東京大学教育学部附属中等教育学校のIT導入事例
東大附属が汎用スキャナーで使える自動採点システムを導入、その選定理由は?(2/2 ページ)
導入効果:テストの20分後には答案返却が可能に
スキャネット製品の導入により、マークシート形式のテストを実現した對比地氏は、さまざまなメリットを実感している。中でも同氏が評価するのは、採点効率の良さと、手間の少なさだ。
對比地氏が主に利用する、らく点マークくん3Liteの操作は、テスト名の入力から生徒名簿、正解、配点の登録まで、PCの画面で容易に実行できる。テスト実施後は生徒の答案マークシートをスキャンすれば、自動的に採点が完了する。「5分程度で採点ができるので、約20分後には成績表を出力して、生徒に採点結果を返すことができる」と同氏は説明する。1コマ50分で2コマ続きの授業の場合、最初の1コマでテストを実施して、休憩を挟んで生徒が復習している間に自動採点し、2コマ目には採点済みの答案を返却できる。
業者による一般的な模擬試験の場合、採点結果が返ってくるには「2、3週間かかることも珍しくない」と對比地氏は説明する。テストの記憶が鮮明なうちに採点結果を通知できれば、生徒は復習しやすくなる。スキャンした答案を即座に返却できるので、解答集と一緒に配布すれば、生徒はすぐに自己採点できる。
大学入試センター試験対策を進める上では「自己採点と実際の点数が合っているかどうかを確認するのも、一つの訓練」だと對比地氏は語る。2段階選抜を実施する大学の受験生にとって、自己採点の精度は“足切りライン”を突破できたかどうかの判断に大きく影響する。自己採点の練習は、その精度向上に役立つと同氏は説明する。
對比地氏以外の教員も、スキャネット製品の活用でメリットを享受している。ある国語教員はデジらく採点を活用し、スキャンした記述式答案をPC画面で採点できるようにして、得点集計も自動化した。それまで2、3日かかっていた記述式答案の採点が、3時間程度で済むようになった教員もいるという。こうしたITによる採点業務の効率化に加え、採点基準にブレがなくなるなどの効果が出ている。
製品の課題:成績表の出力項目の選択、科目別得点推移の可視化機能の追加に期待
現状はスキャネット製品への大きな不満はないものの、らく点マークくん3Liteで「成績表の出力項目を選べるようになると便利」だと、對比地氏は語る。東大附属は、らく点マークくん3Liteの登場前、前バージョンに当たる「らく点マークくんLiteバージョン」を利用していた。らく点マークくんLiteバージョンには、個人成績表を一覧としてPDF形式で出力する際に、出力項目を選択する機能があった。最新のらく点マークくん3Liteからは出力項目が固定になり、選択できなくなったという。
らく点マークくん3Liteが出力する個人成績表には、順位や偏差値が含まれる。入試対策ではなく、理解度を測ることを目的としたテストでも「生徒はどうしても、順位や偏差値に関心が向いてしまう」と對比地氏は指摘。前バージョンのらく点マークくんLiteバージョンのように、成績表に出力できる項目を選択できるようになれば、テストの目的に応じた個人成績表が出力できるようになると、同氏は期待する。
スキャネットは、現在でもらく点マークくんLiteバージョンを販売しており、サポートも継続して提供している。旧バージョンではあるものの、らく点マークくんLiteバージョンを利用すれば、個人成績表の出力項目を変更すること自体は可能だ。ただし文系や理系の別といった、らく点マークくん3Liteで新たに登録・表示できるようになった項目は当然ながら、らく点マークくんLiteバージョンでは表示できない。
加えて「化学のみ、数学のみなど特定科目に絞って、過去のテストの得点推移を可視化できるようになると便利」だと對比地氏は語る。現在のらく点マークくん3Liteは、こうした機能を備えていない。長期にわたって特定科目を複数回受験するテストではなく、大学入試センター試験の模擬試験のように、特定時期に複数科目を受験するテストでの利用を想定しているためだ。
らく点マークくん3Liteには既に、特定の回に受験した全科目について、科目別の得点率を表示し、得意な科目と不得意な科目を可視化する機能がある。それに加えて特定科目だけの成績推移を可視化できるようになれば「さらに使い勝手は高まる」と同氏は期待を込める。
IT活用は目的と手段の見極めが必要
高大接続改革の一環として、2020年度から大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」では、従来型のマークシート方式に加えて記述式の設問が盛り込まれる見込みだ。「30文字で要約せよ」など、表現力を問う記述問題をマークシート形式で実施することは、現実的には極めて難しい。「そこは記述式とマークシートを組み合わせて、技術を適材適所で使うことが求められる」と對比地氏は説明する。
對比地氏は「『答えが分かっていなくても正解が導ける弊害をなくそう』というのが記述式を採用する意図なら、マークシート形式でも『全てを選べ』『複数選べ』など、設問を工夫することで、理解度を測定することは可能だ」と強調する。「正しいと考える選択肢を全て選べ」といった具合に、正解の数を限定しない出題方法を採用する、などの方法だ。こうした工夫をすれば消去法での絞り込みはできず、きちんと問題を理解していないと正解を導くことは難しい。
マークシート形式と記述式には、それぞれ得手不得手がある。「目的に応じて使い分けることが大事」だと對比地氏は語る。その考え方はITにも通じる。同氏は「ITを活用するために何をするか」ではなく、「明確な目的があり、その実現のためにITを活用する」という考え方を重視しているという。同氏は今後も適材適所を意識して、IT活用を進める考えだ。
執筆者紹介
阿部欽一(あべ・きんいち)
「キットフック」の屋号で活動するフリーランスのライター/ディレクター。社内報編集、編集プロダクションなどを経て2008年より現職。「難しいことをカンタンに」伝えることを信条に、「セキュリティ」「マーケティング」など、企業のIT活用をテーマにした解説記事やインタビュー記事の執筆の他、動画やマンガやアニメーションを用いた学習コンテンツなどを多数プロデュースしている。
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