カーシェアリングやドローンのもたらす新たなリスク
AI時代の保険業界 新しいテクノロジーにどう対処するか
保険会社でAIの活用が進んでいる。AIは社内の業務改善だけでなく、顧客対応や保険請求の処理に利用される。自動運転やサイバーセキュリティなど、AIが新たな損失リスクとなることも考慮しなければならない。
保険業界はテクノロジーを真っ先に導入する業界だとは考えられていないが、実際にはテクノロジーの変化に最前線で触れる機会が多い。
テクノロジーが大きく変わると、社会、ビジネス、人々の暮らし方、働き方、関わり方も変わることがその理由だ。人工知能(AI)技術がもたらす新たな課題に、保険業界が取り組んでいるのは不思議なことではない。テクノロジーの変化で生じる課題は、保険会社の顧客である企業や個人だけでなく、保険会社の社内運用や商品にもたらされる。
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そのレポートによると、保険会社幹部の75%以上が、今後3年間で保険業界全体が大きく変わる、または全く変わると考えているという。約3分の1の回答者は、自社がAIによって「全く変わる」と答えた。「大きく変わる」と答えたのは39%だった。
新しいテクノロジーがもたらす新たなリスク
保険が存在する根本的な理由は、予期しない出来事によって生じる経済的損失を埋め合わせる方法を、個人や企業に提供するためだ。ただし予期せぬ出来事が起きる可能性と、損失の大きさとのバランスを適切に保つことができる場合のみ、保険はビジネスとして成り立つ。保険会社は、企業がどのようなリスクに保険をかけることを望んでいるかだけでなく、リスクの発生頻度と防ぎやすさをあらかじめ把握しておく必要がある。
保険会社の前に大きく立ちはだかるのが、自動走行車両の増加だ。保険会社は既に、UberやLyftなど、カーシェアリングサービスが台頭する時代の責任にどう対処すべきか苦悩している。
保険会社は新たな課題が直面している。例えば次のような場合、保険は何をどうカバーすることになるだろう。自動走行モードで、運転手が実際には車を運転していない場合。Uberなど車を所有する企業と、車を製造した企業が違う場合。車を製造した企業と自動走行テクノロジーを開発した企業が違う場合。保険会社は、こうした新しい課題を考慮して責任を割り当て、リスクを査定し、損害率を決めなければならない。
自動走行するトラック、飛行機、船、電車、ドローンの出現に伴い、保険会社は未知のリスク、責任、コストに直面する。自動走行車両を運営する業者は保険をかけずに事業を運営するか、リスクと損失を適切に査定する方法について、保険会社に情報を提供する手段を見つけなければならない。
AIが新たな損失リスクをもたらす分野は、自動走行車両だけではない。AIは今までにない形態のサイバーセキュリティ脅威を生んでいる。こうした脅威が、後に個人や企業にリスクをもたらす恐れがある。
企業向け保険で急速に成長しているのが、サイバーセキュリティとサイバー窃盗をカバーする保険だ。企業や個人は、AI技術を利用した詐欺や、AI技術が引き起こす人身傷害によって生じる損失の防止への関心を高めている。偽の動画、偽の音声、偽の画像があふれる社会では、個人と企業に全く新しい種類の責任が求められる。
現状もう1つの難しい問題が、AI技術を用いた製品を提供する企業に課されるであろう、製品利用者の損失をカバーする保険だ。AIシステムが操作を不適切に実行して、人間なら起こさないような害を招いた場合、保険会社はビジネスの損失をカバーするだろうか。単に製品やサービスの提供にAI技術を利用しているだけで、保険会社は機械学習やAIシステムによってもたらされる未知のリスクと責任を理由に、請求を拒否するだろうか。答えはまだ出ていない。
AIを使用する適切なリスク管理
自社の業務や商品にAIを利用することで得られる商機に注目する保険会社が増えている。多くの自動車保険会社は、テレマティクスデバイスを車につないで被保険運転者がもたらすリスクを評価することで得られる大きなメリットを考えている。
例えば自動車保険会社Progressiveは、自社開発したドライバー追跡デバイス「Snapshot」で、約220億キロもの運転データを収集した。このデバイスを利用することで、ドライバーのリスク特性を適切に把握できる。デバイスは、同社が安全なドライバーには見返りを与える一方で、リスクの高いドライバーを適切に管理するのに役立っている。
保険業界のAIシステムは、保険証券、顧客、請求、リスクデータの分野で用いられる。そして保険会社が収集した膨大な量のデータから重要なパターンを抽出することで、大きな価値をもたらす。特に医療保険会社は、健康問題の初期兆候を発見し、症状が進んだ場合よりもコストの低い治療で適切に対処することで大きなメリットを得ている。
さまざまな機械学習やAIのベンダーが、自社の製品を保険業界向けに応用している。これらの製品で、保険会社はリスクの特定/管理、リスク計算、保険契約査定、リスク予防の改善、不正管理、顧客に適切な規模の保険を提供することを容易にしている。AIシステムは多くの方法で向上したインテリジェンスを保険会社に提供し、より効率的で効果的な保険サービス提供を可能にする。
顧客と保険会社の関係を改善するAI
保険業界のAIシステムは社内の業務改善だけでなく、顧客対応を改善する可能性がある。請求処理の迅速化のために、画像認識と自然言語処理が既に利用されている。
例えば多くの自動車保険会社は、被害を査定するための情報を迅速に提供するために、スマートフォンのカメラで撮影された画像を使用する。医療保険会社は医療関連の請求、請求書、領収書の処理を迅速化するために、手書き文字認識や画像認識を利用している。
保険請求対象の損失は昼夜を問わず起こり得る。保険会社は予期しない請求や要求に対処するために、請求処理担当者が24時間対応できるようにする必要がある。多くの保険会社は既に、自然災害、テロ関連の事件、大量の犠牲者や損害が生じる事故など、大規模な損失事象が起きても確実に請求と顧客サポートができるように、さまざまなプラットフォームでテキストと音声のチャットbotを導入している。重大な損失に直面して必死に情報を求めているとき、保険会社に待たされるのは誰でも嫌に違いない。AI技術を利用した会話アシスタントは、保険に関するやりとりをスムーズでシームレスにする。
AI技術がビジネスや個人の生活の隅々にまで影響を与えることは間違いない。驚くべきことに、保険会社は変化の最前線にいる。これまでに起きた大きなテクノロジー移行のときと同じように、新しいリスクを適切に管理して新たな技術を活用できる保険会社が、成長と活動を続けるだろう。
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