「iTeachers」はどのようにITを活用しているか
タブレットからロボットまで IT推進校のデジタル教材活用法は?
学校教育の中で、プログラミング的思考や英語のスピーキング力の育成が課題となりつつある。授業にITを積極的に取り入れる学校は、これらの課題をどのように解決しているのか。3校の取り組みを紹介する。
校内のIT環境を整え、授業や課外活動にITを積極的に取り入れる事例が増えてきた。これらの学校は、どのような形で学校教育にITを活用しているのか。2018年5月18日、第9回「教育ITソリューションEXPO」で開催されたセミナー「ICT活用の最前線」には、教育現場でのIT活用を実践する教育者チーム「iTeachers」が登壇し、具体的な事例について語った。セミナーの内容を基に、3校の取り組みを紹介する。
デジタル教材でスピーキング対策
同志社中学校の英語教員でICT教育推進担当の反田 任氏は、授業にITを活用することで、一人一人の学力や特性に応じた指導ができると説明する。
反田氏は、Appleが提供する電子書籍アプリケーション「iBooks」と、教材や資料を授業内容ごとにまとめて配布できる「iTunes U」を授業に導入している。個別学習に適した独自のデジタルテキストの制作・共有に加え、プリントだけではなく音声や動画などを利用した授業が容易にできることがメリットだという。
2017年秋には、授業に人工知能(AI)技術搭載の英語学習用ロボット「Musio X」を導入した。本製品は双方向の英会話が可能なロボットだ。生徒一人一人を顔認識し、それぞれの生徒の英語レベルに合った学習メニューを提供する。授業では1、2人で1つのロボットを使用する。2人で利用すると、生徒同士の英語によるコミュニケーションが生まれやすくなるという。指導には、英語学習サービス「EnglishCentral」も使用している。音声解析システムで学習者の発音の習熟度を数値化するWebサービスだ。
反田氏はこうしたIT教材のメリットとして「忖度(そんたく)しない」ことを挙げる。
生徒のやる気を削ぐことへの不安から「一斉指導で英語の発音を何度も反復させることは難しい」と反田氏は説明する。人を相手にした発音練習では、何度も間違うことに恥ずかしさや申し訳なさを感じて、反復練習に消極的になってしまう生徒が少なくないからだ。Musio Xは、発音が正しくなるまで生徒に繰り返し発音を促すが、生徒は積極的に発音の改善に取り組むという。発音練習の相手が人ではなくロボットだと、生徒は間違えたり反復したりすることにためらいがなくなるため、積極性を維持できるようだ。生徒からは、IT教材を利用することで「自分のペースで繰り返し学習できる」「恥ずかしがらずに発音できる」などの感想があるという。
2018年度は、英語のカリキュラムを変更し、反田氏が1学年に在籍する290人全員を担当する。大人数の生徒を指導するときでも、ITを活用すれば授業における教員の負担が少なくなるという。テレビ電話を用いて、複数のネイティブ英語講師と英会話学習する試みも開始した。
STEAM教育とIT活用
聖徳学園中学・高等学校では2017年からITを活用した「STEAM教育」を実施している。学校改革本部長を務める品田 健氏によると、STEAM教育はScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の知識を掛け合わせながら、社会問題の発見と解決を目指す学びのことだ。取り組みの一環として、「火星に同僚が取り残されたら助けるかどうか」「じゃんけんに『キュー』という手を加えた新しいルールを提案する」「AI技術やロボットが進化した今、人間にできることは」など、「Google検索で答えの出ない問い」(品田氏)について、生徒にグループディスカッションをしてもらう。
グループワークでは「Googleドキュメント」「Keynote」など、班で意見を共有できるアプリケーションを利用する。これらのアプリケーションを使い、生徒のワークシートへの記入履歴を確認することで、多人数のグループワークでも生徒一人一人の学習や思考の過程が可視化できる。これらの学習記録は、成績評価の要素として利用できるという。品田氏は「STEAM教育は理科の教員でないとできないのではないか」という疑問に対し、「私は国語教員だが、問題なく授業を進行できている。STEAM教育では、教員は知識ではなく、学習のきっかけを与える役目になる」と答える。
聖徳学園中学・高等学校のプログラミング教育では、「Sphero」などのプログラミング学習用製品を用いる他、希望者に対して、3日間プログラミングを集中的に学ぶ講座「Tech Camp」を実施。外部企業からエンジニアを講師として招き、生徒がアプリケーションを制作してプレゼンテーションをする。その他、数人のチームで、A4の用紙のみを使ってできるだけ高いタワーを制作する「ペーパータワー」など、PCを使わずにプログラミング思考を育てる「アンプラグドプログラミング」の要素を授業に取り入れている。
これらの取り組みのために、聖徳学園中学・高等学校はBYOD(私物端末の利用)制度を開始。生徒はタブレットの「iPad」を1人1台所持し、加えてスマートフォンを校内で利用することが可能だ。スマートフォンを授業で使う際、生徒は真面目に取り組むのかどうかという懸念に対して、「生徒にスマートフォンの学習ツールとしての使い方を教えれば、授業で有効活用するようになる」と話す。
IT環境整備の重要なポイントとは
2011年度に、校内にiPadを導入し、ITを活用した教育を実施する広尾学園中学校・高等学校の副校長、金子 暁氏は、校内のIT環境整備の前提として、「校内はどこに行っても無線LANがつながる」「生徒が一人一人自分の情報機器を持っている」ことを挙げる。
校内には「ICTルーム」があり、3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション機器を設置している。各クラスに「ICT委員」を2人ずつ設け、生徒が各種パスワードを忘れるといった問題をまとめ、教員に報告するなどの取り組みをしているという。
近年、広尾学園中学校・高等学校では生徒による海外大学の授業映像翻訳や、火星移住計画のコンペティション「Project MARS」への参加など、従来の授業や部活動ではカバーできなかった領域の課外活動が活発化している。これに対し金子氏は、「日常的に情報機器があり、通信環境が整っているIT環境がなければ起こり得なかっただろう」と言う。
授業でITを活用するための授業設計について、反田氏は「同志社中学校の国語教員からは、授業を『Microsoft PowerPoint』で進行するだけでも黒板に文字を書く手間が省け、説明や指導に力を入れることができたという声を聞く。まずは授業で困っていることを解決するためのツールとして使うのが大事」だと話す。「紙よりもデータの方が共有しやすく、生徒が記入した課題をとりまとめるといった、教員の煩雑な作業を省力化できる」(品田氏)というメリットもある。
上記の事例のようにIT教材をうまく活用すれば、新たな学習指導要領が求める「アクティブラーニング」(主体的、対話的で深い学び)の要素にもなるグループワークやプレゼンテーションの高度化や効率化が実現できる。大学入試センター試験に代わって2020年度から実施される「大学入学共通テスト」で導入が検討されている、プログラミングや英語の「スピーキング」対策にも、IT教材が有効活用できる。ITは、新学習指導要領の実践を巡る課題を克服し、生徒が主体的に学ぶ環境をつくるための効果的な手段となるはずだ。
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