Android最新バージョンへの更新は進んでいない
「Androidエコシステムのセキュリティ」透明性レポート――情報開示に向けた一歩
Googleは2018年11月に「Androidエコシステムのセキュリティ」透明性レポートを初公開した。このデータから見えることと、公開されなかったデータから推測されることについて解説する。
Googleが「透明性レポート」の新シリーズとして、「Androidエコシステムのセキュリティ」透明性レポートを2018年11月に初公開した。筆者が通読して思うのは、Googleはせっかくのチャンスをふいにしたということと、既視感が強いということだった。
四半期ごとに更新される新しい「Androidエコシステムのセキュリティ」透明性レポートの内容の多くは、Googleの年次レポートである「Android Security Year in Reviewレポート」に含まれるデータの最新版だ。その中には、さまざまな「PHA率」が含まれる。
PHA率とは、Android搭載端末のうち「害を及ぼすおそれのあるアプリ(PHA:Potentially Harmful Applications)」が1つ以上インストールされている端末の割合を示す。例えば、Androidエコシステムのセキュリティ透明性レポートでは、アプリのダウンロード元がGoogle Playのみである端末のPHA率と、アプリのダウンロード元がGoogle Playと他のサイトになっている端末とのPHA率比較(当然のことながら、後者の方がPHA率が高い)や、世界各国で使用されている端末のPHA率などが示されている。意外にも、ロシアの方が米国よりもPHA率が低い。
なお、Google Play以外のサイトから端末にアプリをダウンロードすることを「サイドローディング」と呼ぶこともある。
Googleが公開しなかったデータから見えること
Androidエコシステムのセキュリティ透明性レポートでは、端末に搭載されているAndroidのバージョン別で見たPHA率も示されている。それによると、Androidのバージョンが新しい方がPHA率は低い傾向がある。
だが、このことは、Googleがレポートに含めなかったデータを示唆している。それは「個々のハードウェアパートナーが、端末をAndroidの新しいバージョンにどの程度積極的にアップデートしているか」を示すデータだ。GoogleのAndroid Developersサイトの「ダッシュボード」ページでは、Androidの各バージョンが現在、実際の端末で使用されている割合のデータを提供している。それによると、使用率が28.2%(執筆時点)と最も高いバージョンは「Android 7.x Nougat」であり、最新バージョンの「Android 9.0 Pie」の使用率は、このページで示される最小値(0.1%)に満たない。このことから見て、OEMのアップデート状況はあまり芳しくないと考えられる。
Androidのセキュリティアップデートや、「どのハードウェアパートナーがそれらを最も積極的にプッシュ配信しているか」のデータという問題もある。Androidセキュリティおよびプライバシーの責任者であるデビッド・クライダーマシャー氏は、2018年5月に開催された開発者向けカンファレンス「Google I/O」で、「Googleは、どのパートナーが最も積極的にセキュリティアップデートをプッシュ配信しているかを追跡している。今後リリースするAndroidエコシステムのセキュリティ透明性レポートに、ハードウェアサポートの詳細を盛り込むことを検討している」と述べた。さらにGoogleは最近OEM契約に、少なくとも年に4回Android端末にセキュリティアップデートを配信することを義務付ける条項を追加している。
Googleが最終的に、このデータをAndroidエコシステムのセキュリティ透明性レポートに含めなかった理由は不明だ。だが、これまでGoogleは、アップデートに消極的なハードウェアパートナーに駄目出しすることをためらってきた。
Androidパートナー契約に、セキュリティアップデートに関する新たな義務が盛り込まれただけでなく、ハードウェアパートナーに対し、端末の発売から18カ月以内にAndroidの最新バージョンがリリースされた場合、端末をそれにアップデートするよう定めたルールもある。
しかし、そうしたルールに違反した場合に、どのような制裁を受けるのかはいつもはっきりしない。考えられるのは、「Google Play」や「Google Play Store」「Google Apps」へのアクセスの禁止だが、そうした処分の実施が報告されたことはない。
Androidアップデートを容易にする施策
Googleは、Androidのアップデートを容易にする施策を講じている。その1つが、「Android 8.0 Oreo」での「Project Treble」の導入だ。Project TrebleはAndroidシステムから、ハードウェアパートナーが追加した差別化のためのソフトウェア実装を効果的に分離する。だが、いまだにAndroid 7.xが最も広く使われているバージョンであるため、Project Trebleの取り組みは、あまり実を結んでいないようだ。
OSのアップデートとセキュリティアップデートに関する統計がAndroidエコシステムのセキュリティ透明性レポートに加われば、OEMのプライドを刺激するのに大いに役立ち、彼らはメンツのためにやり方を改め、消費者に購入判断のための情報を豊富に提供するようになるかもしれない。だが、GoogleはOEMを名指ししたレポートを出すだろうか。時間がたてばいずれ分かるだろう。
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