開発者には好感触
障害者向けAIアプリ開発を促進する「AI for Accessibility」の可能性
Microsoftが2500万ドルを投じたこのプロジェクトは開発者の支持を得て、障害のある人々の役に立つアプリケーションの構築に乗り出すソフトウェアメーカーを後押しするだろう。
ソフトウェアの開発者は、Microsoftが後押しする人工知能(AI)テクノロジーの道徳的な利用と責任あるコンピューティングの推進に好意的な反応を示している。
「AI for Accessibility」は全世界10億人以上の障害者向けにAIアプリケーションの開発を促進する5年間のプログラムで、Microsoftはこれに2500万ドルを投じている。このプログラムは、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」で実行される障害者向けの革新的なAIアプリケーションを作成する開発者への助成金や投資で構成される。
開発者向け年次カンファレンス「Build 2018」の基調講演でMicrosoftのサティア・ナデラCEOは次のように語った。「優れたユーザーエクスペリエンスやUIと同様、優れたAIが必要だ。AIを一流のエンジニアリング分野に引き上げ、将来にとって適切な選択が行われるようにする必要がある」
生活を向上させるAIアプリケーション
Microsoftはこのプログラムによって、AIを使用して視覚障害者、聴覚障害者、自閉症の人々のコミュニケーションを支援するアプリケーションが作り出されることを願っている。Build 2018では、同社のAIサービスによって実現したリアルタイムのトランスクリプション機能を利用して、聴覚に障害がある従業員が会議に参加する方法が示された。開発者によるアクセシビリティーアプリケーションの構築をサポートするその他のMicrosoftテクノロジーには、「Microsoft Bot Framework」、Microsoftの対話型AIツール、「Azure Search」の認知サービス、音声、テキスト、コンピュータビジョンのビルド済みモデルなどがある。
ソフトウェア開発企業Magenicは、AIを利用したアプリケーションを構築して障害者を含むユーザーの生活を向上させたいと考えている。こう話すのは、同社の最高技術責任者(CTO)を務めるロックフォード(ロッキー)・ロートカ氏だ。
「当社のソフトウェアは、至って普通の業務ソフトウェアとして利用されている。それが、多かれ少なかれ人々の生活向上に直接影響を与えるソリューションの一部になることもある。人々の生活を向上させるプロジェクトに取り組むのは、非常にやりがいがある」(ロートカ氏)
ロートカ氏はMicrosoftのこの戦略に個人的にも興味を持っている。同氏は2年前に外科手術を受けたとき、半身不随になる可能性が15%あると医師から言われた。幸い半身不随にはならなかったが、この経験から同氏はテクノロジーとソフトウェアによってどのように人々の生活を平等にできるかを考えるようになった。
「半身不随などの障害を抱えると、それまでの健常者としての生活はできなくなることが多い。だが、重度の疾患を持つ人々が、テクノロジーによって、以前は不可能だったレベルの生活を送れるようになる可能性がある」(ロートカ氏)
Microsoftのプログラムは多くの開発者に助成金を提供することで、本来なら作られなかったかもしれない新しいプロジェクト、デバイス、サービスを作成する機会をもたらしている。
「一般的なアクセシビリティー、交通手段、コミュニケーションの問題などの解決に役立てるため、これらのテクノロジーを転換できる」と調査会社Cognilyticaでアナリストを務めるキャサリーン・ワルシュ氏は言う。同氏は、視覚障害者のコミュニケーションを支援するスマートアシスタントの影響や、将来的に視覚障害者の移動をサポートするとみられる自動運転車を例に挙げる。
バーチャル看護アシスタントなどの新しいツール、サポート、セラピーは、精神疾患のある患者を支援し、医師がこのような患者の診断と治療を行うのをサポートするだろう。
ソフトウェア開発企業InterKnowlogyも、アクセシビリティーfred向けのAIアプリケーションの開発を計画している。実際には、AI for Accessibilityプログラムには2億5000万ドルが投じられるべきだと同社の創設者兼会長を務めるティム・ハッカビー氏は言う。
同氏は次のように語る。「AI for Accessibilityプログラムを続けることができるのなら、これをInterKnowlogyのビジネスの軸としたいと考えている。チーズバーガーで世界を駄目にするような企業向けにソフトウェアを開発するのはやめて、人類をサポートするソフトウェアをより多く開発し始めたいと考えている。当社では、長年『倫理プロジェクト』を実施している。だが、『通常』業務も続けなければならない」
AI for accessibilityへの準備
ただし、AIテクノロジーが実際の変化に影響するほど成熟しているか、それとも補足的なサポートのみを提供するか疑問を抱く観測筋もある。
調査会社Vokeでアナリストを務めるテレサ・ラノウィッツ氏は次のように語る。「ナデラ氏が紹介したAI主導のテクノロジーの大半は、多くの人々の生活を根本的に変えるだろう。だが、このようなテクノロジーを開発し、デモの枠を超えて有用性を証明し、複数の規制機関で入念に検査するのに10年以上かかるだろう」
テクノロジーの普及率がクリティカルマスに達し価格が低下すれば世界に大きな影響を及ぶだろうが、「それまでは、ただ待つしかない」とラノウィッツ氏は言う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 過去にRPA導入をあきらめた企業こそ知っておきたい 失敗しない自動化導入術 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化 -
製品レビュー
[サイボウズ株式会社] 京セラコミュニケーションシステムに学ぶ、製造業の現場でAIを定着させる方法 -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] 元ヤンマーCIOの矢島氏が語るDXの本質:日本企業が陥った4つの落とし穴と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
4
「Excel管理」では限界――製造現場の改善が進まない“隠れた原因”
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
年収が増えても幸せになれない 給与増でエンジニアが直面する「幸福度の壁」
-
7
便利機能が「裏口」に コンテナの安全を脅かす“監視の穴”とは
-
8
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
9
「野良Excelマクロ」に悩むSMBC日興証券が導き出した内製化の“現実解”
-
10
「Linux」の脆弱性を生むのは誰か? ベテラン開発者の意外なミス
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
8
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー