「利用ベース自動車保険」(UBI)がもたらす効果
“IoT自動車保険”なら保険料が年間数万円も安くなる?
モノのインターネット(IoT)関連技術の発達により、自動車保険のビジネスモデルが根本から変わる可能性がある。
これまで自動車保険会社が保険料を決めるときには、運転歴、走行距離、保険履歴などを判断材料としてきた。また契約者の居住地(その地域の事故や窃盗の発生率)、年齢と性別(10代の男性は保険料が高くなる傾向にある)、運転以外の事柄(信用度など)も考慮されてきた。
最近ではインターネットを介したモノ同士のつながりから新たな価値を生み出す「モノのインターネット」(IoT)を活用して、リアルタイムで運転傾向を調べる保険会社も出てきた。自動車の診断ポートに接続した「テレマティクスデバイス」を用いることで、保険会社は契約者の運転傾向に関する分析情報を得ることができる。契約者に対して衝突車両補償の保険料を負担するのは運転時に限定し、車庫に駐車している間の保険料は免除する。
これは「利用ベース自動車保険」(UBI)と呼ばれる保険だ。Business Insiderが提供する市場調査サービス「Business Insider Intelligence」では、2020年までに5000万人以上の米国ドライバーがUBIを試すと見積もる。正確なデータを活用することで、ドライバーのリスクレベルに応じて保険料を厳密に調整することが可能になる。特に安全運転のドライバーについては、保険料が下がると予想できる。
調査会社Strategy Meets Action(SMA)による調査では、保険会社の幹部の74%が「2020年までに保険業界はIoTによる混乱に直面する」と考えていることが明らかになった。多くの保険会社が、IoTの調査と導入に投資し始めているのは当然のことだろう。さらに自動走行車が一斉に出回ると、自動車保険会社のビジネスモデルや業務は一変する可能性が高い。
IoTを使って請求内容を審査する
全米保険犯罪局(NICB)の報告によると、保険会社が不正請求の費用を工面するために、契約者は年間200~300ドル(約2~3万円)の保険料を追加で支払っているという。大手保険会社は厳密な調査方法と分析機能を導入しているが、保険業界は依然として物損人身事故の請求のうち、10%以上に不正請求の可能性があると見積もっている。
UBIモデルは既に、不正予防システムとして明るい兆しを示している。例えば、よく見られる不正の形として、軽い車両事故を起こした後に、高額の保険金を受け取る目的で車体の傷を広げることがある。ただし事故発生時の時間や速度、場所、自動車の位置を示す実際のデータの参照によって、保険会社は請求内容と比べて深刻度のつじつまが合うかどうかをさらに正確に評価できる。
自動車が定期的に幹線道路のインフラや他の自動車と相互に通信すると、そこから得られる豊富な情報を活用できる。例えば不正に関する予測分析の精度をさらに高めて、契約者が支払う保険料を年間何百ドルも削減することが可能だという見方もある。
IoTはリスクの性質をどのように変化させているのか
自動車保険は、ヒューマンエラーによって事故が発生した場合に、金銭面でドライバーを守ることに主眼を置く。一方でIoTを活用すれば、ヒューマンエラーのリスクそのものを極力抑えることが可能になると期待されている。
例えばTeslaの自動操縦機能は、既に衝突事故の40%削減を実現した。コンサルティング企業McKinsey & Companyは、自動走行技術によって今世紀半ばまでに90%の事故を減らせると予測する。その結果、病院や緊急救命室にかかる費用は約1900億ドル削減されるという。多数の走行車両に追跡システムを搭載することで、窃盗を効果的に阻止して、盗難車両を簡単に取り戻せるようにもなるだろう。
自動走行技術は他にも幾つかの面で効果がある。1つ目は、ある地域で事故や窃盗の件数が減ると、上述のように、その地域に住む全ての自動車保険契約者の保険料に反映され、全体的な保険料の削減につながる可能性があることだ。2つ目は自動操縦機能によって、リスクの高いドライバーとなる可能性を潜在的に軽減できることである。運転歴に問題の少ないドライバーが増えるほど、法外な保険料ではなく、標準的な保険料の自動車保険を利用できる契約者が増えるだろう。
そうなると自動車保険会社は、ビジネスモデルを刷新する必要に迫られるはずだ。これまで保険会社は、保険の見直しや更新、事故後の請求処理に取り組んできた。今後は契約者の安全を確保して、損失を回避する仕組みの考案に注力しなければならなくなる可能性がある。
IoTとサイバーセキュリティリスク
IoTは大きな変革をもたらすだろう。一方で新たな保険の適用範囲として絶対的に重要となるリスクがある。それはサイバーセキュリティだ。
2016年10月にDNSプロバイダーであるDynが見舞われた大規模なサイバー攻撃を思い出してほしい。攻撃者は簡単に何千ものネットワークカメラやプリンタ、監視カメラを破壊し、それらを集めてbotネットを構成して、Dynをマルウェアに感染させ、Dynのネットワークをダウンさせた。その結果「Netflix」「reddit」「Amazon.com」「Twitter」など、Dynがトラフィックをルーティングしている人気のWebサイトは、米国や欧州のほとんどのエンドユーザーに対してサービス中断を余儀なくされた。
より一層多くのモノがインターネットに接続されることを考えると、これはただの序章にすぎない。サイバーセキュリティ保険市場では既にデータ保護に注目が向かっており、2022年までに市場規模が140億ドルに達すると予想されている。2016年と比較して28%の増加だ。ネットワーク接続型の自動車が、一斉に膨大な量のデータを拡散するようになれば、サイバーセキュリティは保険の適応対象として、さらに不可欠なものになるだろう。
早くからIoTに注目している人に、IoTはとてつもない利益をもたらす可能性がある。だがデータの山から大いなる可能性を引き出すには、複雑さを避けて通ることはできない。保険会社はデータ分析を増やして、ノイズを効率的に取り除く方法を編み出し、ささいなデータや冗長なデータから“真の情報”を特定する必要がある。そうすることでやっと保険会社は、多数の新たな要素を適切に見定め、契約者ごとの適切な保険料を決定できるようになるのだ。
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