スモールスタートから重要なビジネス基盤への成長
「モンスト」の裏側を支えるログ分析システムを、ミクシィはどのように構築したか(2/2 ページ)
イベント時の準リアルタイム集計システムは要件に合わせて都度構築
日常的なデータ利活用とは別に、スポット的にデータ分析基盤を用意することがある。この目的は、期間限定のキャンペーンやコラボレーションイベントを盛り上げるために必要なデータを得ることだ。ゲームプレイヤーの動向に合わせてPRしたり、ゲーム内のキャンペーンに反映させたりするので、リアルタイムに近いデータ分析が求められる。生島氏はこれを「準リアルタイム集計」と呼び、実際に自社のゲーム上で開催されたキャンペーン、コラボレーションイベントを例として示しながらどのように分析基盤を構築したかを解説した。
生島氏が最初に例示したのは、「十二支再競争」というモンストのイベントだ。十二支の動物に猫を加えた13種の動物を競争させ、その順位をゲームプレイヤーに予想してもらうというもの。正解したプレイヤーは、ゲーム内で使えるアイテムをプレゼントとして入手できる。この時イベントの特設Webサイトで、現時点でどの動物にどのくらいの人数が投票しているかを表示するために、準リアルタイムでのデータ集計が必要だったのだ。
「処理を高速化するために、Amazon S3のログそのものではなくキー情報だけを受け渡す構成にしました。分散ストリーム処理プラットフォーム『Apache Flink』が最終的にキーに該当するデータをAmazon S3から読み出して処理する仕組みです。途中で経由するストリームデータ処理サービス『Amazon Kinesis』ではキー情報しか扱わないので、小さいシャード(ストリーム内のデータレコードの一意に識別されたグループの単位)で毎秒2万5000レコードを処理できました」(生島氏)
続けて生島氏が紹介したのは、バスキン・ロビンス「サーティワンアイスクリーム」とのコラボレーションイベント「サーティワンGETキャンペーン」だ。このイベントに合わせて用意したのは、イベントで発行するクーポンの枚数をカウントする仕組みだった。単純なカウントアップなので、Amazon S3の処理通知を利用してサーバレスプラットフォーム「Amazon Lambda」を呼び出し、クラウドデータベース「Amazon DynamoDB」の条件付きカウントアップ処理をするシンプルな構成だった。処理するデータ量は毎秒2万5000レコードだったが、Amazon DynamoDBは1秒当たり最大1回の読み込み/書き込みキャパシティーユニット(1RCU/1WCU)で十分だったという。
この他、オンライン生放送に合わせた、処理速度が求められるシステムもあった。特設視聴サイトや「YouTube」「AbemaTV」「Twitter」で配信した2017年末の年越し生放送番組の企画で利用したツール「モンストBINGO」だ。生放送のテンポを保つため、ビンゴ実行からできる限り短い時間で結果を集計し出力する必要があった。この時は速度を優先してAmazon RedShiftを採用。数秒でビンゴ達成者数を集計でき、番組もスムーズに進行できたという。
モンスト以外のゲームでの活用例として、生島氏はファイトリーグのイベント「ブランドカップ」の事例も紹介した。これはイベント時間内に参加ユーザー同士でスコアを競うもので、現時点のランキングを特設Webサイトに表示するために、リアルタイムにかなり近い処理が求められることと、多種のログを組み合わせて集計しなければならないことから、難易度の高かった案件だったという。しかし実際の構築は、半日程度しかかからなかったそうだ。
「ストリームデータを転送するマネージドサービス『Amazon Kinesis Firehose』を使って必要なログをAmazon RedShiftに送り、クエリ処理をしました。手間がかかりそうな部分はほとんどAmazon Kinesis Firehoseが面倒を見てくれたので、サクッと実装できました」(生島氏)
どの事例にも共通するポイントは、要件に合わせて必要なAWSの機能を組みあわせ、マネージドサービスをフル活用して短時間で構築していることだ。例えばAmazon Kinesis Firehoseなどを使って別システムとして構築することで、本番システムには影響を与えず、短時間で構築して不要になればすぐに廃棄する、クラウドのオンデマンド性を最大限に引き出した使い方だ。
「ゲームタイトル単位でのデータ活用基盤は、比較的整備されてきていますが、今後は各サービスを横断して分析する仕組みも必要になると考えています。新たなサービスのログデータを既存サービスのログデータとどのように掛け合わせて価値を生み出すべきか、考えていかなければなりません」(生島氏)
データの価値を増すためには、コラボレーションイベントのパートナー企業にデータを開示することも、ビジネスにおいては重要な意味を持つ。そのためにはデータガバナンスの強化、適切なポリシーの策定が必要となる。機械学習や人工知能(AI)の力を生かすためのデータ分析基盤整備も喫緊の課題だ。ミクシィXFLAGスタジオの挑戦はこれからも続くだろう。
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