2GBを装備するAWSの「EC2 Linux t2.small」インスタンスのコストは、利用率100%のオンデマンド料金が月額16.84ドル、リザーブドインスタンスが月額10.51ドルだという。これに対して、Alibaba CloudでCPU1基とメモリ2GBを装備するLinuxインスタンスの月間サブスクリプションコストは19ドルだという。
これだけ見れば、AWSの方が割安のオプションに思える。ただし、それはコンピューティング能力だけが必要な場合だ。このAWSインスタンスの価格にはストレージが含まれていない。これに対し、Alibaba Cloudインスタンスには40GBのソリッドステートドライブストレージが付属する。
どちらのプロバイダーのコスト効率が良いかを判断する場合、必要とする正確なリソースとリソースの使用計画に基づいてコストを見極めることが重要になる。
ホームグラウンドがある強み
Alibaba Cloudにはアドバンテージがある。それは中国だ。IaaSのどの上位企業よりも中国の文化と法律に精通している。そして中国市場の大きさはヨーロッパにほぼ匹敵する。
だが、そのアドバンテージは、信頼関係を重視する中国国外の企業にはマイナスに働く可能性がある。米国やヨーロッパを拠点とする年商100億ドル超の企業の多くは、ブランドの認知度を重視するため、すぐにはAlibaba Cloudに移行することはないだろう。それでもAlibabaは米国への進出を積極的に続けている。同社がターゲットにする可能性が最も高いのが中堅・中小企業(SMB)だ。SMBの多くはAWSの現ユーザーで、クラウドの請求に不満を抱いている。
Alibaba Cloudの価値は、つまるところ格安航空会社に似ている。格安航空会社は大手航空会社から得られるサービスを全て提供するわけではない。例えば、行き先が限られている。だが、大手企業のサービスから無駄を削ぎ落とし、コストを低く抑えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー