プライバシー侵害の懸念も
iPhone XSでも採用 「顔認識」は利器か“凶器”か
顔認識技術がビジネスにもたらす可能性は幅広い。一方でプライバシーの侵害につながるのではないかという懸念もある。顔認識技術とどう向き合い、どう活用すべきなのか。
私は、自宅の周囲にNest Labsの防犯用カメラ「Nest Cam IQ outdoor」を幾つも設置している。以前のNest Camが搭載していた機械学習ベースの画像認識機能は、人と猫を見分けられる程度だった。今では顔認識技術で人の顔の違いを見分け、タグ付けすることもできる。異常検知機能によって、見慣れない人物の来訪を警告することも可能になった。
家庭や街に、こうしたコネクテッドカメラ(インターネット接続カメラ)が普及すれば、撮影した画像や動画を顔認識に活用して、人を識別できるようになる。それはさまざまな新しい可能性と課題を生む。
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消費者向け機能への応用
スマートフォンやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)には、既に顔認識技術が組み込まれている。「Googleフォト」「Facebook」といった画像共有機能を持つサービスは、写真のタグ付けによって画像認識アルゴリズムをトレーニングし、強化している。Appleのスマートフォン「iPhone X」や新たに発表した「iPhone XS」「iPhone XS Max」「iPhone XR」は、顔認識で画面ロックを解除できる。
街頭の防犯カメラと顔認識ソフトウェアは、指名手配犯の追跡に役立つ。防犯カメラで撮影した写真を、犯罪者データベースに登録された写真と照合すれば、犯人かどうかを識別できる。ルフトハンザドイツ航空(Deutsche Lufthansa)はロサンゼルス国際空港で、カンタス航空(Qantas Airways)はシドニー国際空港で顔認識技術を導入し、搭乗手続きの時間短縮に役立てている。
中国の学校は、カメラで子どもの表情を捉え、授業に集中しているか退屈しているかを確認しているという。この例が示すように、顔認識と機械学習を組み合わせると、プライバシーを侵害しかねない使い方も可能になってくる。
産業への応用
セキュリティロボット
銀行などの重要施設の入館手続きに、顔認識技術で人を識別できるセキュリティロボットを導入すれば、顔をスキャンするだけのわずか数秒で手続きを完了できる。企業の敷地内やショッピングモールのパトロール用にこうしたセキュリティロボットを活用すれば、侵入者を見つけるのに役立ちそうだ。
監視用ドローン
米国の警察では、警察官が装着するボディーカメラ(小型ウェアラブルカメラ)に加えて、監視用ドローン(小型無人飛行機)の映像を活用している。これと顔認識を併用することで、本人には分からないように対象者を追跡できる。市民の生命と財産を守るための方策だ。ただし、どのようなデータをどのように活用しているのか、現時点では不透明な部分も少なくない。
顔認識がもたらす課題
正確性とバイアス
アルゴリズムを強化するために使用する教師データに偏りがあると、アルゴリズムにバイアス(偏り)が加わり、特定のタイプの人が誤判定される。Amazon Web Services(以下、AWS)が提供する顔認識サービス「Amazon Rekognition」のアルゴリズムの問題を指摘したアメリカ自由人権協会(ACLU:American Civil Liberties Union)のテストによると、米国連邦議会議員の顔写真を、犯罪者の顔写真と照合したところ、Rekognitionは28人が犯罪者だと誤認識したという。
プライバシーに関する懸念
米国とヨーロッパでは、人工知能(AI)技術で活用したデータを、さまざまな状況で人々の許可なく利用することが問題視されている。プライバシーを侵害する可能性があるからだ。
ショッピングモールのWestfieldでは、Knightscopeの同名防犯ロボットを使っている。このロボットは人の顔を認識し、警備上の違反行為を監視する。ショッピングモールという公共の場で、人や子どもからどのようなデータを収集し、どのような用途に使っているのかは分からない。規制がない現状では、何が撮影され、それが将来どのように使われて保存されるのか不透明だ。
顔認識の可能性
現在は家庭や空港の監視カメラと顔認識技術が、防犯や搭乗手続きの時間短縮に役立っている。大量の顔データを収集できれば、今は想像できないような新しい用途の可能性が広がる。
Nest Camが住宅地や街頭に普及し、顔認識の教師データによるトレーニングが進めば、行方不明者の捜索や侵入者の監視に役立つだろう。その半面、AI技術での顔認識データの利用が、強大な監視社会につながる危険もある。
顔認識技術の応用について、あなたはどう考えるだろうか。今後が楽しみだろうか。それとも監視社会への不安が大きいだろうか。新しい可能性への期待に胸が膨らむだろうか。
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