ユーザー名とパスワード以外の方法を考える
ID管理システムはAI、生体認証を活用へ ユーザー環境の多様性にどう対応するか
ID管理システムの市場は発展途上であり、まだ完成形ではない。本稿では、ID管理を変えるテクノロジーとその使用法を紹介する。
エンドユーザーが簡単に操作できるID管理システムの導入に苦労している企業は多い。しかし、間もなく、新しいID管理システムによって時代遅れの市場は改善されるだろう。
IDとアクセス管理(IAM)製品は以前から存在する。だが、拡大するデバイスの多様性、ユーザーのアクセス方式、多種多様なアプリケーションの出現に対処する機能を十分備えていない。さらに、既にインストール済みのシステムにアップグレードをほとんど実装していない企業も多い。幸い、新しい方法が出現している。ただ、完全に浸透するには数年掛かるだろう。
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ID管理関連技術の動向
AI導入はどうすれば成功するのか
ID管理市場の現状
現状では、資格情報にユーザー名とパスワードを使用して、自社へのアクセスを判断している企業が大半だ。だが、この方法ではフィッシングなどの攻撃の影響を受けやすい。特に金融、政府、医療など、セキュリティが厳しい業界では、追加でワンタイムパスワード型ユーザー認証「RSA SecurID」などの多要素認証ツールを使用する企業が多い。これは、セキュリティレベルを大幅に高め、資格情報の盗難を抑えるためだ。ただし、大半のエンドユーザーは、こうしたツールを面倒だと感じ、使用を先延ばしにする傾向がある。
そのためか市場には、指紋認証、顔認証、音声認識認証など生体認証を使用する新しいID管理ツールが登場している。だが、こうした方式は、セキュリティが厳しい環境では問題になる可能性がある。生体認証システムでは、比較対象になるデータを保存しておく必要があり、そのデータがハッキングされてしまう恐れがある。
顔認証などの優れた生体認証機能を持っていてもそれだけでは不十分だ。キーストローク分析、音声認識、位置情報、時刻などの要素を使って、エンドユーザーが自社のシステムにアクセスできるかどうかを総合的に判断する必要がある。同時に使用できる要素が多いシステムほど、優れたシステムだといえる。さらに、エンドユーザーに影響を与えない要素が望ましい。
新しいタイプのID管理ツール
今後2~3年のうちに、多くの企業が新しいレベルのID管理を導入すると考えられる。こうしたID管理では、ユーザーの行動よりも、既知のモノ、場所、経験を利用するものが多くなるだろう。現時点でも、SailPoint Technologiesが提供する「SailPoint」など、AI(人工知能)を使用してID管理をサポートするシステムが複数ある。
新しい世代のPCやスマートフォンには、RSA SecurIDと同等の機能をエンドユーザーのデバイスにチップレベルで直接組み込むものがある。こうしたデバイスは、エンドユーザーが複製できない登録済みデバイスを使用していることを決定付ける要素となる。エンドユーザーの位置情報を確認する機能も、エンドユーザーが本人であるかどうかを確認する追加要素になる。例えば、予定表やソーシャルメディアを統合することで、ユーザーがシカゴではなくニューヨークにいるはずであることを通知できる。
IT部門が管理するID管理ツールは、エンドユーザーが使いたいアプリを実際に利用できるようにし、正当な目的で使用していることを保証できる。ツールの多くは、企業のディレクトリ情報と結び付けて対応する。また、ネットワークトラフィックを監視して、エンドユーザーが送信するパケットが侵害されていないかどうかを判断する機能もある。
このような操作は手作業で実施するには複雑過ぎる。さらに、今後数年以内に新しいデバイスアクセスポイントが多数出現すると考えられるため、現実的にはID管理ツールを導入するのが唯一の方法になる。例えば、自動走行車、スマートデバイス、キオスク(自動券売機)などをID管理に統合することで、ユーザーがどこにいるかの確認が簡単となり、モバイルやBYODが進むだろう。
新しいID管理ツールを導入する方法
IT部門の管理者は、ユーザー名とパスワード以外の方法を考え始める必要がある。最新デバイスやOSに組み込まれ、強化された生体認証などのセキュリティ機能を利用すべきだ。デバイスそのものにログインするときだけではない。企業のアプリケーションにログインするときにも利用すべきだ。それぞれのツールは、それ単体では不完全かもしれない。だが、IT部門は幾つかの方法を組み合わせ、最新のID管理を従来のユーザー名とパスワードを使用する方法よりもはるかに安全なものにする必要がある。
IT部門はAIを活用した、アクセスと制御のメカニズムを備えたシステムを導入する必要がある。これは「誰が」「何を」「どこで」についてインテリジェント(総合的)な判断を行うためだ。多くのオプションがサービスとして存在する。IT部門はこうしたツールの機能によって自社のセキュリティが強化されるかどうかについて、ツールを評価する必要がある。現在取引しているIAM管理のベンダーがいる場合は、そのベンダーが提供する製品の強化点を調べるべきだ。現在オンプレミスツールを使用している企業のIT部門は、クラウドベースのサービスに切り替えることも必要だ。
最後に、IT部門はエンドユーザーが受け入れ可能な製品を探す必要がある。エンドユーザーが望まない製品をIT部門が導入すると、コストを浪費するだけで、効果がほとんど得られない可能性がある。
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