小中学校の授業向けIT製品徹底ガイド【第1回】
マップで分かる 小中学校の授業に役立つIT製品はこれだ(2/2 ページ)
(1)指導者用ハードウェア
「指導者用ハードウェア」は、教員が主に「一斉提示」のために活用するハードウェア群のことだ。指導者用ハードウェアとして整備すべきものとして「大型提示装置」「実物投影機」「指導者用コンピュータ」がある。
大型提示装置は「電子黒板」「大型ディスプレイ」のことだ。「第2期教育振興基本計画」をはじめとする国の従来の計画では「電子黒板を整備すべきだ」と明示していた。一方、ICT環境整備最終まとめでは「大型提示装置」と記載し、電子黒板に加えて大型ディスプレイも該当する内容となっている。
電子黒板は、専用ペンによる書き込み機能などを備えた大型提示装置だ。電子黒板と大型ディスプレイを比べると、一般的に大型ディスプレイの方が安価に購入できる。電子黒板の導入をためらっていた学校でも、大型ディスプレイであれば整備が進むと考えられる。
実物投影機は、いわゆる「書画カメラ」のことだ。書画カメラと大型提示装置を活用すれば、大画面に紙の教科書や教材を映し出して、児童生徒に提示できる。IT活用の第一歩として活用しやすいだろう。
指導者用コンピュータは、その名の通り教員が活用するクライアントPCやタブレットなどのことだ。デジタル教科書や学習用ツールといったデジタルコンテンツを活用したり、それらの内容を一斉提示したりする際に必要となる。
(2)学習者用ハードウェア
「学習者用ハードウェア」は、児童生徒が活用するために必要となるハードウェア群のことだ。「学習者用コンピュータ」と、それを充電・保管するための「充電保管庫」が含まれる。
学習者用コンピュータは、1人1台の整備が必要だといわれる。ICT環境整備最終まとめの中では「1人1台が望ましいが、全国的な配備状況なども踏まえ、当面は3クラスに1クラス分程度の配置を想定することが適当」と記載されている。
充電保管庫は、複数台の学習者用コンピュータを充電しながら格納できる。学習者用コンピュータの整備台数増加に伴う配備が求められる。
(3)デジタルコンテンツ
「デジタルコンテンツ」は、実際にIT機器を活用する際に必要となる、教材や各種ツールなどを含むソフトウェア群のことだ。「デジタル教科書」「デジタル教材」に加え、学習時の基礎ツールとして活用される「学習用ツール」を含む。
デジタル教科書は、紙の教科書の内容をデジタル化して、教員用・学習者用コンピュータで閲覧できるようにした電子書籍だ。文部科学省が2017年12月に発表した「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議 最終まとめ」の中で、デジタル教科書は紙の教科書と併用されるものだと位置付けられた。今後はこうした形での活用が進むと想定される。
デジタル教材は、紙の参考書やドリルなどの教材をデジタル化したデジタルコンテンツだ。さまざまなシーンで活用できる製品が既に市販されている。特に注目すべきなのは「プログラミング教育」のデジタル教材だ。デジタルコンテンツだけではなく、例えば電子ブロックやロボットといったハードウェアを使ったプログラミング教材も販売されている。
学習用ツールは、ワープロソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトといった学習の基礎となるツール群だ。本連載では、この中に出席確認やアンケート、課題の提示・収集機能などを備えた「授業支援システム」も含めることとする。
(4)学習インフラ
「学習インフラ」は、学習に必要な環境を整える上で必要となるインフラ群のことだ。学習インフラの中で重要な要素として「学習用サーバ」と「ネットワーク」が挙げられる。
学習用サーバは、デジタルコンテンツを配信するサーバのことだ。本来であれば、学習用サーバは教育委員会ごとに整備すべきだといわれている。だが実際には、学校ごとに準備するケースも少なくない。
ネットワークは、特に学習者用コンピュータの使用台数が増えれば増えるほど重要になる。特にタブレットを使用する際は、授業中の大量の同時接続に耐え得る無線LAN環境が必要だ。
望ましい整備プロセス
ここに示した全てのIT製品を一時期に整備することは、予算の問題に直面しやすいだけでなく、教員側の準備も大変になる。どのようなプロセスでこうした製品群を整備すべきなのか。
授業向けIT製品の整備に当たっては、初めに教員側のIT整備を進めることが重要になる。つまり教員側がまず使ってみる、ということだ。その後コンピュータ室に既に設置されているコンピュータも活用しながら、児童生徒用のタブレット学習環境を導入する。教員や児童生徒がコンピュータを活用した授業スタイルに慣れてきたところで、1人1台の環境を整える。こうした流れが望ましいと考えられる。
IT製品整備プロセスの全体像は、図2の通りだ。
教育委員会によって、IT製品の整備方針は異なると考えられる。教員が活用するIT機器の整備が進んでいない自治体では、まず教員側の整備に着手することをお勧めする。
第2回では、教員側のIT整備に関連し、指導者用ハードウェアのうち、大型提示装置と実物投影機について紹介する。
執筆者紹介
高橋 純(たかはし・じゅん) 東京学芸大学教育学部准教授 博士(工学)
1972年神奈川県生まれ。修士(教育学)、博士(工学)。園田学園女子大学情報教育センター助手、富山大学人間発達科学部准教授を経て、現在、東京学芸大学教育学部准教授。教育工学、教育方法の改善、教育の情報化に関する研究に従事。第17回日本教育工学会研究奨励賞受賞。中央教育審議会専門委員(初等中等教育分科会)、学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議委員、日本教育工学協会副会長など。
粟田 輝(あわた・あきら) チエル社長室長
1982年広島県生まれ。2008年、慶應義塾大学大学院理工学研究科・開放環境科学専攻修了。2008年、日本総合研究所入社。2018年から現職。これまで教育関連企業向けのコンサルティングを多数実施し、企業の目線から教育現場へのIT導入などを推進。最近は各種執筆や勉強会での講演など、精力的に活動している。
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小中学校の授業向けIT製品徹底ガイド
教育機関に役立つIT製品には、どのようなものがあるのか。本連載では急速にIT化が進む小中学校の授業でのIT活用に焦点を絞り、幾つかのカテゴリーに分けて、授業に役立つ主要なIT製品分野を紹介し、各IT製品分野の選定ポイントをまとめる。
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