二者の特徴を見極める
クラウドERP比較:シングルテナントとマルチテナントのどちらを選ぶべき?(2/2 ページ)
アップグレードの制御
シングルテナント戦略では、IT部門はERPアプリケーションエコシステムをアップグレードのプロセスから分離することができる。大抵のクラウドERPベンダーは、アプリケーションのアップグレードによって企業顧客に悪影響が及ばないように、適切な取り組みを行っている。企業側で新機能をオン・オフできる詳細な制御を提供していることも多い。
だが、企業が独自の方法でこれらのERPアプリケーションを使用していると、アップグレード時に問題が生じることがある。シングルテナント方式のクラウド戦略では、こうしたアプリケーションの変更に対して詳細な制御方法が用意される場合がある。
管理効率の向上
ERPの大半のユースケースではマルチテナント型クラウドが最善の方法になる。そうすることで拡張性に関する負担がクラウドベンダーに移る。一般的に、新たに発見された脆弱性に対してはクラウドベンダー側でパッチを適用する方がコストを低く抑えられる上に簡単だ。
マルチテナントサービスでは、クラウドベンダーが複数の顧客からのワークロードを複数のサーバ間に効率的に分散する。1台のサーバで大量のトラフィックが発生した場合は、それを追加サーバに拡張するプロセスをクラウドベンダー側で処理するため、企業のIT担当者には負担がかからない。こうしたことから冗長化のためにサーバをプロビジョニングする必要性も少なくなる。シングルテナント型インフラで企業が同じ水準のサービスを維持するには、こうしたプロビジョニングが必要になる。
「コスト効率と導入の容易さに関してはマルチテナント型クラウドの方がシングルテナント型クラウドよりも優れている」(バッシ氏)
一般に、シングルテナントクラウド導入は、オンプレミスでサービスを運用する場合と比べてコストが高くつく。ベンダーが顧客固有の環境を維持、運用する必要があるためだ。
シングルテナントとマルチテナントに関する2つの重要な質問
クラウドERPを検討する場合、問い掛けるべき重要な質問が2つある。ITコンサルティング企業Pund-ITで社長兼主席アナリストを務めるチャールズ・キング氏はそう述べる。それは次の2つだ。
- ERPワークロードを実質的に外部委託することで、コストとパフォーマンスのメリットを得られるか。
- ERPをパブリッククラウドで利用できるようにする場合、業務上欠かせないデータが漏えいする可能性は高くなるか。
両方の質問に対する答えが「イエス」の企業は、SAP、Oracle、IBMなどのSaaS型ERP企業に対し、シングルテナントと専用サーバのオプションを用意しているかどうかをたずねることを推奨している。ERPアプリケーションをクラウドベンダーのシングルテナントIaaS(Infrastructure as a Service)に導入することも調査する必要がある。「Amazon EC2 Dedicated Hosts」や「VMware Cloud on AWS」などがその例だ。その後、これらのサービスのコストや利便性を比較することができる。
これらのシナリオで企業が検討した方がいいアプローチは他にもある。特に検討が必要なのは、プライベートクラウドIT資産と特定のパブリッククラウドプラットフォームを混合し、連携するように設計したハイブリッドクラウドソフトウェアだ。「最大限にデータを制御することを希望し、計画する企業は、ハイブリッドクラウドを実施可能なアプローチとして検討すべきだ」とキング氏は主張する。
シングルテナントとマルチテナントを比較、答えは「目標から」
企業にとってマルチテナントとシングルテナントのどちらが最適か、それを決めるにはどこから始めるのが最善だろう。キング氏によると、その答えは、ITマネジャーを早い段階から巻き込むことで、最終目標を決め、SaaSベンダー、クラウドサービスプロバイダー(CSP)、オプション、を評価できるようにすることだという。CSPは、外部委託によるコスト面のメリットと共に、各社のプラットフォームで用意している簡略化されたサービスの注文と提供による価値を売り込むのが一般的だ。シングルテナントオプションは通常、これらの便利な機能をサポートしているが、他の点では従来のホスト型サービスに似ている。
「導入モデルを選ぶベストプラクティスは、結局のところ既存のSaaSで必要なカスタマイズレベルに対する理解度の問題になるだろう。そうした理解をこの2つのプラットフォームに基づく利用可能なオプションと結び付けることだ」とHighRadiusのバッシ氏は説明する。
IBMとOracleは、本稿執筆時点でシングルテナント方式のオプションを提供している数少ないクラウドベンダーだ。
「シングルテナント型クラウドは、全体的なクラウドのユースケースやワークロードからすると利用率は低い。それは今後も変わらないだろう。主に採用しているのはリスクを嫌う企業か、規制の厳しい業界に従事している企業のどちらかだ」(キング氏)
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